二十一の指紋
劇場公開日:1948年7月12日
解説
「七つの顔」「宵祭八百八町」の米田治が企画し「七つの顔」「十三の眼」「三本指の男」「木曽の天狗」に次いで比佐芳武の脚本をコンビの松田定治が監督するスリラー物。主演者には「七つの顔」「十三の眼」「三本指の男」以来なじみの片岡千恵蔵が「おしどり笠」「かくて忍術映画は終わりぬ」に次いでの主演、「運命の暦」「山猫令嬢」の三條美紀「かくて忍術映画は終わりぬ」の日高澄子、「逃亡者(1947)」の大友柳太朗等が助演する。
1948年製作/65分/日本
配給:大映
劇場公開日:1948年7月12日
ストーリー
波止場で泣きぬれていた里見珠江という女を、ある屋敷に送りとどけた運転手の藤村大造は、ある不審を抱きその家を探索すると五十位の男の惨死体を発見する。見なれぬ形の短剣のさやと、様々の所に印された不気味な二十一の指紋!彼は早速警察に電話をかけた。その翌日、笠原警部を訪れた皆川弁護士は何か落ち着かぬげだった。藤村は多羅尾探ていと変名し彼を追い、いい渋る口から次の秘密を知った。彼が里見珠江を探していることを。多羅尾伴内は心中深く期する所あって、水野刑事と現場に急行し、モルヒネの注射液を発見した。伴内はよぼよぼの浮浪者に変装し、「日かげの街」というやみ市をさすらい浮浪児と知り合う。そして、ある日突然倒れ苦もんの態でモヒを求める。同情した三吉がナナ舞踊団の時田ナナに老人を救って呉れと頼んだ。ナナは困ったが、一度限りといってモヒを打ってくれる。この間に伴内は、彼女の一座が飯島邸に出入することを知った。飯島家の門前で彼は里見珠江生き写しの娘を見かけたのだ。藤村は土屋男爵と名乗り高原の紹介でゆう然と彼の屋敷に乗り込む。その娘は?重松きみ子と名乗り南方探検家重松子爵の孫だった。彼女は遺産の一部を相続したので名刀、タキン・ミヤについては知らなかった。計略できみ子を自動車に乗せ、飯島の追跡を受けながらも、強引に「里見珠江はあなただろう」と責めたが結果は意外にも別人だった。疲れた藤村の頭にふとナナ舞踊団の里見まゆみの名が浮かび取り調べると彼女こそ何時か見た里見珠江だった。彼女はモヒ患者で隠れていたのだが、老人殺害犯人だと自ら認める始末だった。だが犯人は外にあるとにらんだ藤村は腹話術師に変装し、ナナ達と飯島邸のパーティーに出演する。そして、余興として、人形の顔を飯島、きみ子、緒方、桜井、高原に押してもらい大人気の内に退場する。家に帰って、直ちに指紋をしゅう集し、警察に連絡を取った。彼は皆川弁護士を訪れると、何と偽電話で誘われ、街頭で冷たくなった彼を発見した。また一度釈放された珠江までが行方不明となる。飯島達の必死の反抗。刑事達と邸に乗り込み、大乱闘、自動車で追いつ追われつ郊外の月明荘で、遂に藤村は飯島一味を捕らえる。二十一の指紋は彼等六人とぴったり合致した。老人、皆川氏殺害、麻薬密輸団は彼等だった。そして、きみ子は珠江と異母妹で、珠江の財産横領を企て、その秘密のかぎを殺された皆川氏が一人握っていたため、問題がこじれたことも判明した。