「何度も見て噛み締めたくなる昔話。」かぐや姫の物語 わっちさんの映画レビュー(感想・評価)
何度も見て噛み締めたくなる昔話。
「かぐや姫の物語」*ややネタバレ
地味。だからこそ素晴らしい。
生きるってなんだろう。
それを、ものすごく控えめに問いかけている。
周囲のいろいろなものに縛られて「こんなのニセモノの私だ!」「もっと自由に生きたい!」と願う気持ちは、誰もが感じることだろう。
フランクフルトに住むことになったハイジが、アルムの自然を恋しがる、あの感覚。
映像が本当にこだわり抜かれていて、動画、ではなく「2時間かけて50万枚の絵画をだぁぁ〜っと見た」感覚になる。
そして、だからこそかぐや姫が満開の桜の下で跳ね回るシーンや、唯一手書き感だけじゃない要素が入ったクライマックスのあのシーンが、ものすごく生き生きと感じられるのだと思う。まさに生きる喜び。
そんな映像を活かす音楽と効果音。そしてキャストの演技。
相変わらず安定の久石譲。ちゃんと高畑カラーの曲になっている。
俳優を使ったアニメ作品で、これまでで一番ハマったと感じたかも。
ヒロインの朝倉あきは素敵な声で、下手な声優さんよりよっぽど上手い。地井武男、宮本信子の翁媼も見事。
あくまでも原作に忠実に、極力脚色しない姿勢は分かるけど、もう少し月での出来事と、捨丸とのやりとりを描きこんでも良かったかも。
そして捨丸は独り身であって欲しかったよね…f^_^;)
たまには炭焼き小屋のお爺さんみたいな人に出会って「必ずまた春が来る。だから冬を我慢するんだ」と教えられることもある。
一緒に見に行った人は「悩みも苦しみもない月の世界の方が良いに決まってんじゃん」って言ってたけど笑
ちょっとスッキリ感に欠けるぶん、大ヒットはないかもしれない。
だけど、そもそも昔話ってつじつまあってなかったりスッキリしない部分も魅力だから、仕方ない笑
そして、77歳の語る「生きる」は、深く重く感じる。