「リアルな「いのち」」かぐや姫の物語 yappiさんの映画レビュー(感想・評価)
リアルな「いのち」
試写会で観てずいぶん日がたちましたが、
観た時の感触がいっこうに薄れません。
とりつかれたように、いろいろ考えずにはいられませんでした。
この映画そこここで、
「極上の映像の昔話」「話は竹取そのもの。絵が綺麗。」
みたいな称えられ方もされてます。
確かに、ため息がでそうに美しい画面であることが大きな魅力ですが、それだけではこの映画の衝撃十分には語りつくせてないと思ってしまいます。
だってこれほどまでに丁寧に丁寧に
いのちが描かれてるんだから。
ざっくりいうと、
あのわらべうたは「罪と罰」であり、
それがこの映画のすべてなんですよね?
”わらべうた”は、
謎解きができてしまいそうなぐらいに綿密にかつ極限まで無駄な説明描写なしに、物語に織り込まれていて、
リアルな地球を浮き彫りにします。
生きることを鋭く描きだしています。
そして、
「地球に生れ落ちて、とりむしけものくさきはなひとのなさけ…つまり苦しみ悲しみ醜さの中で生きる」これが罰であるならば、
この物語はいよいよただのおとぎ話ではなくて、
今痛みを感じながらこのいのちを生きている、私たちの物語でもあるのかな、と思われてなりません。
最後に…
エンディングの’いのちの記憶’から
「必ずまた会える 懐かしい場所で」
とあるけれど、
姫の出会ったひと(地球で生まれ死に生まれ死にゆくひとたち)と姫とは、もう二度と絶対に会えないんでは?
この歌詞は虚しい慰めなのかな?
と思ってました。
でも、
天人ってそもそも何者なんだろう?と調べてみたら、私はちょっと勘違いをしてたとわかりました。
きっとまた会えるはず。
P.S.私事ですが石作皇子役上川隆也さんが好きで、舞台などいろんなところで上川さんをみてきました。が、こういった形の出演でここまで彼の魅力がひきだされて、作品の確かな一角になるとは!……という驚きもありました。キャストの魅力の引き出し方も、この映画の魅力の一つだと感じました。