処女受胎
劇場公開日:1966年10月29日
解説
黒岩重吾の同名小説を、「若親分あばれ飛車」の高岩肇が脚色し、「複雑な彼」の島耕二が監督した風俗もの。撮影は「愛の手紙は幾歳月」の小原譲治。
1966年製作/82分/日本
配給:大映
劇場公開日:1966年10月29日
ストーリー
高野愛子は繊細、優雅な画風をもって、画壇ではユニークな存在である。今日の個展も盛況で、折しも、パリ近代美術展の金賞受賞が伝えられ、記者がどっと押し寄せた。そんなことには無関心に愛子の絵を見ていた矢田部は「この絵には孤独の影がある」と呟いた。彼は大学の産婦人科教授であったが、その言葉に愛子は本心を見破られた思いだった。だから愛人の細川や村上と一緒にいても楽しまなかった。秋の個展も近づいていたが、愛子は一向に筆をとる気にもなれなかった。そんなある日、学生時代の友人で、既に結婚している三枝に会い、子供をもった女の幸福な生活を見て、自分も子供を生もうと決心した。しかし、結婚による束縛を嫌った愛子は人工受精という方法を用いることにして、矢田部の許を訪れた。彼は反対したが、愛子は強引に施術を頼みこんだ。医学生尾津のザーメンで、愛子は間もなく妊娠したが提供者の名は矢田部と看護婦の宮川恵子しか知らない。だが、愛子が度々矢田部を訪れるので、尾津は自分の提供したものが、愛子のために使われたと直感した。そして、愛子に近づいた尾津は、愛子の「処女受胎」のモデルになった。一方、愛子の妊娠を知った村上や細川らは、それぞれ自分の子供だと思って慌てたが、尾津は愛子の秘密を本人にも明かさなかった。尾津はいつしか、愛子に惹かれていった。だが、尾津の恋人である恵子は、そんな彼を憎み、愛子への提供者は、ライバルの里井だと言ったため、尾津の心は嫉妬に狂った。ある日、モデルに立った裸身の尾津は、突然、愛子を襲った。愛子は抵抗したが……。「処女受胎」は未完のままで、愛子が今製作している絵は荒々しいタッチの、野性的な画風をもつ絵である。かつての繊細、優雅な画風は影もとどめていない。