「セリフで表現されていない部分に感動」風立ちぬ リノアさんの映画レビュー(感想・評価)
セリフで表現されていない部分に感動
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飛行機を作ることが夢で、夢に一途、それでいて真面目で優しい少年だった主人公。
しかし、時代は大正から昭和初期。今でいう旅客機ではなく、戦闘機の設計の方に国自体が力を入れていたのだろう。戦争が起きる事は自然の流れであるかのように教育されていた時代だったのだろう。彼は、夢見ていた素敵な飛行機ではなく 戦闘機の設計を悪意なく必死で続ける。
所々で、裕福ではない人々が多いにもかかわらず莫大な費用が 戦闘機に投入されていること、そのせいで食べたいものも食べられず 我慢を強いられている子供たちの存在も知るが、それでも 彼は戦闘機の設計(もっと言うと、彼にとって戦闘機も旅客機も”夢の飛行機”でしかなかったのだと理解した)をやめようとはしなかった。
人殺しのために研究を重ねて作られた戦闘機であったかも知れないが そのおかげで現代のような安全な旅客機を作り上げる事が出来たのかもしれない。皮肉なものではあるが。
隔離されるほどの病気である結核の婚約者に対しても 感染を恐れることなく まっすぐに愛を捧げている姿にも心を動かされた。
戦後生まれの戦後育ちである私にとって、理解しがたい時代背景ではあるが、祖母や祖父、父や母に聞いた話等と照らして考えると セリフで表現しきれない部分で 主人公や登場人物の膨大な苦悩があったのだろうと、推測は膨らむばかりである。
宮崎さんの作品にある”隠されたメッセージ”は 一度観賞しただけではわかりづらいため また観たい、とそう思わされてしまう作品の一つとなった。
夢を見る事を忘れ、深く考えることを忘れてしまった私たちにもっと想像を膨らませ、そして考えろ と言いたかったのかもしれない。
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