小さいおうちのレビュー・感想・評価
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松たか子VS黒木華 見事なまでの対峙
今作を語るうえでは、松たか子と黒木華の対峙を避けては通れない。
出かけようとする時子(松)とそれを止めようとするタキ(黒木)。
眼光鋭く睨む時子に対し、必死に、そしてとうとうと理由を説明するタキ。そして本来決して美しい所作とはいえない舌打ちをする時子に対し、ホッと安堵の面持ちを浮かべるタキ。
このシーンを撮影現場で見学する僥倖に恵まれたのだが、ピンと張りつめた本番……。
松が長いセリフを言い終えた直後、黒木がNGを出してしまい項垂れてしまう。
そんな黒木に、「大丈夫!」と肩をポン!と叩き、何事もなかったかのように元の位置に戻る松。
このシーンを見るためだけに、お金を払う価値があると感じた。
タキの沈黙が照らす、昭和の影と恋
昭和初期、東京郊外に建つ赤い三角屋根の“小さいおうち”。
その家で起きた秘められた恋を、女中として仕えた布宮タキの視点から描くことで、この映画は“名もなき人の人生”に静かな光を当てていく。
タキは、ごく普通の女中であり、歴史の表舞台に立つような人物ではない。
しかし、彼女だけが“あの家”の空気を吸い、時子と板倉の想いを間近で感じ、戦争という時代の影を肌で受け止めていた。
他者から見れば取るに足らない出来事でも、本人にとっては人生を揺るがすほどの重みを持つ──映画はその“個人史のドラマ”を丁寧に掬い上げる。
歴史は英雄だけが作るものではない。
名もなき人々の沈黙や選択、後悔や希望の積み重ねによって形づくられている。
タキの視点は、社会を縁の下で支えた人々への賛歌であり、どんな人にも確かな物語が宿っていることを静かに教えてくれる。
黒木華の演技は圧巻だった。
美しいのに素朴で、純粋で、控えめな目線やセリフの後の微細な表情が、タキの心を雄弁に語る。
“身体で語る”という言葉がこれほど似合う女優はなかなかいない。
松たか子の存在感を受け止めながら、彼女の演技は作品の中心に静かに根を張っていた。
老いたタキ(倍賞千恵子)の部屋に飾られた“赤い屋根の小さな家”の絵。
これは山田洋次作品特有の“語られない美術”であり、タキが生涯抱え続けた時子や板倉への複雑な感情、そして“あの家”への想いの象徴だと感じた。
「長く生き過ぎた」というタキの最期の言葉は、戦争を生き延びた普通の人々が抱えた罪悪感の影を思わせる。
説明されないからこそ、観客はその余白に自分の記憶や感情を重ねることになる。
ラストで恭平が健治に答える場面は、山田監督の平和への祈りが風景として立ち上がる瞬間だった。
タキの自叙伝をきっかけに明らかになる“語られなかった秘密”は、特別な事件ではなく、誰もが抱えている“人生の物語”そのものを象徴している。
静けさの底に沈む光を拾い上げるように、名もなき人の人生の尊さを描いた作品。
観終えた後、胸の奥にそっと灯り続ける映画だった。
小さいおうちが好きだった
山田洋次監督晩年の最高傑作
ちいさいおうち
大叔母タキが亡くなった。大学生の健史は、生前タキが綴っていた自叙伝を託される。昭和初期、山形から出てきたタキはモダンな小さい家で暮らす平井家に仕える。玩具会社勤務の雅樹と妻時子、幼い息子恭一が暮らす家だった。戦争の機運が高まる中、雅樹の同僚の板倉が訪れ。
タイトルから、幼い頃何度も読んだ絵本「ちいさいおうち」を連想して鑑賞。内容は全く違いますが、その本が劇中に登場したのは嬉しかったです。
物語の中心は、奥様の揺れる感情と、それに気づいてしまった女中の緊張感ただよう物語。ただ、雅樹が時子を疑う描写がもう少しあっても良かったかも。一方、自叙伝を読み込む健史が、たどり着いた結末は良かった。
黒木華の役と笹野高史の役がお見合いするシーン、設定に無理があって笑えます。当時は、そういう事よくあったかもしれません。
タイトルなし
原作と脚本が良いと思う。
原作者ははっきりとこの話はフィクションであると言っている。
