「あなたには今、風が吹いていますか?」風立ちぬ 鷹さんの映画レビュー(感想・評価)
あなたには今、風が吹いていますか?
人にはそれぞれ、風が吹いている。
そして、その風が止んだ時
その人のいきいきとした人生の息吹は静かに引いていくのであろう。
その風が吹いている間、人はまたつらくとも前に進んでいかなければならない。
その結果、自分の意図するものとは違った予期せぬ事象を生み出したとしても.....
それが、生きると言うことなんじゃあないか。
この物語は、真に才能を持って生まれ、周りの理解者に恵まれ、小さい頃からの夢を大切に育て上げた世界屈指の技術者たる天才堀越二郎、その主人公の生き様を主題とした、透明感溢れる精緻な協奏曲だ。
緩やかな時間表現の場面でもその豊かな芸術性はいささかも失われずに、凛とした高貴さと共に胸の奥にしみこんでくる。
動きのある場面はジブリの表現力面目躍如たるところ。
細かい場面解説、解読、説明は他の方に譲る。
鹿野氏の主人公の声について様々な議論を呼んでいるようだが、私は見事と賛辞を送りたい。
他の方々(声優、俳優の方々)とまったく異質な存在感を持たせたことにより、この作品が単なる娯楽映画ではなく芸術にまでに昇華した。
誤解を恐れずに敢えて言えば、私に東京物語の笠智衆の口下手なまっすぐさを備えた存在感溢れる声を想起させた。
あと、子供向きではないというご意見もあるが、子供に理解できるものだけを与える教育もあるかもしれない。
しかし、時にはとても理解しきれないものを与えてみるのもよいのではないかと思う。子供は意外とそれなりに理解しようとするのではないだろうか。
藤原正彦氏は、その著書”国家の品格”の中で、天才は美しいものに囲まれて育つと言うような意味のことをおっしゃられていたと記憶する。
私はこれほど美しい精緻なアニメを見たことがない。
それだけでも、子供に見せる価値はある。
自分の理解できそうも無いものをはじめから拒絶するような未来の無い子供には親としてなって欲しくは無いだろう。
そして、一場面でもその子供の記憶に残れば、人生の大切な基礎の一部になるやもしれん。
蛇足ながら、私が幼い頃に連れて行かれて、背景も内容も解からずに見た”アンネの日記”。
いまだに、あの少女の目が記憶の片隅に残っている。
鷹さん
遅くなりましたが、レビューへのコメント
ありがとうございました。浮遊きびなごと申します。
鷹さんのレビューには既に共感票入れさせてもらっていました。
作品への愛情を感じる素敵なレビューですね。
他の方へのコメントにしても、頭ごなしに批判せず、
冷静に回答しようと努めておられる。
コメントの中で、作品を真っ暗闇の蛍に例えておられましたね。
僕もそれに近い印象を覚えました
個人的にはこの映画、反戦映画というよりは、
個人の小さな力ではどうにも抗えない出来事の中で、
それでも精一杯生きようとする美しさ、
生きようと思わせてくれるものへの
感謝と弔いの念を表した映画だったと思っています。
長文すみませんでした。
要は、鷹さんのレビューやその姿勢に共感したのと、
僕の長々したレビューを読んでくださりありがとうございましたと言いたかった訳でして。
文章が長くなるのは僕のクセですので、返信お気になさらず。
それでは!