不如帰
劇場公開日:1958年5月24日
解説
徳富蘆花の同名小説の映画化。村山俊郎と小山一夫が共同で脚色し、新人土居通芳が監督した。撮影は「天皇・皇后と日清戦争」の山中晋。「天皇・皇后と日清戦争」の高倉みゆきと「天下の副将軍 水戸漫遊記」の和田桂之助が主演するほか、村瀬幸子、林寛、丹波哲郎などが出演する。色彩はイーストマンカラー。
1958年製作/80分/日本
劇場公開日:1958年5月24日
ストーリー
片岡中将の娘浪子は、卒業と同時に、許婚者の川島子爵の嫡男、海軍少尉武男と華燭の典をあげることになっていた。しかし、二人の幸福そうな姿を嫉妬の眼でみつめる者がいた。武男の従兄弟で、以前から浪子に横恋慕していた千千岩陸軍中尉である。これに一枚加わったのが、軍の御用商人を務める山木だった。山木の娘豊子は浪子と友人の間柄にありながら、武男に恋の炎を燃やしつづけていた。結婚数日にして、武男は軍務のため遠洋航海に赴いた。留守をまもる浪子は、姑の慶子に献身的に尽すが、事毎に反撥された。そして、慶子は手伝いに来ていた豊子を実の嫁のように扱った。豊子もそれをいいことにして、傍若無人に振舞った。その頃、千々岩は山木と密談を交していた。二人が考え出した策とは、千々岩が公金三十万を使いこみしているのを利用し、武男の実印を盗み出し、武男を債務者千々岩の連帯保証人に仕立てるということだった。事件は急速に展開した。浪子は仰天し、武男が勤務する横須賀へ出かけるが、路上で倒れた。せきこむ口からは、鮮血が純白のハンカチを彩って行く。たまたま休暇で家路へ急ぐ武男と会い、介抱されるが、それ以来浪子は病床の妻となった。千々岩は実印の件が武男に邪魔されると、今度は浪子の肺病が伝染病で不治の病であることを必要以上慶子に説いた。帰艦命令を受けた武男は任務に赴いたが、その留守中、慶子は無断で片岡家に離縁状をつきつけた。浪子は焦慮のあげく、投身自殺を図ったが、尼僧に危機を救われた。が、病状は悪化し、遂にこの世を去った。数日後、任務を終えて帰ってきた武男は、呆然と墓前に立ちつづけていた。