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いやもう、爆笑しちゃった。何あのこっちを真っ直ぐ見ながら始まるモノローグ。何あの説明セリフの応酬。長谷川さんってもうちょっと書ける人だと思ってたんだけど...これがSSSS.GRIDMANと同じ脚本家の仕事か?
ハッキリ言って僕は坂本浩一監督の大ファンである。この人のアクション、取り分けキャットファイトものとなればある程度の見応えは確約されたも同然と踏んで視聴した。そしたらアクション以外の全てがこの調子だもんなぁ。
導入でバブル期みたいなお立ち台ギャルが退廃的な雰囲気を出すために何となく踊り狂い(トップレスの人が混ざってるからオトナ映画ですよってエクスキューズも最高に馬鹿っぽい)、ついで過剰に口をひん曲げた悪漢がチンピラの雰囲気を出すために何となくウェイターを撃ち殺す。終始この薄っぺらさである。
或いは濡れ場の為のエロティック映画として観ても、展開が強引だし中途半端。弟と身体を重ねる下りは石ノ森先生の原作にも「そうする事でしか肉親と愛情を確かめられないような状況のシーン」としてあるらしいのだが、そこの悲劇性、叙情性はろくに引き出せてなかったし、エロとしてもいつもの首舐めごまかしである。「エッチなことしましたよ」という状況説明のためのエロ表現を、無理やりねじ込むことにどの層が喜ぶのかは甚だ謎である。
濡場と言えばミレーヌの母親の面影が云々言ってるはずの女サイボーグのミリアム(演・長澤奈央)が全身ベロンベロン舐めてくる下りも不必要過ぎて笑う。あれで散り際が美しくても、さっきのベロンベロン見た後だと泣けねえよ!w
Dr.クライン(演・杉本彩)がドヤ顔で出してくる「不死身の」ゾンビサイボーグは普通に殺せるし、イチゴジャムのような血糊がドパドパ出てくる。ハナからZ級映画への着地を志向して作ってたのか?だとしたらある意味いい仕事なのかもしれない。
本田博太郎のエキセントリックさ、市道真央のアニメ寄り演技はお手の物な手並みなど、キャストの匙加減が漫画チックな世界観と実写映像のギャップをどうにか繋ぎ止めてくれているが、それも場面場面の話だ。惜しむらくは竹中直人がはっちゃけられる役どころじゃ無かったぐらいか?
そもそも、「009ノ1」という漫画は何かと言うと、冷戦下にミレーヌ・ホフマンという白人女性のサイボーグが胸などに仕込んだ武器を駆使し世界を股にかけて闘う、成年誌のエロチシズムに石ノ森章太郎お得意の詩的な悲劇性を重ねた、オシャンティなアダルト漫画だ。明らかに洋画の雰囲気を意識して描かれているわけで、日本人スタッフとキャストが結集した時点で別物として撮るより他にないのだ。どんだけ豪華な素材を揃えたところでとんでもない負け戦なのである。(TVドラマもあるらしいのだが、やはりそちらも開き直っているのか用語以外はほぼ別物である。)そう考えれば、作り手達にも同情の余地はある。