七人の刑事 終着駅の女

解説

光畑碩郎のオリジナル・シナリオを、「太陽が大好き」の若杉光夫が監督した刑事もの。撮影もコンビの井上莞。

1965年製作/日本

ストーリー

上野駅ホームで、一人の女が刺殺された。女は持っていたバッグの中に北上行の切符を持ちお上りさんの様子はれき然としていた。死体を発見した駅員の証言で、女の足元にあった白いバッグが紛失していることに不審を抱いた捜査本部は、南、久保田刑事を中心に白い旅行鞄を追った。その夜、ホームに張った杉山、久保田両刑事は、置引きの常習犯忠治を捕え、事件当夜ホームをぶらついていた仲間の正をつきとめた。正の部屋を襲った両刑事は、白い旅行鞄を手にした正から、事件当夜下駄バキで逃げる男の足音を聞いたという新事実を聞き込んだ。一方捜査本部は、女の身元割り出しにやっきとなったが、思うように進まぬある日、ふさ子の出現で、にわかにいろめきたった。ふさ子と名のる女は、二、三日姿を消した友人を気づかって来たと言いながら、死体写真をポケットに入れたまま、姿を消した。後を尾けた久保田刑事は、途中与太者風の男に飲み屋に連れこまれ、暴行を受けるふさ子を見た。翌日、飲み屋の主人を呼んだ捜査本部は、その男はこの辺一帯で巾をきかす大滝組のものだと証言した。七人の刑事は大滝組に焦点をしぼり、捜査を開始した。捜査にあわてた大滝組は殺しの代人に木島真吉をたてようとしたが、当の木島は自首を拒みふさ子のアパートに助けを求めた。岩手の貧農を嫌い上京した木島は、大滝組に売春を強いられるふさ子と、やくざ稼業から足を洗い、田舎へ帰ろうと約束を交わしていた。木島の挙動に気づいた大滝組は、子分を総動員して上野駅に向った。捜査本部も総力を結集して、ホームにはりこんだ。発車十分前、ふさ子はホームに入った。待伏せた大滝組の幹部は、木島に迫った。瞬間木島は、入って来た列車に飛び込み命を断った。その日、乱闘の末、捕まった大滝組の乾分良次は、持っていたナイフから真犯人と断定された。一人ぽっちとなったふさ子は、駅前の雑踏に消えていった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.0殺しの舞台は希望を胸に抱いた金の卵が降り立つ60年前の上野駅! 徹底的に若者をスポイルする反社の魔手にオジさん精鋭刑事が挑むリアリズム!!

2022年10月19日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 主役の刑事たちよりもあくまで事件主体というスタンスが、主要人物の個性が強くてナンボの現行の刑事ドラマと真逆のアプローチのため、のめり込みにくい部分は正直有りましたが、一方で当時の風俗や社会問題、あるいは警察と反社との対立具合が垣間見られ、今現在と似て非なる若者の空疎さが身に染みる脚本はなんともユニークでした。非常に地道で地味な捜査シーンの連続も今の世に於いては新鮮そのものです。  というわけで、実に地道に一つ一つ手掛かりを見つけて当たっていき、新しい証言が出る度に裏を取り、逐次捜査本部で集まって話し合い、少しずつ少しずつ真犯人に近づいていきます。  途中で同時多発的に捜査が劇的展開したり、容疑者が消されて新たな問題が発生したり、あるいは犯人グループの悪巧みの場に刑事が居合わせたりといった展開の盛り上げ用のミラクルや緩急の付いたアクションは見られません。  それを退屈と言ってしまえばそうなのですが、終始テンポが良くあるいはスピーディーで観客の興をそそるように矢継ぎ早に展開される過剰にドラマ的な現代の刑事ドラマに比べ、テレビ黎明期に於けるコマーシャライズされていない事件ドラマの妙味が詰まっていると考えれば非常に意義深いものです。"ドラマドラマしていない事件""ドラマドラマしていない刑事"とでも評すればいいでしょうか。

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O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)

4.0上野駅ロケ

2022年10月15日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

テレビの七人の刑事の映画版で、メンバーは同じ、ような気がする。 上野駅のホームで女性が殺され、七人の刑事が捜査を始める。 とても丁寧に描かれ、当時、大混雑していた上野駅でのロケシーンは素晴らしい。

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いやよセブン

5.0東京の闇に呑まれる人々と貰い忘れたお釣り

2020年6月26日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

上野駅発の東北行き列車のホームで、女性が刺殺された。目撃者を探す上野署の刑事たち。 駅員の証言で、女性の持っていた白いカバン探す過程でのやり取りや当時の駅で暗活する人物模様などもグランドホテル形式で手際良く交差させていく演出は中々の出来。 上野駅が舞台なので、東北からの出稼ぎ者たちの姿が多く描かれ、東京の闇に呑まれる人々が、多く登場する。 芦田伸介などのテレビ版の出演者の他に、目立つのは、大滝秀治(若い!けど老練感あり)の刑事が、聞き込みで、証言の再現して地面に這い蹲り、適当な目撃者に怒るところなども面白い。 笹森礼子が身を持ち崩して、連れ込み売春宿の女になっているなとの悲喜。 でも笹森礼子が居るなら、自分も行きたい。(オイ!) 全編を通じて音楽がないドキュメント的で結構リアルな作劇だが、権利の関係か?七人の刑事の有名な男性ハミングのテーマ曲が流れないのは、買い物してお釣りを貰い忘れた感じで、ちょっと残念だけど。 池袋の新文芸坐にて企画特集。 「昭和の刑事が見た風景」の二本立ての一本にて

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