藁の楯 わらのたてのレビュー・感想・評価
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三池崇史が撮った世界映画。
三池崇史が撮った映画ということで、余り期待はしていませんでした。三池崇史というとリメイク映画の大家、という印象しかありませんでした。「悪の教典」も未見でした。
しかし、この映画を観終わった後、私はこの監督の持っている潜在能力の高さを思い知りました。
この映画がカンヌでパルム・ドールを獲ったとしても、私は驚きません。それほど、出来が良い映画です。娯楽作品としては、佐藤純弥の「新幹線大爆破」以来の傑作。黒澤明の「七人の侍」や「用心棒」のように海外で何度もリメイクされるかもしれません。
人が殺される場面でも、無駄には殺されません。今、流行の不条理な死はありません。
出演役者の中では、大沢たかおの上司役の本田博太郎が完璧な役作りを見せていました。
☆が半分減ったのはエンディングの氷室京介の歌が余りに浅薄だったから。「north of eden」って、一体、何なんだよ。いまどき、英語のタイトルが恰好いいと思っているのは、氷室さん、あんただけだよ。この歌がなければ☆五つだったのに・・・。いやぁ、三池さん、惜しいことをしましたね。
異常性のなかの一貫性
多少のネタバレがあります。
まずは良い点。
まず藤原竜也、大沢たかおの演技は安定してます。特に大沢たかおの泣き表情に訴えかける演技は本当に登場人物のバックグランドがあるんじゃないかってくらい迫真です。
松嶋菜々子は硬派な役なのかもしれないけれど、少し面白くない演技をします。あと機動隊の二人が襲撃に来るときに三白眼になっていたのはすごいなぁと思いました。感情が良く出ていました。
そして悪い点。いろいろあります。
まずは構成。最初に派手で、あとから叙情的。日本映画アクションにありがちな構成で急に物語は失速します。叙情的なシーンは好きです。それがなければ中身のない映画になってしまいますから。しかし、配分が悪いと言わざるを得ません。
そして一番納得いかなかったのが、犯人のキャラクター。小児性愛者の異常性を表現したいのでしょうが、どうにもおかしい。精神異常者は異常性の中にも一貫性があります。羊たちの沈黙のレクター博士のあの脅威の異常性の表現は、そうした一貫性のなせる業だと言えます。なのにこの犯人、何かよくわからないだけの人です。ただの極限状態で支離滅裂になっているだけで、異常と言うよりは疲れてるのかな?と思います。登場当初は大人に対する嫌悪感を表現しながら、途中からはどこ吹く風。かと思えば終盤の暴走。何の一貫性もあったものではない。
母親に対する感情もおかしい。小児性愛者は幼少の頃にまともな環境にいないと言われています。母親に対するコンプレックスや女性に対するコンプレックスが小児への執着に繋がるのだと。なのに急に孝行息子に成る始末。しかも真偽も不明。これなら天才殺人鬼、演技もお手の物みたいな設定にして、全ての行動がSPや民衆、はたまた殺人を依頼した人間までを操っているという感じにしたらいいのに。そしてこのゲームをやるために殺人を犯した、なんて設定だったらサイコさが出て、かつ主人公側に最後まで守りきることに目的が生まれるのにと思ってしまいます。
日本映画は物語をコンパクトにまとめるのが本当に下手だと思います。
以上批判的な意見、失礼しました。
期待が大き過ぎたのか?