胸を張って小説家とはフィクションをもっともらしく書く者とまで豪語している。
その潔さがこの話に共感出来る。
勿論「もっともらしく無い」ので、傑作であるとは言えない。
しかし、こんなもんでしょう。この映画の
「嘘をもっともらしく撮る事だ」と言った小津安二郎風に撮っているのは理解出来る。だが、しかし、淡々として話が進まない。やはり、この演出家は「チマチマした現代劇は撮れない」のだろう。
尚、この言葉は、小津安二郎監督に対する当該監督の若気の至りな言葉である。
ドイツ人には板倉ショウジと布宮タキとの関係は分からないんだろうね。
日本人で勘違いする人はあるまい。従って、ドロドロの人情劇に日本人には見えない。
でも、ドイツ人にとっては、言わば狂言回しでしかない俳優の演技を間違った判断をしてしまっている。
戦争中の庶民
東北から出てきた女中のタキは、奉公先の美しく魅力的な奥様を慕っている。地味めの黒木華(タキ)が、着物にかっぽう着で家事をする姿が、戦前の昭和から飛び出てきたようだ。そして、奥様役の松たか子は華やかで、品があって、艷やかに美しい。
戦争中といっても、いきなり緊急事態になったわけでもなく、少しづつじわじわ悪化していった、と実感した。情報統制されていたこともあるが、庶民はおおむね楽観的で、物がなくてもやりくりして暮らしていた。「火垂るの墓」みたいなのは、ほんとの末期だったんだろうな。
結ばれないとわかっていても、人を好きになる気持ちは止められない。最後にひと目…会ってしまったら、もしかしたら戻れなかったかもしれない。奥様は1日悶々として辛かっただろうが、逆にタキちゃんのおかげで、もっとキツい思いをしなくて済んだとも言える。そして、本来、奥様が背負うべき重荷を、タキちゃんが抱えて生きた、そんな風に見えた。
もっと作品の世界にひたりたくなり、ただいま原作を読んでいる。
BS松竹東急の放送を鑑賞。
昔の若い女性の話。とても好きな映画。 山田洋次監督の時代劇は、その...
松たか子は中流家庭の奥様。夫は玩具メーカーの役員。 夫の会社に勤めている玩具デザイナー(吉岡秀隆)に好感を持ち、 やがて好きになっていく。 女中は奥様の不倫に気付いてしまう。
動画配信で映画「小さいおうち」を見た。
劇場公開日:2014年1月25日
2014年製作/136分/G/日本
配給:松竹
松たか子
黒木華
片岡孝太郎
吉岡秀隆
妻夫木聡
倍賞千恵子
橋爪功
吉行和子
室井滋
中嶋朋子
林家こぶ平
ラサール石井
あき竹城
松金よね子
螢雪次朗
笹野高史
小林稔侍
夏川結衣
木村文乃
山田洋次監督
山形の田舎から夫妻(松たか子、片岡孝太郎)の小さいおうちに女中として勤めている女性(黒木華)の回想録。
日中戦争(1937年7月7日 – 1945年9月9日)から
太平洋戦争(1941年12月7日 – 1945年9月2日)に進んでいく日本の中流家庭を描いている。
松たか子は中流家庭の奥様。夫は玩具メーカーの役員。
夫の会社に勤めている玩具デザイナー(吉岡秀隆)に好感を持ち、
やがて好きになっていく。
女中は奥様の不倫に気付いてしまう。
山田洋次ファミリーの俳優が多数出演。
起伏は少ないがあの時代の日本の様子が淡々と描かれている。
黒木華が、第64回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(女優賞)を受賞。
第38回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞。
黒木華の代表作と言っていいと思う。
笹野高史とお見合いをさせられてわんわん泣く黒木華が可哀想だった。
満足度は5点満点で4点☆☆☆☆です。
「秘密」に閉じ込めた愛情と残酷さ。
絵が面白くない
話は並。
よくある不倫話。
それを止めた女中の話。
ラジオドラマ的な、
「渡さなかった手紙だったんだ」
と、絵で観客はほぼ理解できるシーンも優しく丁寧に妻夫木がセリフで説明するのはホント蛇足だと思う。
全てセリフで話を進めて行くのは如何かと思う。
