「爽やかな風を体全体に浴びたような気分です^^」風立ちぬ まこたふさんの映画レビュー(感想・評価)
爽やかな風を体全体に浴びたような気分です^^
宮崎駿監督は本当に自分の好きなように、本作を作られたんだなあと感じました。豚は一切出てきませんし(笑)、客を喜ばせようというシーンも全く出てきません。
ただ二郎が、ゼロ戦を作り上げるまでの過程が淡々と描かれているだけです。しかし僕はそんな世界をもっと見ていたかった、爽やかな風をもっと浴びていたかったと思ってしまいました。
本作で描かれる二郎は、監督ご自身の姿だと思います。二郎も監督も非凡な才能を持っておられます。そのために、二人に求められるものというものは大きくならざるを得ない。おそらくそれは、周りがそこまで求めなかったとしても、自分の意識がそれを求めてしまうようなものだと思います。
そんな二人(二郎と監督)には普通の生活を送ることはできません。二郎は菜穂子と一緒に療養所に行きたくても行けません。菜穂子は一緒に療養所に行きたいとはいいません。それはなぜか。もし一緒に行ったとしても、そこにいる二郎は菜穂子が愛した本来の二郎ではなくなるからです。やはり二郎はゼロ戦をつくるしかないんです。それが二郎だからです。
二郎にも葛藤はあるはずです。妻のためにはこれではだめなんだ。しかし自分にはこうすることしかできない。菜穂子の体にとって最善ではないかもしれない。しかし二郎と菜穂子の関係においては、菜穂子に側にいてもらうあの形が最善となってしまうのでしょう。
二郎ほどの人間であっても、やはり一人ではゼロ戦はつくれない。菜穂子が自分を支えてくれたからいい仕事ができた。本作は、監督がご自身の奥さんに向けてつくられた映画なのかもしれませんね^^
劇中に出てくるもの全てが美しいです。人も自然も人口造形物もなにもかもが美しい。潔い。真剣さを隠すレトリックも全くありません。醜さも派手さも全く用意されていません。
僕はスポーツやマラソンを見ているような感じで、本作を見ていた気がします。監督の人生を感じながら、僕はそれに自分の人生を重ね合わせたり、振り返ったりしながら…
妻への感謝の気持ちと、「いろいろあったけど、俺頑張ってきたなあ」そんな気持ちから、監督は涙されたのかなあと思いました。
実際の人生は、映画やドラマのようなシーンはほんの一部分で、それ以外は本当に淡々としていますよね。でも、その淡々とした日常がいいんだよなあ、なんて思ってしまうのですが、日頃はまた忘れているんだろうなあ^^
やはり頑張って何かを成し遂げた喜びというものは、何ものにも代えがたいものがありますよね(*^-^)