明日はどっちだ
劇場公開日:1953年7月28日
解説
「サンデー毎日」連載の永井龍男の原作を「ひまわり娘」の長谷川公之が脚色し、新人長谷部慶次が第一回の監督にあたった。師の五所平之助が演出補導をうけもっている。撮影は「刺青殺人事件」の鈴木博、音楽は原六朗。「戦艦大和」の舟橋元、「女だけの心」の三井弘次、「日本の悲劇」の柳永二郎、「その妹」の香川京子、「素浪人奉行」の島崎雪子、「坊っちゃん(1953)」の池部良、「雁(1953)」の高峰秀子などが出演する。
1953年製作/97分/日本
配給:新東宝
劇場公開日:1953年7月28日
ストーリー
毎日対南海試合中、後楽園球場の三塁側内野スタンドで三十前後の麻薬患者が急死した。現場へ急ぐ警視庁詰の各社記者たちのなかで毎朝新聞社の久保田はとつおいつしていた。日頃私淑して出入りする先輩退職記者加藤の一人娘由紀子より逢いたいという電話があったのである。が、彼は所詮しごとの虫、犯行当時現場にいあわせた記者クラブ出入りのソバ屋弁さんの裏付けを頼りに謎のビッコの青年をホシとにらんで、その足どりを追う。一方被害者の身許がわかり、彼と弁さんは故人の飲み友達と称して喪中の家にのりこんだ。被害者には昭子という美しい看護婦の妹があり、今は一人ぼっちとなった彼女に久保田は同情を感じる。するうちに二人は例のビッコの男を発見、待合よし里に入り、さらにそこを出た男の後を尾けてあるナイトクラブに至った。そこの廊下で被疑者といい争う女給風の女を目にして、久保田は愕然とした。その目鼻立ちが被害者の妹昭子にそっくりなのだ。久保田が日々の仕事に追われているうち、彼の親友、大阪本社勤務の喜多が由紀子に求婚する。由紀子の用事とはその相談だったが、彼女をひそかに愛する久保田も、喜多への友情から心ぐるしく賛成せざるを得なかった。内心久保田を慕う由紀子とて苦しい思いは同じだが、事はそれなりに終る。「仕事」が二人の仲を割いたわけである。--よし里の光奴という妓が被疑者の深馴染みで、新橋演舞場で二人が連絡することを探知した久保田は、昭子を被疑者、と対決させるべくかけつける。出迎えに現われた老婆の目をごまかして光奴と昭子をすりかえ、被疑者(佐庭)の待つ月島の古工場に車を走らせる。佐庭は前の情婦と瓜二つの昭子をみて混乱するが、自分の殺した男の妹ときいて切端つまった顔となった。難詰する昭子と久保田。建物のまわりを警官に包囲されたことを知った佐庭は拳銃自殺をとげた。彼は密輸のギャングの手先きとして何の恨みもない相手を毒殺したのである。麻薬中毒の彼は薬を得るために、何ものも辞さなかったのだ。「毒殺犯人自決寸前のインタビュー」は久保田のクリーン・ヒットとなった。--「仕事」で由紀子を失った久保田は、そのかわり昭子という心やさしい娘と結ばれることに、今はなりそうである。