教科書と現実
本作は、昭和10年代のある家族のお手伝いさんが主人公であり、雇い主の妻と部下との恋愛模様を軸に、忍び寄る戦争に翻弄される、今も昔も変わる事のない人間の心情を活写している。大事件は起きないが、些細な出来事を巧みに積み重ねて、ストーリーに起伏を付け、洗練された台詞で作品全体に緊張感を持たせている。
現代に生きる年老いた主人公の回想という展開なので、我々現代人が教科書で知ったものとは違う、主人公が生きて感じた昭和10年代の豊かさと現代との類似点が際立っている。子供の受験に奔走する母親たち、おもちゃメーカの重役である主人を囲んでグローバル化を考える社長や部下たちの姿は現代と大差ない。
そんな時代も戦争によって蝕まれていく。家族が住む小さな赤い屋根の家が空襲されるシーンが印象的である。この家は無防備、無抵抗な市民の象徴であり、その家が、無残に破壊されることで、敢えて、血生臭さを排除し、戦争の悲惨さを端的に表現している。
何故、態々、現代と過去が交錯する設定にしたのかは、親戚の若者と主人公の口論シーンが端的に物語っている。昭和10年代を教科書でしか知らない若者と、実体験してきた主人公との意見の食い違いは、歴史の社会的認識と個人的感覚の差である。歴史を括り過ぎると断片的になり、それでは時代の雰囲気は解らない。やはり、歴史体験者の生の声を後世に語り継いでいかなければ、歴史は正しく伝承されていかないという本作のメッセージが伝わってくる。
本作は丁寧で緻密なストーリー構成だが、肝心なところは説明不足である。主人公の雇い主が、妻、部下を本当はどう思っているのか等々、何よりも、“長く生き過ぎた”という主人公の重要な台詞の真意は最後まで解らない。
作為的に説明を排除し、映像表現から観客が想像するように仕向けている。観客それぞれが色々な想像をすることを許容している。それが映画の妙であり、名匠・山田洋次監督の狙いであろう。
奥さまの秘密そして反戦・・静かに綴る女中さんの日記
2014年。監督:山田洋次。原作は中島京子の直木賞受賞作です。
昭和11年に田舎から東京に女中奉公に来た布宮タキ(黒木華)
奉公先の「小さい赤い三角屋根のおうち」の9年間は一生涯タキの心に、懐かしさと悔恨を
残すものでした。
お婆さんになったタキ(倍賞千恵子)が親戚の健史(妻夫木聡)に相談しながら綴るノート。
倍賞千恵子と妻夫木聡が実の祖母と孫のようで、心からほのぼのとしました。
でも口当たりはソフトですが、内容は重かったです。
タキが憧れる奥様(松たか子)の秘密と平井家の日常。
何より太平洋戦争に突入する日本の様子が、克明に綴られ「庶民から見た・・・それも田舎から来た女中さんの目に写った戦争」が、とても分かりやすかったです。
日本が満州に侵略して、まるで世界制覇を目論む今の中国みたいです。
真珠湾攻撃をして開戦すると、まるでもう勝ったようなお祭り騒ぎ。
そしてそして戦局は日に日に悪化して行きます。
そんな中、奥様は旦那様の会社の部下の青年(吉岡秀隆)と道ならぬ恋に気を取られています。
松たか子が本当に美しく着物姿が素敵でした。
(私はあのご両親から生まれたにしては不細工だ・・・などと思ってたんですよね、
不美人とか普通とか思ってたなんて、とんでもないです。お母様(藤間紀子)譲りの臈長けた美女ですね。
大豆田とわこ・・を見て、なんと魅力的なのだろうと、思いました。
今では日本を代表する美人女優と思っております・・すみません)
兎も角、奥様は若い青年によろめいてしまわれるのです。
そして戦局の悪化で、病弱な青年の吉岡秀隆までに赤紙が届くのです。
赤紙とは戦争への「召集令状」のこと。
その紙の色が赤かったからそう呼ばれました。
そして若い女中タキちゃんは、奥様に一世一代の嘘を付くのです。
若い女中さんが、奥様一家の幸せを願って付く嘘。
この嘘は後々、タキちゃんを後悔に引きずり込むことになります。
(60年後に思い出しても泣き崩れる程の後悔)
そして奥様一家を起こる不幸な出来事。
この映画は「反戦」とは一言も言いません。
