鑑定士と顔のない依頼人のレビュー・感想・評価
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人生に必要なのは女の鑑定力
老境に至るまで女性とは付き合ったことがないという美術品鑑定人のもとに、10代半ばから家の外へ出たことがないという女性から、亡き両親の残した美術品や家具の鑑定と目録作成の依頼がくる。
業界の超大物を自他ともに認識する鑑定人に対して、この依頼人はなかなか直接会おうとはしない。この失礼に対して、鑑定人は何度も呆れたり憤慨したりしながら、結局はこの依頼を受けるのである。それは、鑑定を依頼された遺産に興味があったのではなく、その依頼人に興味を惹かれたからである。
なぜその依頼人に興味を惹かれたのかと言えば、簡単には会おうとはしないその態度と、外界との接触を断っているという珍しい障害が表面的な理由である。
しかし、重要なのは、その依頼人が若い女性であることだろう。
依頼人を騙して、覗き見ることに成功した彼女の姿は、病気とは思えないほど現代的で美しい。確かに顔色は青白く、化粧もほとんどしていないように見えるが、人との接触を10年以上も断っているにしては「まとも」。それどころか、とても魅力的である。
まともな判断力があればこの時点で、彼女の言っていることと、自分が目にしている状況の不自然さに気付くはずなのだが、この童貞のおじいちゃんにはそれが分からなかった。
仕方がない。これまで女を見定めることをしてこなかったのだから。
そして、まんまと騙されたと分かったあとは呆けてしまって、車いす生活である。
この話、むしろ騙されてからが語るべき部分だと思うのだが、映画はこの部分をエピローグ的にしか取り扱わない。せっかく「男」になったのにである。
鑑定人が事務所のスタッフに、結婚生活について尋ねていたときの回答が印象的。「自分が結婚した女が、最高の出物(the best offer)なのかどうか自問が続く」と。
アイロニーを帯びたたとえ話であるが、このスタッフはまだ幸せな結婚生活を送っている。
私に言わせれば、「結婚した相手が最高の出物ではなかったを知ったときから」人生が始まるのである。
評価は高いが、私は合わなかった
最初に書くが、この作品は私には合わなかった。ラストシーンはどんでん返しへの驚きというより、胸糞展開すぎて驚いた。
序盤はミステリーらしく、姿を見せない依頼人に興味を惹かれてとても面白いと思いながら見ていた。しかし、割と早いうちに依頼人クレアは現れて、ミステリーというよりラブロマンス展開になったので、ミステリーのつもりで見ていた身としては期待していたものと違った。
最後に種明かしがされるが、裏切られるんだろうなと薄々感づいているので、それほどの驚きはなく、本物のクレアの説明を聞いてもそうかーとなっただけだった。
堅物な老人と若く美人な女性の組み合わせに違和感があったことや、周囲の執拗な「金が目的ではない」発言、「贋作の中にも真実はある」というこの作品のテーマらしきセリフから、不穏な気配は察知していた。でも最後のヴァージルの描き方が、作品中のヴァージルの悪いところと天秤にかけたとしてもお釣りが返ってくるくらい酷いので、ヴァージルに感情移入していた私は不快に感じた。
映画の大半を費やしてヴァージルの心の成長を描いて、鑑賞者の気持ちをヴァージルに寄せていき、最後のシーンでヴァージルと共に呆然とする。最後のシーンのために全てが仕組まれていたのは、ビリーとヴァージルの関係だけではなく、監督と鑑賞者の関係にも重なるだろう。
だがヴァージルと違うのは、私はクレアに好印象は持てなかったし、溺れることもできなかったので、最後の不快な面が印象に残ってしまったんだと思う。もう見たくはない
ただ、ラストシーンはハッピーエンドだと思う
美術品の贋作は見抜けても
贋作の愛は見抜けませんでした。ってか?
やかましいわ!!!
と終わった後にツッコミが入りました。
主犯格はビリー、仲間が「クレア」、管理人、ロバートの4人組?
