「容赦ない人間の闇の描写(;・∀・)」藁の楯 わらのたて 初台験さんの映画レビュー(感想・評価)
容赦ない人間の闇の描写(;・∀・)
キャストは豪華だし、ワーナーブラザーズが配給してるってことで、かなりのメジャーなビッグバジェット映画ではあるが・・・
今回も三池監督独特の容赦ない映画(゚∀゚)アヒャ
山崎努扮する経済界の重鎮蜷川隆興が、自分の孫娘を殺した藤原竜也扮する幼女連続殺人犯の清丸国秀を殺して欲しいと10億円を提示するところから始まるけど、もうとにかく容赦ない殺伐とした設定と描写(´゚∀゚`;)
清丸は福岡に潜伏してるところ、匿ってもらってる仲間に殺されかかって自主。
身柄を東京まで護送することが決まって、それに敏腕SP2人と警視庁の刑事、そして福岡県警の刑事1人の計5人が護衛のため付き添う道すがら、ま~~~~清丸を狙う連中がどんどんやってくる(;・∀・)
警察に自首してからも、殺したら10億円支払うという蜷川のサイトが公開されてから看護師にも警官にも命を狙われる清丸の緊張感
心底性根の腐った人間の屑を護衛しなければならないというSPの銘苅と白石、警察のジレンマ
そしていつ、どこで、誰が、何人、どんな形で清丸を襲ってくるか分からないから気の休まる暇のない護送チームの切迫感
さらに護送してる刑事が実は情報を漏らしてるんじゃないかという状況で、清丸だけじゃなく身内同士で疑うという『レザボア・ドッグス』みたいな雰囲気。
この4つが合わさって、実に手に汗握る重厚なサスペンスになってると思う。
『北北西に進路を取れ』とか『アルゴ』を彷彿とさせますな( ・∀・)イイ!
清丸サイトにアップされた居場所を知らせるGPS映像と、殺そうとして未遂に終わって逮捕された連中も高額報酬で蜷川グループに採用するという、次から次へと清丸への包囲網を容赦なく狭めていく状況も緊張感を倍増させる。
そして何よりテンポがまた(・∀・)イイ!!
高速道路で護送中にニトロを積んだ大型トラックがパトカーの列をなぎ倒して向かってくるシーン、そしてその運転手をパトカーのルーフに乗っかって永山絢斗扮する神箸が撃つシーンは『西部警察』を連想するような大掛かりなカーアクションと爆破で、個人的にはこれだけで軽く2億点超えイイネ♪d('∀'o)
新幹線に乗り換えてからチンピラ3人が襲ってくるシーンも刑事ドラマの王道と言える銃撃戦で、何より神箸の殉職シーンも『太陽にほえろ』のマカロニの殉職シーンをちょっと連想させて良かった(*´・д・)*´。_。)ゥミュ
新神戸の駅で子供を人質に取って清丸を出せというシーンも、子供の泣き声と犯人の切迫感でとにかく緊張感を盛り立てるし、伊武雅刀扮する福岡県警の刑事が犯人を射殺するのもとにかく容赦ない。
そして岸谷五朗扮する奥村刑事が実は情報を漏らしてた張本人なわけだけど、その方法も手首にマイクロチップを埋め込むという実に体を張った方法(;^ω^)
アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』よろしく、次々に護送団のメンバーが抜けていく。
途中清丸がSPの隙をついて、静岡の浜松あたりか?女の子が寝てるところをいたずらしようとするが見つかって未遂に終わるシーンがあるけど、その見せ方も実にえげつないと言うか(゚∀゚ ;)タラー
この映画子役の使い方が絶妙と言うか、容赦ない上にえげつない(;´∀`)
そして清丸は「僕はどうせ誰かに殺される。だから僕を殺して10億円貰ったら、そこから何割か母ちゃんに上げてください。僕が死んだら母ちゃんは1人になってしまう。僕は親孝行らしいことは何もしてあげられなかった。お金があれば老後も安心できる。」としおらしいことを言うけど・・・
隙をついて白岩の拳銃を奪って白岩を射殺∑(゚ω゚ノ)ノ
理由が「だってこの人おばさん臭いんだもの」
(|| ゚Д゚)
白岩刑事も神箸刑事同様「私がいないとあの子が・・・」と残された家族を心配する言葉でこと切れる。
銘苅は怒り心頭で、拳銃を突きつけて清丸を殺そうとするものの、思い留まって警視庁まで護送する。
ところがそこに諸悪の根源の蜷川がやってきて、説得してるところ座頭市の仕込み杖みたいな刀で清丸を殺そうとするがそれを抑える