なのに戦争の愚かさと不条理が、観るものにクッキリと伝わってきます。
原作の良さ、そして山田洋次監督の手腕でしょう。
観て良かったと思う作品でした。
黒木華出世作
過去数回鑑賞
2014年公開作品
原作は『長いお別れ』の中島京子
監督は『男はつらいよ』シリーズ『学校』シリーズ『家族はつらいよ』シリーズ『幸福の黄色いハンカチ』『たそがれ清兵衛』の山田洋次
脚本は他に『釣りバカ日誌16』『あの日のオルガン』『いのちの停車場』の平松恵美子
時代背景は現代と戦時中
ドキュメンタリーではないが戦前戦中のリアルが醸し出されている傑作
日本に腐るほどいるステレオタイプなリベラルには絶対に作れない代物
若いころに山形から上京し赤い屋根の小さい家に奉公したタキの思いで話
所謂不倫もの
でもそこは山田洋次監督だから
会わせてあげたい
会わせるわけにはいかない
奉公先の奥様の不倫に葛藤する女中タキの苦悩
タキの話を聴いた正治は「美化だ」「客観的じゃない」と否定的
僕は客観的になどと上から目線の奴ほど客観的視点ができない自己中だと決めている
頭の良さと想像力は関係ない件の話は政治家批判含めて同意
与党だけならまだしも立憲もバカが多く世の中ウクライナだコロナだといっている時に昼間っから国会でAV談義に花を咲かせるオゲレツときてるから参ってしまう
エンドロール前半はタキの平井家初日の模様
タキの奉公先の奥様・平井時子に松たか子
山形・米沢から東京に奉公する若年期の布宮タキに黒木華
晩年期の布宮タキに倍賞千恵子
時子の夫でおもちゃ製造会社の常務・平井雅樹に片岡孝太郎
雅樹が務めるおもちゃ会社の新入社員・板倉正治に吉岡秀隆
軍治の息子で康子の弟・荒井健史に妻夫木聡
タキが初めに女中奉公することになった作家の小中先生に橋爪功
タキに次の奉公先の平井家を紹介する小中夫人に吉行和子
麻布に住む時子の姉・貞子に室井滋
時子の親友・松岡睦子に中嶋朋子
雅樹が勤めるおもちゃ製造会社社長柳にラサール石井
タキの叔母カネにあき竹城
タキと見合いをする山形庄内で教師を務める50過ぎの花輪和夫に笹野高史
花輪の叔母に松金よね子
時子の息子・平井恭一の晩年期に米倉斉加年
酒屋のおやじに螢雪次朗
時子の息子の足をマッサージする治療師に林家正蔵
タキの甥・荒井軍治に小林稔侍
軍治の娘・荒井康子に夏川結衣
健史のカノジョ・ユキに木村文乃
小さな幸福感
高台の洒落た一軒、「小さいおうち」かどうかは当時の市民生活を考えれば、ずいぶん恵まれた環境であることは確か。それは、冒頭のタキが上京するシーンとの対比で示される。それでも、遅ばせながら生活が厳しくなっていくテンポの違いを妻夫木が問いただすのが面白い。結局、明示されたものは召集令状と空襲だけだもんな。少なくとも、タキには幸せな「小さいおうち」だったと思う。
ドラマの起伏は奥様の不倫疑惑。ただ、それをサラッと、でも確信持てそうに示し、タキを悩ませる。「家政婦は見た」的な要素もあり、他人の家を覗く感じもする。そう、見てはいけないものを見てしまった感じ。想像する面白味があり、何もなくても何かを生む脚本の妙。
前半のおうちのシーンなんか、何気ないヒトこまを長めに映した感じは、小津作品へのオマージュなのか、松竹映画の伝統かなあ。
初見2015/7/5
2回目で良さが分かった
2度目の鑑賞
1回目は奥様がご主人の部下と不倫関係になったところに意識が行ってしまい
「どういう過程で不倫になったか、はっきりしない」
「時子にも板倉にも感情移入できない」
「山田監督としては失敗作では?」
という記憶が残った
今回2度目の鑑賞で、この作品の良さが分かった
これは奥様の不倫に気付いてしまった、女中の目線で見る映画だった
最後に会いに行こうとする時子を引き留め手紙を書かせるが
その手紙を板倉に届けることはしなかった
自信が結婚しなかったのはこのことを後悔してるのか
1回目見たままでは☆2.5くらいだったが
2度目の鑑賞で評価があがった
全155件中、1~20件目を表示












