女侠一代
劇場公開日:1958年10月21日
解説
火野葦平の原作を、「夜の波紋」の菊島隆三が脚色、同じく「夜の波紋」の内川清一郎が監督した、筑豊炭田が舞台の女性アクション篇。撮影は「昨日は昨日今日は今日」の太田喜晴。「サザエさんの婚約旅行」の清川虹子が主役を演じるほか、森繁久彌・山田五十鈴・三國連太郎・淡路恵子らがこれを祝って出演する。
1958年製作/106分/日本
原題または英題:The Undefeated Woman
配給:松竹
劇場公開日:1958年10月21日
ストーリー
--明治の中期。九州筑豊炭田で掘った石炭はすべて遠賀川の川舟で運ばれていた。岡蒸気が出現し、これに取って代わろうとしたが、川舟船頭たちは鉄道敷設に命がけで抵抗した。唐戸橋の架設が争いの焦点である。名のある親分たちの失敗ののち、小組ながら男勝りの女傑島村ギンの皆木組に仕事が廻ってきた。ギンは妻子ある地主皆木与一郎と家出し、若松で皆木組を創設した、度胸と気っぷで知られた女である。汽車課長の川上は根本的に川船頭との間を解決するため船頭の元締鐘馗の寅松との掛け合いを頼み、成功すれば永久に鉄道院出入を許すと約した。ギンはダイナマイトを抱えて決死の覚悟で乗りこみ、ついに説得に成功する。帰途、川船頭市造に命を狙われたが、若い船頭吉田に救われた。交渉はなったが、工事場にコレラが発生し、工事は堂島組に譲った。市造らは鉄道線爆破を企てたが、ギンはまたも吉田に助けられて鉄道を護った。彼女は彼に心を奪われたが、彼は大阪へ旅立ってしまった。筑豊鉄道は開通し、ギンは鉄道院から表彰された。--鉄道院の仕事を民間にやらせぬことになり、ギンの生活は苦しくなった。夫と娘お幸を子分紋二にまかせて、彼女は渡満を決意した。ギンの消息不明のまま、四年たつ。紋二はお幸と結ばれ表具店を営み、市造は国本組を興し、吉田は若松へ戻って、九州一円の大親分になっていた。ギンは落ちぶれて帰国してきた。高口幸次という若い男をつれていた。八幡で、国本組の配下を傷つけ追われたのをかくまったのだ。ギンは幸次に一生を賭けるつもりで、夫と別れて、堂島の親分の世話で石炭荷役の請負業を始めた。幸次は博奕と情婦のお咲にうつつを抜かした。堂島は幸次と別れる方がギンのためにも、新事業の蔭の力になってくれた吉田のためにもいいと忠告した。が、ギンはきかなかった。若き日の吉田の俤を幸次の上に求めていたのだ。ギンは国本組に襲われ傷ついた。幸次が単身仕返しに行った。ギンは血刀をさげた幸次をいたわりながら警察へ連れて行く。十二年たち、幸次は出獄した。ギンはもうこの世にいなかった。吉田が出迎え、若松港の見える高原へ彼をともなった。幸次はギンの遺言通りそこに骨粉をまいた。涙にかすむ目に、遠くギンが命がけで敷いた筑豊線の、列車の吐く白い煙が見えた。