「ゴジラの意義を総括しつつ娯楽大作として描く意欲作」GODZILLA ゴジラ 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
ゴジラの意義を総括しつつ娯楽大作として描く意欲作
※ネタバレ無いけど長文注意です
ハリウッド版『GODZILLA』リメイク作、遂に日本公開!
幼い頃からゴジラ大好きな自分としては、全米公開から
2ヶ月も開きがあるのは拷問みたいなもんでした。
監督は英国出身の新進気鋭、ギャレス・エドワーズ。
様々な雑誌等で日本人顔負けのゴジラ愛を語っていた
彼は一体、どんなゴジラを作り上げたのか?
* * *
この映画で何より素晴らしいのは、ゴジラ。
ゴジラの一挙手一投足から目が離せない。
見よ、威風堂々たるそのフォルムを!
聴け、空気を震わすその大咆哮を!
“恐ろしい”ではなく“畏(おそ)ろしい”と
呼ぶに足る、その圧倒的な畏怖と厳格さ!
日本版の造形を踏襲しつつ、
いっそう力強くなったその立ち居姿。
まさに映画史上最強の生物と呼ぶに相応しい風格だ。
遂に全身を現したシーンには身震いがしたし、
◯◯を◯◯する際の、◯◯の先から◯◯までが
順々に◯◯していくシーンなんて『うおおぉ、
遂に出るかぁ!』とムチャクチャ燃えた!
(◯◯ばっかじゃねえか)
昨年の『パシフィック・リム』はド派手な
戦闘演出に関しては『ゴジラ』以上だったと思うが、
今回のゴジラは怪獣の重量感の表現や
リアリティにおいてはその上を行っている。
咆哮の際に身体を小刻みに震わせる獣のような所作や
(相手を威嚇しようと吼える熊を連想した)、
信じられないほど巨大な生物を目にした際の人々の
呆然とした表情も現実味に溢れていて素晴らしい。
ちなみに監督いわく、腕のデザインは武者鎧の
籠手(こて)を参考にしているそうな。
成程、終幕間際のゴジラの姿は孤高の戦士のよう。
戦って戦って、傷だらけになって倒れても、
同情のひとつも、見返りのひとつも求めない、
途方もなく気高い存在に映るのだ。
* * *
1954年当時は反戦・反核の象徴であったゴジラも
年を経るほどに様々な意味合いを帯びるようになった。
ゴジラは子ども達のヒーローとなり、
特撮映画史におけるマスターピースのひとつとなり、
環境破壊やテクノロジーの暴走に対する戒め、
あるいは自然の脅威の象徴となった。
今回のギャレス・エドワーズ監督版『ゴジラ』はそれら
すべてを几帳面にも網羅しようとしていると感じる。
まず、今回のゴジラは生態系のバランスを乱すものを
駆逐する一種の神、“神獣”として現れる。
かつて水爆実験でそのゴジラを殺そうとしたという
設定も、自然をコントロールしようとする人間の
(言うなれば西洋的思想の)傲慢な行動として
批判的に捉える事ができると思う。
また、反戦というメッセージ性こそ弱まったものの、
放射性物質をエネルギー源として害を為す生命体
MUTO(ムートー)をゴジラが狩るという流れは、
反核・反テクノロジーという点でやはりブれていない。
ゴジラが上陸する際の津波に無数の人々が呑み込まれる
描写も、彼が荒ぶる自然そのものであるとの象徴だ。
明らかに3.11を意識したあの描写。恐ろしい光景だった。
* * *
だが残念ながら、
本作を完璧な映画とは言い難いと感じるのも事実。
個人的には、不満点は大きく4つある。
①今回のゴジラは、人類を救うヒーロー
としての側面が強く出過ぎたのではという点。
本作ではゴジラが直接街を破壊するシーンが少ない。
津波のシーン以外、ゴジラによる人的被害は
殆ど描写されない。
敵怪獣を登場させた以上はそれも仕方無いかもだが、
予告編や広告コピーを見て期待していた
『極限の恐怖・絶望』は物足りなかったなあ。
初代ゴジラから感じられた、荒ぶる災厄のような
恐怖も味わってみたかった。
②あと15分くらい怪獣どうしのバトルを見たかった!
最初のバトルをTVのニュース映像で見せるのは……
意図は分かるがフラストレーション溜まります。
リアリティ重視とはいえ、人間の目線でバトルを
見てるシーンが多いので、豪快に闘ってる様が
良く見えないんすよね。
クライマックスではガッツリ肉弾戦が見られるが、
それまで焦らしに焦らした分、もう少し長く見せて
ほしかったなあというのが正直な所。
あ、けど、最後の決め技は壮絶で◎!
