好人物の夫婦
劇場公開日:1956年9月11日
解説
東宝がこの度、一流作家の代表作を映画化する“ダイヤモンド・シリーズ”と銘打った文芸映画の「鬼火(1956)」に次ぐ第二作である。志賀直哉原作を「白夫人の妖恋」の八住利雄が脚色、「鬼火(1956)」に続く千葉泰樹、山田一夫のコンビが監督、撮影を担当した。主な出演者は「現代の欲望」の池部良、青山京子、「鬼火(1956)」の津島恵子、「東京の人さようなら」の石原忠。他に滝花久子、有島一郎、東郷晴子など。
1956年製作/50分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1956年9月11日
ストーリー
葉山の海岸近くに住む日本画家の池島は、妻とし子、女中滝と静かな三人暮し。初夏のある日、秋の展覧会への出品作に熱中していた池島は絵が描けぬので気分転換のため関西旅行を思い立った。だが彼が以前、京都のお仙という女性と一悶着あったことを考えるとし子は、夫にいやな事はしないでと願うが嘘のつけぬ池島は請け合わない。押問答の末、結局旅行は取り止めとなる。翌朝、大阪にいるとし子の姉から手紙で、祖母が病気で逢いたがっているという。優しい夫の勧めで、とし子は大阪に立ち、二十日程は過ぎ去った。祖母の病気は思わしくなく当分帰れぬと、とし子の知らせ。池島は滝と二人だけの生活で妙に神経がたかぶるが、滝も彼の底意を見抜いている様子である。滝は十八位で鄙びているが可愛い娘、兄という若い男が訪ねて来ると池島は気になったりする。とし子が行ってから二カ月たった初秋のある日、隣りの主人が、滝は悪阻らしいと知らせてきた。驚く池島を隣りの夫婦も疑っているらしい。その日、吐気に苦しむ滝の背を撫でてやっている処に、とし子が帰って来た。隣りの細君から事情を聞いたとし子は気持をこじらすがその夜、散歩から戻った池島は、自分のせいではないと静かに妻へ話しかける。やがて廊下へ手をついてわびる滝の姿。台所の外に人影を見つけた池島は、滝の恋人だというその青年を招じ入れた。責任をもって滝と結婚するという彼に、池島は妻へ向って、滝の願い通り暇をやれという。やがて月の光が流れる海岸をむつまじく散歩する夫婦の後姿が、夜目にもハッキリ浮き出して見えた。