愛よ星と共に
劇場公開日:1947年9月24日
解説
脚本は、しばらく沈黙を続けていた「煉瓦女工」の八田尚之のオリジナルもので、新東宝で初めてメガホンを握る阿部豊の演出、キャメラは阿部豊とのコンビ小原譲治が当っている。出演者は久し振りに池部良と高峰秀子が顔を合せ、その他藤田進、逢初夢子、江川宇禮雄、横山運平らの出演に加えて大映の浦辺粂子も特別出演する。
1947年製作/95分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1947年9月24日
ストーリー
北島邦彦が北海道の北島牧場を訪れたのは全く久し振りだ。何でも邦彦が一高へ入学した当時来て以来というからもう十年近い年月がはさまっている。牧夫頭の厚作も今では美事な白ひげを蓄えているし、その娘はるえももはや乙女の名にふさわしく成長していた。「いや全く驚いた、とても美しくなった」と若旦那(邦彦)に言われてなんとなく胸の膨らむはるえだった。自分の姿を小川の水に映しては何時までも見つめているはるえ、それ程彼女はムクな乙女なのだ。邦彦とはるえは一夜、牧場の小川の辺りに遊んだ。はるえは邦彦の語る美しい星の話を興味深く熱心に聞いていた。しかしその話はあまりにも美しくあまりにも巧みな運命の夢だった。邦彦が東京へ帰ってから数月、はるえの腹には美しい星の子供が宿っていた。使われる身と使う身、その人権差を無条件に肯定する封建的な父厚作の下ではるえは苦しんだ。厚作は主人の家名に傷つけては一大事だと、今更はるえを叱ったり、口説いたり、ついには家を追い出してしまった。はるえは仕方なく東京の邦彦を訪ねるが、時すでに遅く、彼がフランスへ旅立った後だった。東京に頼る辺ひとつないはるえは結局女給になるが、身重であるがためにその道は一層険しく、灰色の人生は果て知れず続いた。やがて邦彦の子を産んだが間もなくそれも死の神に奪い取られ、はるえの最後の夢も今や大きな音をたてて崩れて行った。はるえは幾度ピストルをノドに当てては思い止った事か。そうしたある日、菊岡の脅迫に会いついに菊岡を殺してしまった。証人のいないこの事件ははるえを不利に導き、法廷ははるえをいん奔女と認め、判決の日を待つのみとなった。「たとえ自分は絞首台に立とうとも邦彦の名は汚すまい」とはるえは念じた。しかしはるえの悲願をそのまま頷く神様ではない。邦彦がフランスから帰えりはるえ判決の法廷へかけつけた。彼ははるえの過去を残らず証言し「裁かれるべきは自分である」と結び改めてはるえの再審査を求めた。やがて彼女の正当防衛は認められ、二人は晴れて結ばれる。