伏線は多少あったにしろ、オチが唐突すぎてどこまでが詐欺集団(仮称)だったのか、という疑問が消えません。ロバートの彼女?たちは本当にただロバートに遊ばれていただけだったのかしら…?
ビリーが犯行に及んだ理由は自身の絵を認められなかった恨みからってところからなんだろうけど、「クレア」とロバートはどこからなんの理由で協力してたんだろう。
ロバートの身軽さから元々組まれた詐欺集団ってことは考えにくいし。
オールドマンが若者に襲われ、「クレア」が屋敷から出て来たシーン。前置きにあった会話から考えれば少し無理があるように思えたが、あそこから「クレア」の愛が本物であったかどうかを判断するのは鑑賞者に任せるということなんだろうか?正直あそこで「クレア」が出てこようと出て来まいとなにも話の筋には影響がないように思える。
鑑定士として生涯をかけて相当な地位と名誉、そして美しい美術品を築き、集めて来た男が、顔のない依頼人(クレアのみを指す意ではない)によって少しずつ少しずつ気づかないうちに“今”を奪われ行くようだった。
見終わってすぐは「???」という感じだったが、雰囲気がとてもよかった。個人的には鬱々となる胸糞エンドも悪くないかな
贋作のなかにも本物はある。
贋作のなかにも本物はある。この映画にとってこのセリフはとても重要な言葉である。たとえ偽物だったとしてもその中には本物がある…ネタバレになるので文章だけではわかりづらいが、映画を観ればすぐに理解するだろう。
なんとなく展開は読めていたが、それでも見入ってしまった。偏屈なジジイが気になってしまう。
映画が終わっても後日談を想像してしまうことほど虚しいものはないが、その後のじいちゃんが気になって仕方がない。
以下は少しネタバレ
たとえ偽物だったとしても、じいちゃんのその気持ちは紛れも無い事実だったであろう。愛したことも、愛されたことも、嬉しいという気持ちも、悲しいという気持ちも…まさしく、贋作のなかにも本物はある、だった。
じいちゃんは元気にしてるのかな
そう思わせてくれる映画でした。
ミステリーとファム・ファタールとどんでん返し
感動作だけじゃなく、ミステリー作にも手腕を奮うジュゼッペ・トルナトーレ。
「題名のない子守唄」は非常に面白かったが、こちらも上質のミステリー!
超一流の鑑定士、オールドマンの元に舞い込んだ依頼。
ある屋敷の美術品の数々の査定を引き受けるが、奇妙な事に依頼人である女主人は一切姿を見せず…。
姿を見せない依頼人に時折苛立ちを露にするオールドマン。
依頼人は怒ったり謝罪したり、コロコロコロコロ態度が変わる。
翻弄されながらも、何か惹き付けられていく。
主人公よろしく、見る側もこの奇妙な依頼人と設定に引き込まれていく巧いプロットだ。
女主人は一体どんな人物か?
その顔は?
最後まで焦らせて焦らせて、それ一本で話が進むと思いきや、唐突に。
どうしても依頼人の顔が見たいオールドマンは、ある日、帰ったと見せかけて物陰に隠れ、依頼人が籠りきりの部屋から出てくるのを待つ。
その瞬間はすぐに。姿を見せた依頼人は…。
ここでミステリーからファム・ファタール物へ。
魅惑的な依頼人にオールドマンはすっかり虜に。
元々女性と接するのが苦手なオールドマンと広場恐怖症の依頼人クレア。
少しずつそれを乗り越え、距離を縮め、共に歩む事を決心する。
オールドマンが今の地位も名誉も捨てたその時…!