③登場人物たちの行動理由が分かりづらい点。
例えば芹沢博士がゴジラに対してどんな感情を
抱いているのかが僕には今ひとつ掴み切れず。
主人公の行動にもイマイチ主体性が感じられないし、
主人公の父も消化不良のまま退場してしまった感が。
いや、登場人物らの行動目的や理由は
セリフでちゃんと示されていた気がする。
だが物語の展開をこま切れにし過ぎた為か、
あるいはキャラクター1人1人の行動を整理して
見せられなかった為か、なぜだか支離滅裂な行動
に映ってしまっているような……。
④物語のテンポ。
これは③にも似た話になるが、
ゴジラ対MUTOという物語の大きな流れに多くの
登場人物のドラマを盛り込もうとして、それらを
さばき切れずにテンポを悪くしているという印象。
例えばMUTOの列車襲撃シーンや主人公の妻エルが
避難するシーンなどは細切れにせず、ひとつの
長いシチュエーションとして見せた方が
緊張感が途切れず効果的だったのではと感じる。
……まあこれは“下手の横見”ってヤツかしらん。
劇場公開作2作目にしてこの超大作を作り上げた
エドワーズ監督はものすごい才能の持ち主だと思うし、
ゴジラへのリスペクトも本物だと思うけれど、
ストーリーテリングの面ではまだ課題アリかも。
* * *
ただし。
『ゴジラの根底に流れるテーマが薄れてしまった』と
低評価をつけている方々もわりと多いようだが、
その点では僕はあまり不満は抱いていない。
現代の凄まじいVFXでゴジラを観られることは
僕には喜び以外の何者でもないし、ましてや
ゴジラが狭い日本のみならず、世界で受け入れられる
キャラクターとして復活を遂げた事は嬉しい限り。
確かに、ゴジラという存在が投げ掛けるテーマは深い。
だけど、その深遠さに観客の僕らが気付き始めたのは
それなりに歳を重ねてからの事ではなかったか。
少なくとも僕が幼い頃、
初めてゴジラに夢中になった理由はもっと単純だった。
彼は最高に強かった。最高にカッコよかった。
僕にとって彼は無敵のヒーローだった。
今回のゴジラも一種のヒーローとして描かれていた。
彼がスクリーンに出現する度、僕はその
猛々しく勇壮な姿に目を釘付けにされた。
多分、それでいいんじゃないか。
ゴジラに憧れた子どもなら、大なり小なり、
いつかその存在意義に気付いてくれる。
ゴジラが2014年まで生き残り、そして今回
世界規模で復活したのは、日本だけでなく、
監督のような世界中の熱心なファンがその意義に
共鳴してくれてることの証明じゃないだろうか。
* * *
大ヒットを受け、続編制作が既に決定している本作。
次回はモスラ、ラドン、キングギドラを登場させようと
エドワーズ監督は企んでいるらしい。
え、うわ、それってまんま『三大怪獣地球最大の決戦』
(ゴジラシリーズ第5作)じゃん(笑)。
次回作はどんな風にリアリティを加えてくれるのか?
1作目からどんな進化を(監督も含めて)遂げるのか?
今からもうワクワクしている自分がいる。
楽しみだ。
〈2014.07.26鑑賞〉
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余談:
けっこうな数のレビュアーさんも書かれているが、
今回のゴジラは平成『ガメラ』シリーズや
『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』
(どれも金子修介監督)が目指していたであろう
路線にけっこう近いと感じる。
どちらも非常な意欲作で、特に『ガメラⅡ』は傑作だ。
しかし『ガメラⅢ』は内省的な内容に収束して
しまったし、『~大怪獣総攻撃』はドラマ面や
テンポに難のあるいびつな作品になってしまったと
個人的には感じている。
とはいえ、最近の日本で巨大怪獣が登場するのは半分
パロディ的な笑いを打ち出したような作品ばかりだ。
『所詮は子ども・マニア向け』という風潮もあって
大予算を組ませてもらえること自体少ないのだろう。
今回のゴジラがヒットした以上、日本で
新作ゴジラを作るのはしばらく難しいと思う。
だが、今回のゴジラに奮起されて、いま一度意欲的な
特撮映画が日本で作られてほしいと切に願う。
(余談も長い)
きびなごさん、こんにちは。
ゴジラ、良かったですね~。
何が良かったって、放射能など、ゴジラ誕生に欠かせない事項を
しっかり受け継いでいてくれたところです。
ゴジラの存在感も、時代によって、変わりつつあるようですね。
まさに、「GODジラ」でしたね。
ただ一つ、不満なのは、ゴジラのお顔があまりに
悪役顔だったことです。
ゴジラって、もっと可愛いところがありますよね~。
次回作も決定しているのですか。
え~!
キングギドラ、モスラ、ラドン!!
それは、楽しみです。
久し振りに失礼します♪
きびなごさんもゴジラ好きでしたか〜!
僕は、映画好きのきっかけになったのがゴジラシリーズだったので、愛着有り過ぎです(笑)
意外にも賛否多いようですが、個人的には満足出来ました。
放射能などゴジラを描く上で避けては通れないテーマにも挑んでいたし、何よりゴジラの見せ方が素晴らしかった!
雄叫び、熱線、尻尾での攻撃、そしてラストシーン…日本のゴジラへのオマージュたっぷりです。
ゴジラの登場シーンが少ないと言われてますが、よくよく思い出してみれば、「怪獣大戦争」だって少ないですからね。
残念な点も幾つかありましたが、ハリウッド版シリーズ第1作目としては無難な出来だったのではないでしょうか??
既に発表された通り、続編が待ち遠しいです!!
次回作も新怪獣、3部作の完結編でキングギドラでも登場したら嬉しいなぁと思っていたら!
次回作で早くも「三大怪獣〜」のスター怪獣たちが登場とは!
となると完結編は、キングコングかななんて思ったりしてます。レジェンダリーはキングコングの映画化権も獲得しましたし。
これで映画の楽しみがまた増えました\(^o^)/
長文コメント失礼しました。