荒海の王者
劇場公開日:1957年9月1日
解説
傑作倶楽部所載の牧源太郎の原案を「リングの王者 栄光の世界」の内田弘三が脚本化した。監督は最近独立プロで記録映画を手がけている田口哲が、昨年の「鉄血の魂」以来久方ぶりに担当、撮影は吉田重業。主演は「鋼鉄の巨人」の宇津井健、「坊ちゃんの特ダネ記者」の久保菜穂子、「風雲天満動乱」の筑紫あけみ。ほかに御木本伸介、明日香実、小高まさる、小倉繁、岬洋二など。
1957年製作/72分/日本
劇場公開日:1957年9月1日
ストーリー
宮城県塩釜の近くで、本邦最初といわれる海底発電所の工事が始まったが、近郷の漁村を地盤とする悪徳ボス浅見大造の執拗な妨害のため、遅々としてはかどらない。そんな最中に、東京の本社から赴任してきたのが青年技師多田次郎だ。その多田を浅見が松島の料亭へ招いたのは、実をいえば買収の下心からである。しかし、多田が頑として盃を受けないので、浅見は憤然と去った。そのあとで、多田は松島病院の医師となっている中学時代の旧友宮川祐に再会し、浅見の悪業をつぶさに聞いた。現場主任の勝田徹はそうした多田の気骨に惚れ込み、娘光代の婿はこの男以外にないと思うのであった。やがて、浅見の妨害は一段と激しさを増した。県会議員の郷光徹は浅見の腰巾着である。そんな父の所行に小さな胸を痛める娘みどりに眼をつけた浅見は、自分の後妻にしようと狙っていた。従業員慰安大会の夜、多田は浅見一味に囲まれたが、柔道五段の多田にしてみれば、暴漢を叩き伏せるぐらいは朝飯前のことだ。国家的事業ともいうべき発電所建設のためには、敢て身命をいとわない多田の気魄は、そのまま全従業員の胸に伝わり、その後の作業はかつてない活気をもって続行された。光代は下宿住居の多田に、何くれとなく気を配った。一方、郷光と会って建設工事の重大性を説き、浅見と手を切れとすすめる多田の熱意に、みどりは心をうたれた。松島の祭礼の夜、浅見から金を貰った流れ者の森元は、光代と散歩している多田に斬りつけた。鮮かな体落しで投げとばされた森元は、光代の急報で駈けつけた作業員たちに捕えられたが、多田は一同を制して逃がしてやった。同じころ、郷光は良心の呵責にたえかねて毒を仰いだ。浅見は最後の手段として、資材を満載してくる船を襲撃しようとたくらんだ。それを多田に告げたのは森元である。浅見一味は森元を殺し、計画通り松島沖に船を出したが、すでに海上保安庁の手が回り、一網打尽となった。かくて、活気に満ち溢れた工事現場には、明るい笑顔の宮川とみどり、弁当箱を二つ持ち、次郎と父の作業ぶりを嬉しそうに見守る光代の姿が見られるのだった。