「Money Chantは鳴り続く」ウルフ・オブ・ウォールストリート 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
Money Chantは鳴り続く
澄んだ水の中では生きられない。澄んだ水の中では生きたくない。
澱にまみれたドブネズミ。
そんなヤツらの夢の後先、激しく愛すスコセッシ。
グッドフェローズで撃って殴って飛び散った血の代わりに
ウルフオブでは札ビラが舞う。オンナの裸があふれかえる。
ドンパチはないがそれ以上にヤクザな仕上がり。
何ともアホでトチ狂った世界。
貧乏人も欲をかくからボロ株で騙される。
金持ちも欲をかくから相場操縦に騙される。
皆が欲無し聖人君子だったなら、こんな話は生まれなかった。
ベルフォートは、みんなの欲の結晶だ。
我らの欲と享楽と倦怠を一気に手に入れた男の物語。
たとえ罰を受けたとしても
トロフィーワイフが宴の終わりを告げても
我らの欲を燃料に走り続けるドブネズミ。
改悛?教訓?そんなものは要りませぬ。
ひえびえとした空虚さえ金に換えてみせます、したたかに。
The Money Chantは鳴り続く。
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時代の狂騒をとらえ捩じれたアメリカンドリームを描いた本作、スコセッシ自身の『グッドフェローズ』証券版でもあり、スコセッシが好きな『彼奴は顔役だ!』の現代版でもある。
本作のベルフォートは、『グッドフェローズ』のヘンリー、『彼奴は顔役だ!』のエディと同じく、時代のカリカチュアだ。時代が変わる度に、また新たなベルフォートが産まれるのだろう。
エポックの狂騒は繰返す。何度でも。
そんな達観というより力任せに振り切った感じが本当に素晴らしい『ウルフオブ』だった。
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追記:
『彼奴は顔役だ!』の、PTA版が『ザ・マスター』、ラッセル版が『アメリカンハッスル』だと思う。
三者三様の仕上がりながら、スコセッシの『ウルフオブ』が一番パワフルで突っ走っていた。