ジェフリー・ラッシュの名演。
エンニオ・モリコーネの流麗な音楽。
それらと巧みなストーリーが合わさり、全く飽きさせない。
女性と接するのが苦手という一面がありながら、プライドが高く偏屈な性格のオールドマン。
インチキ・オークションで女性肖像画を多くコレクション。
その共謀者で、オールドマンに画家の道を諦めさせられた男。
オールドマンの恋の指南役となる機械職人の若い男。
そして、魅惑的な女性。
張られた伏線が繋がり、ミステリーからファム・ファタールからどんでん返し。
ラストのオールドマンの姿にどんよりするもの感じつつ、二転三転する展開に魅了されっ放しであった。
ラストの展開が
ずさーん
ラストまで行くと、なんていうか、
「ずさーん」って気持ち。笑
ラストあたりで、ズザザザザーって追い討ちをかけられる。スピード感がすごい。
あの絵の部屋に入った時の喪失感。
「ヒッ」って悲鳴が出てしまう。
ビリー、クレア、ロバートはグルで、
ぜーんぶ騙されてた訳だけど、、、
1回しか見てないから、わかんないけど、2回目とかみたらまた違うのかな?矛盾とか見つけれるのかな?
クレアが姿を現わすまで、すごく不思議で、興味を惹きつけられた。
意外とあっさりと姿を見ることができて、
意外とそこまで病気は深刻ではなくて。
あのロボット?をわざわざ組み立てさせたのは、どういうことなんだろなー。
それもロバートの所に出向かわせる罠?
ヴァージルだったら絶対興味を持つだろう、って予想だったんかな?
まーとにかく見てて飽きない映画だった!
映像も綺麗だし!
切ない
叩き落とす感じ
ハッピーエンドで終わりか〜
って思って呑気に観てたらどん底に
突き落として終わったのでビックリしました。
フラグ自体はあったことと、その後の
場面があるので衝撃が尾をひくことはなく、
その代わり悲惨さが心に残ります。
ラストシーン
30分くらいはこっからまだなんかあるかな...
と疑って観てましたw
ビリーからの最後の絵の
ブラックジョークは理解した時
ちょっと笑ってしまいました。
引き込まれました
贋作と愛情
人と関わって人は変わるものだと思わされた。
良くも悪くも。
音がが不気味でいつも疑わせるような感じ。
美しいものほど、恐ろしい。
名鑑定士でも見抜けないものもあるってことですかね
結末はどっち?
少々潔癖症気味のヴァージルさんの生活模写がよかった。
だまされたと知って呆けたようになってしまった彼が、最後は偽者クレア嬢と再会するのか?
ストーリーの続きが見たい。
人の気持ちを弄び踏みにじることの禍々しさを見せられる作品であった。
伏線が切ない
全体的に切ない。ものすごく。
まず題名。「顔のない依頼人」…このトリックに見終わってしばらくしてから気づいた。クレアじゃないんだ。いや、クレアでもあるんだけど、多分二重の意味。
「顔のない依頼人」の顔を見たとき、あれ?こんな感じで題名回収しちゃうの?って思って少し盛り下がったんだけど、ごめんなさい。多分あのへんが1個の区切りなのかな、と。「堅物鑑定士」が人に対する感情を知り、その感情に振り回される「老人」になっていく区切り。
思い返すと色んなところに伏線があるんだけど、1番真相に近いものとして、序盤の落ちていた歯車の矛盾。この矛盾に気づいたのは「堅物鑑定士」だった。それがクレアによって崩されていき、クレアを愛するようになり、普通の「老人」になったとき自分が生涯をかけ集めた宝、プライド、すべて根こそぎ奪われた。
もし「堅物鑑定士」のまま、ロバートたちに奪われいたら、あんな風にはならなかったんだろうなあ。切ねえ。
クレアがいなくなったとき、向かいのバーで若者たちがバージルに教えてくれた「様子がおかしかった」っていうのも、「いつもとは違う」つまり屋敷を頻繁に出入りしている伏線だったのかな。多分これもバージルが「堅物鑑定士」のままだったら気づいた「矛盾」なんだろうなあ。なんて。
あと「贋作の中にも本物はある」…最後、ロバートが言ったセリフだけど、この「本物」っていうのはバージルのクレアへの愛、っていう皮肉だったのか、クレアからバージルへの愛、っていうほんの少しの置き土産だったのか。
どっちにしろものすごく切ない。
でもこういう切なさが好き。
変にハッピーエンドにならなくて良かったー
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