地獄花(1957)

劇場公開日:

解説

大映のビスタビジョン色彩映画第一作。(画面比率はタテ1対ヨコ2)。室生犀星の原作、『舌を噛み切った女』を「刃傷未遂」の伊藤大輔が脚色、監督、「忘れじの午後8時13分」の中川芳久が撮影した。主演は「おしどり喧嘩笠」の鶴田浩二、小堀明男「女の肌」の京マチ子、市川和子、ほかに南左斗子、柳永二郎、山村聡、舟木洋一など。

1957年製作/99分/日本
劇場公開日:1957年6月25日

ストーリー

王朝末期--春浅い湖北の高原地帯で、都に急ぐ女輿を護った貴族の一行を、群盗袴野の麿の党と、峡の馬介の率いる御坊派の一隊が同時に襲ったが、獲物の分配で両党は殺気立った。だが、馬介が、輿の中の姫だけを貰うことにしてその場は納まったが、姫と侍女との別離の悲嘆をみて胸打たれたのは、麿の養女でまた妻でもあるステだった。彼女は他日姫と引換えに彼の得心の行くものを与える約束で、姫の身柄を貰い受けた。彼女は姫を都に送り届けることにした。一行の護衛に当ったのは、首領の麿さえ一目おいていた底知れぬ若者野伏の勝だった。道中無事に、都近くで別れる時、姫は形見として自分の虫の垂衣をステに与え、後日何かの時に誓って力になろうと約束した。山に帰ったステを、ある日、麿が一党と共に遠くへ夜討ちに出かけた留守に馬介が訪れた。馬介は姫の代償にステの肉体を要求した。ステは激しく抵抗したが、遂に手篭めにされてしまった。折から夜討ちに失敗して足に重傷を負って帰って来た麿とその一党は、舌を噛み切られて死んでいる馬介と、噛み切ったステの凄じい姿をみて愕然とした。だが、ステは馬介の子を懐胎していた。それを知った麿は激怒して彼女を荒野へ追払った。自己嫌悪に一旦は死ぬ決意をしたステも、近くに居合せた勝の説得で生きて子供を育てる勇気を持った。やがて彼女に子供が生れた。ステは娘時代より女らしい美しさが満ち溢れた。麿は再び惜しくなりステを口説いたが彼女は厳しく拒絶した。麿は子供のためにステが応ぜぬと見てとり、赤児を殺そうとした。必死に子を抱いて逃げる彼女を救ったのは勝だった。彼は一命をかけて追いすがる袴野の党を防いで彼女を落ち延びさせようとした。その勝にステは沸り立つ恋情を呼び醒された。勝も心をゆすぶられ、思わず二人は固く抱き合った。やがて、二人は湖上に追いつめられた。勝は麿にステと子供の助命を頼みその同意を得ると、責を一身に背負って水中に飛込んだ。ステもまた突嗟に赤児を船底におくと、勝の後を追って湖中に身を投じた。残された赤児の無心の表情に、麿ははじめて人間らしい感情に眼覚め、二人を救え、と部下に命令した。湖中から助け出された二人に、麿は都へ行くことを許した。虫の垂衣を被って赤児を抱いたステと、逞しい野伏の勝の二人の姿は、湖上に浮かぶ袴野の船団に見送られつつ、朝靄の街道に小さくなって行った。

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