ハンガー・ゲーム2 : 映画評論・批評
2013年12月24日更新
2013年12月27日よりTOHOシネマズみゆき座ほかにてロードショー
アメリカ版「バトル・ロワイアル」が、2作目で傑作に変身
アメリカ版「バトル・ロワイアル」とも言われた1作目はてんでなっていなかったというのに、2作目でいきなり傑作に変身するなんてことがあるんだろうか? 驚いたことに、答えはイエスである。
前作は設定の割に近未来ディストピアものとしての深みも、サバイバル・アクションとしてのスリルや衝撃も、群像劇としてのキャラクターの個性、面白みにも欠け盛り上がらなかった。しかし今回はそのすべてがある。なんといっても脚本が、「スラムドッグ$ミリオネア」のサイモン・ビューフォイと、「リトル・ミス・サンシャイン」「トイストーリー3」のマイケル・アーントという最強布陣。ストーリーはこの世界の構図をくっきりと示して説得力にあふれ、あっと驚かせる衝撃のクライマックスは続く最終章(2本の映画になるらしい)への期待を大いにあおってくれる。
監督も交代し、フランシス・ローレンスは緊張感を途切れさせない演出手腕を鮮やかに発揮。脇キャラの充実ぶりも完璧だ。狂気の独裁者を演じるドナルド・サザーランドだけでなく、サポート役のウッディ・ハレルソン、新たに登場するゲームメーカー役のフィリップ・シーモア・ホフマンら、うまい役者たちの演技合戦は贅沢の極み。殺戮ゲームそのものを描く映画ではなくなっているがアクションにも工夫があるし、さすがに歴代勝者のオールスター戦とあってサム・クラフリン、ジェナ・マローンら、魅力的なキャラクターがここにも揃っている。
しかし、本作を大成功へと導いた立役者は、もちろんジェニファー・ローレンスだ。美形ではなく、ちょっとおばちゃんっぽい風貌ではあるが、いやだからこそ、非常に人間くさい。単なる超人的な女戦士ではなく、うちひしがれ、怒り、揺れ惑い、それでも必死で運命に立ち向かう少女のエモーションが、アクション以上に圧倒的なスリルを感じさせるのだ。ジェニファー・ローレンスは、信頼できる!
(若林ゆり)