劇場公開日 2012年12月21日

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「感情の容量をオーバーするほど情熱的」レ・ミゼラブル(2012) 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5感情の容量をオーバーするほど情熱的

2012年12月27日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

舞台も原作も鑑賞した事はないのだが、G・ドパルデュー主演版の『レ・ミゼラブル』を
観た事があったので、大まかな話の流れは知っていた。
昔の記憶なので断言はできないが、キャストも演出も今回の方がフレッシュで豪華な印象かな。

見応えがあり、役者陣の歌声も素晴らしい良作だったが……
毎度口うるさくて申し訳無い。ここから不満点をいくつか。

パンひとつを盗んだ罪で19年間も投獄され、
仮釈放後も前科者として冷たい仕打ちを受けるジャン・バルジャン。
この部分を——彼が世界に憎悪を抱いていた頃を、もっと深く描いて欲しかった。
彼が神父の慈悲にどれほど心を打たれたか、そして
彼にとってコゼットがどれほど暖かな“太陽”だったか、十分には伝わらなかった気がする。
他のキャラも、2時間37分という長尺の割に
あまり深い背景や心理描写が描かれないのが残念か。

それと、歌で心情を語る事で確かにストレートに感情が伝わるのだが、
全編に渡ってあまりにストレートかつ情熱的に感情が流れ込んでくるので、
僕の場合は感情の容量オーバーでちょっとばかし疲れてしまったというのが本当の所。
いや、ミュージカルに慣れていない人間の意見なので、聞き流して頂きたい。

それに、こちらの胸を熱くさせる映画である事も確かだ。
身も心もぼろぼろになったフォンテーヌの歌には心を鷲掴みにされた。
涙と嗚咽を堪えながらの、絞り出すような歌声。最後に見せる、感情を無くした真っ暗な瞳。
アン・ハサウェイ、凄い。正に全身全霊の演技でした。
それまで一歩引いた感じで鑑賞していた僕も、あそこで一気に物語に引き込まれた。
サマンサ・バークス演じるポリニーヌも、その健気さが泣ける。
コゼットより彼女に肩入れしたくなったのは、どうも僕だけじゃないようで……。

この映画の殆どの人物が、誰かを愛する事に生きる意味を見出だしている。
バルジャン、フォンテーヌ、ポリニーヌの嘆きの歌は常に自身の失われた幸福を歌う。
だが彼らは最後、自身よりも愛する者の幸福を望み、高らかに歌いながら微笑む。

愛する人の幸福こそが私にとっての無上の幸福、人生の価値。

それがきっと、この物語が伝えたい事なのかもね。
法を愛する事にしか生きられなかったジャベールの末期はやや極端だが、やはり憐れだ。

以上!
他の皆さんより点が低めで少々申し訳無いが、
見応え十分の良い映画でした。

<2012/12/22鑑賞>

浮遊きびなご