一つ一つのエピソードが早回し的に過ぎ去って行き、ある意味展開がスピーディーで高いテンションを保ったまま一気にラストまで行けたものの…
そのぶん説明不足な感もあり説得力に欠けるシーンも多く、今一つ盛り上がりきれないままあれよあれよというまに…
ありえないような設定のストーリーなだけに、上映時間を増やすとか、つめ込み過ぎのエピソードを減らすかして、もっと丁寧にえがいてもらわないと、せっかくの俳優さん達の熱演も空回り気味に感じました
この監督の映画は今回で三本目の鑑賞ですが、共通して言えるのは、ひじょうにわかりやすいけど、深みが感じられないところですかね…
星、三つ半です
何も考えずふらりと立ち寄りチケット購入したが、監督を見たら三池さん。(悪の教典のイメージが強すぎて)やっちまったと思いつつ鑑賞。
悪の教典ほどえげつない内容ではないが、何ともスッキリしない後味感は否めない。リアリティに欠ける。(そもそもこんな事態は起こらないが、仮に起こったとしてこういう状況にはならないという、否定的な思いが最初から最後まであったためだろう)
ラストの場面、目的地到着までが省略されて、場面が変わったがその部分をもう少し丁寧に描いてほしかったな。犯人がなぜ人間のクズになったのかもわからないまま。
藤原竜也はハマり役です。
クズを守るな、己を守れ。
三池崇史監督が気合を入れてアクションを撮るとかなり面白い……
そういう意見の人間なので、本作は楽しみにしてました。
なので最初に書いてしまうが、
“期待していたほど派手なアクションは無かった”というのが正直な所。
最も大掛かりだった高速道路上の爆破シーンも、
CGや寄りの画で誤魔化してるように見えたので、ちょっとね。
それに、セリフがややステレオタイプなのも気になった点(死に際の遺言等)。
だがサスペンスドラマとしての強度は見事なもの。
犯人・清丸のクズっぷりが増してゆき、
主人公らの葛藤が増してゆくに連れてぐんぐん面白くなる。
あらすじを聞いた時は『10億円を懸けたってそうそう人は殺さないし、
第一警察が止めるでしょ』と思っていたが、この辺りもなかなか。
・有罪判決を前提にした取引である。
・蜷川本人が雲隠れしていて事実確認の手順すら踏めない。
この2点は巧い。
おまけに襲いかかる人間は自分の家族の為に清丸を殺そうとする者ばかりで、
自分の為に10億儲けたいという人間は殆どいない事も後に分かる。
他人の為に動く人間は後先を考えない。だから怖い。
(設定の似ていた『S.W.A.T』などより遥かに説得力がある)
ラスト。主人公・銘苅が清丸を殺さなかった理由。
初めは自分の為。
自分に嘘をつかなければ生きられなかったから。
その後は死んだ仲間の為。
清丸が死ねば、仲間が何の為に死んだのか分からなくなるから。
それでも彼の決断が正しかったのかどうか、僕には未だに分からない。
「死んだ人間は喋らない。喋れないんだよ。」
枯れ草のように痩せ衰えた老人の抱えた、
生半可な綺麗事など吹き飛ばすほどの、深い深い恨みと哀しみ。
そこに共感する。
自分の欲望を吐き出す事しか脳になく、子を想う母の死さえ利用する、感情が狂ったクズ。
そんなのは死んで当然だと心から思う。
けれど。
あの男は自分が殺される時でも相手の激怒を喜んでへらへら笑うだけだろう。
ならばそんな奴に心を振り回される事自体が不愉快だ。
それにあの男を感情に任せて殺してしまえば、
自分が少しだけあの男に近付いてしまう気がする。
「俺はてめえとは違うんだよクズが」と、
相手を侮蔑し罵る権利を少しばかり失ってしまう気がする。
それはどうも、癪に障る。
主人公が清丸を殺さなかったのは、そんな思いもあったのではと、勝手に考えている。
〈2013/4/26鑑賞〉
人間の欲望は果てしない
試写会にて・・
実は、昨年ラッシュ前の編集中の試写会を観て、
どうしても完成版が観たくなり、当選したので観に行きました。
ん~、やっぱり完成版は見応えありですが、
やはり、カットされた部分があり、ちょっと残念。
人間の欲ってヤツは、果てしなく醜いもので、
だから「自制心」というものが、人間には備わっている。
この作品は、「欲」を描いたものだと思う。
大沢たかお、藤原竜也、松嶋菜々子と、演技力に問題なし。
なかでも、永山絢斗は、なかなかよかったと思います。
ひたすらSPという職を全うしようと葛藤する銘苅(大沢)
最後まで、とことん「人間のクズ」な清丸(藤原)
(でも、母親の話をするシーンの清丸の事は信じたい)
隙がありすぎる白岩(松嶋)は、これがなきゃ、凄腕SPなのに・・
また、松嶋の子供役の男の子。
松嶋の合成か?と思うくらいクリソツです。
あと主題歌が、氷室さんの作品です。
氷室さんも、楽曲もよいのです。・・が!
