「いのちの記憶とは。」かぐや姫の物語 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
いのちの記憶とは。
試写会にて鑑賞。
入場前に初めて「手荷物検査」なるものを受けた。さすがはジブリ^^;
しかし今作の内容、そこまで秘密主義にする必要があるのかな。
竹取物語(かぐや姫)は、子供の頃から昔話として慣れ親しんでは
きたが、解釈にはいろいろな説があるらしくて私にも分からない。
高畑監督は序盤で描かれる「罪と罰」に重点を置きたかったらしく、
それをテーマに挙げているが、これは小さな子供には理解できない
だろうなぁ…が正直な感想。面白い、楽しい、昔話というワケでは
ないので、意味も分からずに飽きてしまうだろうな、と思われる。
姫がなぜ地上に落とされて、また月上へと還っていくのか。
そこに関連する彼女の罪とは何だったのか。まぁそうだろう…が
分かるようには作ってあるが、言葉で表現するようなところもなく、
古典をそのままに、やや方向性を変えて、テーマを構築した感じ。
非常によく出来ているが、長いうえに深遠で分かり辛いのが難点。
冒頭の躍動感溢れる描写が素晴らしいので、あのまま「たけのこ」を
観ていたかったと、最後まで(その想いにより)感動がそこに留まる。
原作には捨丸兄ちゃんなる人物は出てこない。
姫が想いを寄せる彼との叶わない恋がクライマックスだが、
個人的には翁の変貌ぶりが印象に残る(名優・地井武男の声が聞ける)
我が子を幸せに、と願う親心を利用した悪徳金品商法に(月が施した、
なんていうと聞こえが悪いが)、まんまと嵌って姫を不幸に陥れるが、
これはどの親でも持ち合わせている子供への期待であり、ついやって
しまう失敗例だったり(成功例もあるけど)するんじゃないだろうか。
親って、なんて愚かなんだろう。とまるで自分のことのように思えた。
幸せになってはいけない運命を背負った姫が地上で体験する事々は、
文明社会に生きる人間達には、当然のように襲ってくる試練でもある。
ラストの月からの使者に使われた音楽と表現法には、たまげた^^;
オカルトか?とも思える陽気なリズムと、聖☆おにいさんですか?と
見間違ってしまったあの風貌。私だって願い下げるわ、帰りたくない。
そう思わせるのが狙いか?と思える現世離脱感覚。さすがお月さま。
(水墨画のようなタッチ、柔らかさと猛々しさが繊細に表現されている)