魔の黄金
劇場公開日:1950年2月19日
解説
「野良犬(1949)」の本木莊二郎と「暁の脱走」の田中友幸の共同企画、関川周の原作を谷口千吉、松浦健郎と共同脚色し、「暁の脱走」についで谷口千吉が演出する大映での第一回作品である。「破れ太鼓」の森雅之「無頼漢長兵衞」の相馬千恵子「破れ太鼓」の宇野重吉「私刑」の東野英治郎「母椿」の星美千子、伊沢一郎が出演する。
1950年製作/112分/日本
配給:大映
劇場公開日:1950年2月19日
ストーリー
野犬の毛皮、背負い袋にくくりつけた二連銃、鞣皮で頬被りした髭と雪焼けの底に十三年振りで下界に接した感動の眼が光ってる。岩木源次は莫大な砂金を持って、初恋の人椎名月江との再会を夢み、又砂金の半分を渡さねばならぬ今は亡き同僚の息子阿久津一郎に会いたいという希望を抱いて天塩の山中から思い出のN市に現れた。月江は街の“リオン”という酒場のマダムとして侘びしい暮らしをしていた。そして偶然にも一郎は“リオン”の常連であり、父親の山師稼業を嫌って今は船乗りとして働いていた。さて源次は街のホテルに泊まり込んだが、今様浦島を迎えて街の連中は目の色を変えた。ホテルのロビーは面会客で連日ごった返した。新聞記者、地金客、鉱山会社の手先、遠い親戚と名乗る男、十三年前の下宿屋の女中さん等々、すべての人は砂金の袋の廻りにひしめき合って空転している、金の魔力に憑かれた人達だ。源次の待っている人達ではない。そして彼が待ち受けている唯一の人月江が源次を尋ねて現れた。しかし月江も金の欲しい人間の一人であった。病床の夫を愛する余り、生活を建て直す金が欲しかった。そして月江は十三年振りに再会した源次が昔と変わらぬ愛情を持っている事を知った。夫は既に亡く不幸だという月江の言葉を聞いて源次は魂をゆすぶられた。俺はこの女を幸福にしてやりたい。一郎に金を半分渡すという約束さえも反故にしても……。ところが一郎も恋人時子から妊娠したと打ち明けられ、金の悩みがつきまとうのだ。そして源次が自分を探しているという事を知ってびっくりする。源次はひたすらに月江の幸福を願うばかり、ある日、月江の不在中“リオン”を尋ねて、病身の兄と月江から聞かされていた男と酒に酔って一夜を明かす裏、その男こそ月江の夫であるという事を知り、源次の純情をふみくだいてしまった。絶望の果てホテルに戻った源次の許へ一郎が尋ねて来た。一切の物に裏切られた源次は金を寄越せという一郎の頼みを拒絶した。憎悪の魂となった一郎は火の玉のように源次にぶつかっていった。その夜源次は一郎の手元に砂金層の地図を残してこの街を去った。早春のオイナカムイの渓谷ではギャングに襲われた源次が、ピストルの一弾を身に受けて今に息絶えんとしていた。砂金袋は滝壷を流れて行く……。