・・・が、清丸はそれを拾って逆に蜷川を殺そうとするも、盾に入った銘苅が刺されてエェエェエェエェエェエェエェエェエ(゚Д゚ノ)ノエェエェエェエェエェエライコッチャ
清丸は死刑が決まって、最後の言葉が「後悔、反省してます。もっとやっとけば良かったなって。」
とにかく見下げ果てた下衆野郎(#・∀・)
なんだけど・・・
途中見せた家族を心配する言葉、そして母親が自殺したというニュースを聞いて泣きまくることから、人間の心はあったのかとも思えるが、それも実は演技だったのか、それは分からない。
ラストの捨て台詞も果たして本心から言ったことなのか、単なる負け惜しみなのか、それとも他に何か意図があったのか、それも分からない。
『汚れた顔の天使』みたいな、実際のところはどうなのかは観客に任せるという終わり方だし、エンドロール直前に白石刑事の息子が銘苅なのか別人なのか、誰かと仲良く歩いていくシーンがあって、後姿だけしか映ってないから判断がつかないけどとりあえず面倒は見てもらえてはいるという救いの描写ではあるけど、銘刈は清丸に刺されて生還出来たかどうかも示されないまま。
銘苅は飲酒運転の車に轢かれて奥さんを亡くしてて、帰宅して和菓子を仏前に供えた時に「和菓子を出すならお茶もでしょ」みたいな台詞がはっきり聞こえてくる。
最初「何でこんなベタと言うか、余計なことするんだ?」と思ったけど、その後奥さんが死ぬ直前には仕事に行けと言われたと神箸に話してて、それも最初は大した意味があるのかどうか分からなかったが、クライマックスで白石を殺した清丸に銃を突きつけて「全部俺が自分の中で作った物語だ!!!それがないとやってけねえんだよ!!!!」と本心を吐露する重要な伏線になってるんですなΣd(゚∀゚d)イカス!
何事も物は考えようだし、自分なりの物語は生きる上でも重要なんだな~~~と改めて思った。
「そんなことをしてお孫さんが喜ぶと思ってるんですか!?」
「死んだらそれで終わりだ。死人はしゃべることが出来ない。」
この銘苅と蜷川のやり取りが、この映画全体を象徴してると思う。
挙げたらきりがない程色んな刑事ドラマ、2時間ドラマで聞く台詞だけど、死人に口なしだから殺された被害者の意志なんて誰にも分からない。
生きてる人間の行動原理や行動基準なんて、自分なりの理由づけ、つまり物語に則って決まるもんなんですな(・∀・)ウン!!
そして登場人物はみんな家族のために行動してる。
銘苅は死んだ奥さんのため
白石は女手1人で育ててる息子のため
神箸は母親のため
清丸を殺させるため動いてる警察上層部も
清丸を殺そうとした人たちも
清丸本人も母親を心配してるし、蜷川も殺された孫娘のため10億の懸賞金をかけて清丸を殺させようとしてる。
人間は金のためなら悪魔になれるけど、なぜ金が欲しいのか?
勿論私腹を肥やすために金を取る奴はいるけど、世の中の大半の人は家族を守るために金が必要なんだo(`・д・´)o ウン!!
つまり「家族を守る」ことが世の中の大半の人にとっての「物語」なわけですな。
子連れの猛獣が危険なのは家族を守ろうとするからで、人間も例外じゃなく、逆に言えば「いざとなれば人間は家族のためなら悪魔にもなれる」という非常に恐い面もあるガクガク((( ;゚Д゚)))ブルブル
特に今みたいな先行き不透明な時代なら尚更のこと(;´Д`)
この辺り家族愛を描いていながらも、人間のダークサイドを容赦なく浮き彫りにする三池監督流のシニカルな視点がいかんなく発揮されてて(゚д゚)イーヨイイヨー
物語と言えば聞こえはいいけど、独りよがりの妄想、幻想の可能性だってあるわけだし、そんなの他人からすればどうでもいい話。
むしろ傍迷惑なことだってある。
つくづく人間の空しさ、厄介さ、複雑さを思い知りましたε-(‐ω‐;)
何重にも重なった多重な構造を持つ名作です(*^ー゚)b グッジョブ!!
ただ余貴美子扮するあのおかしな感じのタクシー運転手は・・・狂言回し的な雰囲気で悪くなかったんだけど出番少な過ぎじゃねえの???
途中から全然出なくなっちまったし(;・∀・)
あといくら何でも護送する警察連中どじ過ぎと言うか(ノ∀`)アチャー
2回もつけ入る隙を清丸に与えるのはちょっとどうかと(*゚Д゚)
つうかヘリとか船で護送ってできないのかね?
まあそれを言うとこの映画自体成立しないから無理だけど(^_^;)
とにかく超一級で重厚なサスペンスに仕上がってて楽しめた(≧∇≦)b