この作品には、正直合っていないと思います。
なんとなく、安っぽい感じで締めくくっちゃってる感が否めないのです。
曲だけでよかったのでは・・と個人的感想。
(氷室さんファンの方、すみませんっ)
人間とは、欲とは、正義とはと、考えさせられる作品です。
緊迫感・迫力のあるCGやドラマを、
是非劇場の大画面で観てください。
骨太で見ごたえたっぷり
骨太のサスペンスアクション映画で、すごく面白かった。登場人物がとても人間味あふれる描かれ方をしていた。松嶋菜々子なんていい女感がまるでなく、本当におばさん臭さを強調して描かれていて、人間臭さがあふれていた。大沢たかおは昔は蛇のような目のイケメンだと思っていたのだが、ちょっとふっくらして人生の苦渋があふれるような存在感となっていた。
すごくよかっただけに残念な部分を指摘したくなって、日本人で安易に発狂する人はそんなにいないような気がするし、短時間で準備もできないと思う。警察の規範意識ももっと高いように思った。新幹線で現場検証するなら先頭車両を外して、それに乗って東京に直行すればいいように思ったし、大沢たかおが時間厳守にこだわるのもちょっと違うような気がした。クライマックスの警視庁の前に群衆が詰めかけるのもないかなとか、あそこで藤原竜也寝すぎ、山崎努が斬りつけるのも無理があるかなと思った。藤原竜也が気持ち悪い変態の役で、悪者っぽくなろうと頑張っていたのだが、オレはハロヲタ時代に本物のキモヲタのロリコンを見ているので、やっぱり物足りない感じはした。
山崎努が車から降りて歩み寄る場面の向かい風がすごかった。神戸駅で女の子を人質に取るおじさんの荒みっぷりがすごかった。岸谷五朗にはもっと暴れて欲しかった。
迫真の演技と巧みなストーリーで魅せる極上サスペンス
この映画は決して楽しめる内容ではない。しかし、観る者を惹きつける魅力にあふれる作品です。
登場人物それぞれが背負っているもの、感情、信念、復讐、憎悪、正義、欲望、葛藤などの心理がありありと描かれ、共感させられます。それを迫真の演技で見せる俳優たちがより一層リアルなものにしています。
ひとつ残念なのが2時間程度の映画という媒体に収めるには内容が濃すぎるためか、やや省略気味のシーンもあったこと。できれば3時間、もしくは前後編に分けてじっくり作りこんでいれば更によい作品になったと思います。
それでもアクションばかりでストーリー性に欠ける映画とは一線を画す極上のサスペンスと言えるでしょう。
しかし犯人・清丸国秀が起こした残忍な事件と同様の事件が現実にも起きている事を思うと胸が痛むと同時に「自分が被害者の家族だったらどうするか?」と考えさせられました。
重いテーマですが心に残る映画、一見の価値ありです。
かなり、見応えのある力作
話自体は、全くハッピーエンドにはならないし、希望もあまりない感じだけど、それぞれの役者の迫真の演技がとにかくとにかくすごいです。心が宿ってる感じ。特に、大沢たかおさんのspとしての全うぶりと清丸役の藤原竜也のうまさが光ります。
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