お光の縁談

劇場公開日:

解説

演出家に転向した池田忠雄の第一回作品。

1946年製作/88分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1946年10月15日

ストーリー

外食券食堂の主人三平には三人の娘がいる。長女と三女は嫁ぎ、次女のお光が主婦の役目を果たしていた。お光は勝気な女で店の一切を切りまわし、幼い時から三平に育てられた板前友吉と協力して、親切で美味しい店の評判をとり外食者の人々から愛されていた。友吉は口にこそ出さないが、秘かにお光に恋心を抱いていた。この明るい生活に一つの波紋が起きた。嫁いだ藤枝が亭主と共に転がり込んで来たのである。藤枝とその良人は終戦後、郷里で百姓になる決心をして帰ったが、百姓生活に落第して戻って来たのだ。三平はこの意気地なさが気に食わずいい顔をしなかったが、お光は妹夫婦の更生のために、父に内緒で金を工面してやった。お光の情けに感謝した妹夫婦が、今度こそ立ち直ると誓い、新たな決意を固めて国へ帰って行った。一つの波紋がおさまってホッとした時、長女の咲子が亭主と外地から引揚げて来た。そして新しく商売をしたいからお金を何とかしてくれと頼まれてお光は途方にくれていた。その頃お光に縁談が持ち上がった。それは三平の幼な友達の源七の口利きで荒物屋山万からの縁談だった。お光はこの縁談には気乗りしなかった。というのは友吉の心を知っていたからである。いつも面と向かえば口喧嘩以外にしたことのないお光も、いつか友吉に心を惹かれていたのだ。が、姉妹思いのお光は自分の恋を捨てても、と、この結婚を条件付きで承諾した。結婚すれば、まとまった金を融通してくれるようにと。このお光の心を知った友吉は悲しかった。「お金のために結婚するのはよくない、そんな結婚をしては幸福にはなれない。あなたの仕合わせにこのお金を役立てて欲しい。私の心ばかりのお祝いのしるしだ」そう言って今夜限り暇をくれと言った。さしうつむいてじっと考えているお光を残して友吉は悄然と荷造りをはじめるのだった。お光は友吉の心を本当に有難いと思った。無言で友吉の手を握った。二人はもう多くを言わなくてもよかった。お光は友吉の心を、友吉はお光の心を知りすぎるほど知っていたのである。

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