LEGO(R) ムービー : 映画評論・批評
2014年3月19日更新
2014年3月21日よりロードショー
完璧なアニメを超えたところにある、自由で大きな世界
誰もが一度は遊んだことがあるおもちゃ、レゴ。自由に組み立てることが出来るプラスチックのブロックと、黄色い顔の付属の人形からなる世界が映画になった。主人公はレゴで出来たブロック・シティに住む建設作業員のエメット。彼はマニュアルなしでは、何もすることが出来ない。古くからある建物を壊して画一的な建築に作り替える仕事内容だけでなく、シャワーの浴び方、朝食の食べ方に至るまで、エメットの1日はマニュアル・ブックに支配されている。彼の街では誰もが同じバラエティ番組で笑い、同じヒット曲を聞いて、同じコーヒー・チェーン店で何も疑問を抱かず高い値段でコーヒーを買っている。それらの全てを供給しているのは、「おしごと大王」という支配者が主宰する大企業だ。
設定で分かる通り「LEGO ムービー」は、現実の社会を反映したかなり大人向けの内容になっている。CGアニメ特有のなめらかさを排して、レゴが積み上がったり崩れたりする様子をストップ・モーション・アニメ風に見せるという遊び心や、レゴのキャラたちから思考の自由を奪い、ひとつの場所にフィックスして動かせなくしてしまう機械「スパボン」と、その機械を唯一止めることが出来る謎のパーツを巡るエメットと仲間たちの戦いにぐっと来るのは子供たちよりもむしろ、彼らを劇場に連れてくる親の世代かもしれない。1980年代モデルの宇宙飛行士等、出てくるレゴのキャラもややノスタルジックだ。しかし「LEGO ムービー」は子供向きと見せかけて大人を泣かせるアメリカ版「オトナ帝国」(※)ではない。大人の感覚だけでおもちゃを使い、本来のターゲットである子供を忘れるようなことはしないのだ。ストーリーは意外な展開を見せて、レゴを主人公にした完璧なアニメという枠さえも超えていく。その先に大人も子供も泣けるこの映画の真の物語と、レゴというおもちゃが持っている、ちょっとやばいくらいに自由で混沌とした大きな世界が待っている。
(山崎まどか)