「きっと、乗っ取れる。」きっと、うまくいく ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
きっと、乗っ取れる。
インド映画、ボリウッドムービーには詳しくないのだが、
いつものシネコンに突然入ってきて(爆)ちょっと驚いた。
なんたって170分の大長編!(ってこの長さで普通レベル)
久々に腰を据え^^;大河ドラマを観る構えでトイレも万全。
インド映画を観るには体調管理がとても重要になってくる。
まずは座っていられるか否か。最近は長編が多いけどね。
それから音楽の使い方が非常に独特で冒頭から大音量、
途中で歌手が臆面もなく登場し、ギター片手に歌を熱唱、
恋愛妄想場面では総勢でミュージカル構成になる。
ここで一体何が起きたのか?なんて考える必要はなく^^;
次場面で何事もなかったようにドラマに引き継がれるので
合い間のCMのように楽しんでればいいと思うのだが、
それなら何か商品を持たせてPRしてもいいんじゃないか?
なんてかなり蛇足なことまで考えてしまう。
ボリウッド俳優さんたちは、歌って踊れて演技もできるが
これだけ完璧ならば、某有名テーマパークをインド人で
乗っ取れるんじゃないかと思えるくらい、堂に入っている。
何をやらせても上手い。派手。完璧。勢いがある。
最近某番組にて、インドカレーの専門店で働いているのは
ほとんどがネパール人であるといっていた。
じゃあインドの人々は何をやってるんだ?と思っていたら、
最も多いのがエンジニアだった。日本にも沢山いらっしゃる。
かの2000年問題では沢山のインド人エンジニアが来日して、
それで現在、西葛西はインド人の街になっているらしい。
いや~。なんかそれすごく分かる。これを観てそう思った。
生まれた時(いや前か)から、お前はエンジニアか医師だ。
将来の烙印(いや展望か)をもう親から言い渡される子供達。
まるで○十年前のどこかの国を思わせるような、
高度経済成長期における技術能力の発展を奨励する体制と
貧富の激しさが齎す豊かな生活への家族総員での出資努力。
可哀想だと思う反面、もし自分が親だったらどう言うだろうか
なんて考えてしまった。好きな道が一番だと思いながらも。
映画の舞台は超難関エリート工科大学。
全寮制の大学でたまたま同部屋になった三人のバカ(原題)が
巻き起こす様々な問題・行動・考え方を通して、
私たち観客も大いに青春時代&教育問題に直面させられる。
ほぼ全体的に笑いと感動が散りばめられたドラマ構成だが、
インドでも増加しつつある自殺問題などを絡め、
笑ってばかりもいられない社会問題への意識も促している。
しかし主人公ランチョーの、なんと魅力的なキャラクター。
この人ボリウッドではかなり稼いでいる有名俳優だそうで、
なんと撮影時40歳代!うわ、見えない~。せめて20歳代かと。
さすが40年余も生きていれば、世の中の大体は分かるわなと
その演技力がそのまま人生の達観能力に重なってくるが^^;
とにかく上手いので、笑って…泣いて…と十分に満喫できる。
彼を取り巻くバカ二人(ゴメンね)もピッタリのハマり役、
意地悪な同級生(こういうヤツ絶対いるわね)もハマりすぎ、
鬼学長(これは英国コメディに出てきそうな)のキャラもいい、
ヒロインは…綺麗で歌も上手いけど、顔は好き好きかな^^;
この長丁場をかなりの持久力で乗り切るのは、観客だけでなく
彼らの演技力と、飽きさせない脚本の盛込み技、緩急自在の
リズムテンポに、ちょこっと絡むミステリー要素があったりと
「展開が見えちゃうけどやっぱりこれだよね~」な構成にある。
さすがいつも長編を撮っているだけあって(爆)配分が上手い。
作りは分かり易い昭和の青春群像劇風で、
小学生からお年寄りまで長時間座っていられれば大丈夫な作品。
懐かしいアイテムや道具も出てくるが、
今のインド社会の風潮を描いた作品なので、観てみる価値大。
(きっと、うまくいく。と、スーダラ節。って確かに似てるかもね)