婦系図

劇場公開日:1962年2月21日

解説

泉鏡花の原作を「続 悪名」の依田義賢が脚色。「釈迦」の三隅研次が監督した人情、世話もの。撮影は「鯉名の銀平(1961)」の武田千吉郎。

1962年製作/99分/日本
原題または英題:Her Hidden Past
配給:大映
劇場公開日:1962年2月21日

あらすじ

帝大教授酒井俊蔵の恩情で立派な教育を受けた早瀬主税は、兄妹のようにして育った酒井の娘妙子が自分に恋をよせているのを知り、これを受けては義理ある先生にすまぬと、酒井家を出た。そして魚屋めの惣の世話で、かねてから恋仲だった柳橋の芸者お蔦と、先生には内証で世帯を持った。かつての酒井先生の情人で、妙子の実の母であるお蔦の姉芸者小芳は、身分違いの恋の不幸を主税に説くが、主税は、芸者を妻にするのが出世の妨げなら出世せぬまで-と、初志を変えない。ところが、ふとしたことで主悦に恨みを持つ、静岡の権勢家の息子で同窓の河野英吉は、さまざまな策動をして主税をスキャンダルにまきこみ、さらにお蔦のことを酒井先生に告げて処分を迫った。酒井は主税をかばいつつも、お蔦とは別れさせるといわざるを得ない。酒井から、俺か女かどちらかを選べと迫られ、主税はやむなくお蔦と別れることを決心し、散歩にことよせてお蔦を湯島境内へさそった。思いもかけぬ別れ話にお蔦は歎き悲しむが、ついに得心して身を引くことを承知した。そして、髪結いをしているめの惣の家内のところで、すき手として働くことになった。河野の卑劣な行為を怒った主税はめの惣から、河野の当主の夫人がお抱えの御者と密通し、子までなしたいきさつを知り、この事実をもって復讐しようと、静岡へ去った。河野一家に接近してドイツ語私塾をひらいた主税に、政略結婚で河野家の不幸な娘はぐんぐんひかれてきた。その娘に、主税は母親の秘密を暴露する。それを立聞きした夫人の銃弾で、主税は重傷を負い、病床の人となった。一方、お蔦は風邪をこじらせて死の床にあった。たまたま訪ねた妙子の連絡で酒井も駈けつけた。酒井の命令で、めの惣が静岡に飛ぶが、主税は帰らない。「芸者にも真実な女がいますよ」と、お蔦は酒井に訴えて息絶えた。ようやく傷のいえた主税は、河野家の当主が夫人を射殺した日、東京へ帰った。今は亡きお蔦との思い出深い湯島天神にたたずむ主税の背に、梅の花が散った。

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映画レビュー

4.0 婦系図

2026年1月24日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

監督/三隅健次、主演/市川雷蔵、万里昌代と言えば、真っ先に想い出すのは時代劇の傑作「斬る('62=大映)」であり、否が応でも期待が膨らむのだが、「婦系図」はそんな期待を裏切らない傑作である。
この映画の万里昌代は本当に素晴らしい。「斬る」の登場シーンは少ないながらも鮮烈な存在感を示した役柄とは異なり、一見純真可憐で古風な女性像を演じている。一見と言ったのは、同時に極めて芯が強い現代女性の一面も覗かせる役柄だからなのであり、この複雑な心理描写を伴った好演により、今観てもまったく古さを感じさせない作品に仕上がっている。もちろん雷蔵も良いし、大映京都の豪華俳優陣、船越英二、三条魔子、小暮実千代、水戸光子、千田是也、藤原礼子、上田吉二郎、石黒達也、片山明彦、伊達三郎等、皆、適役で文句の付けようがないのだが、やはり男優陣よりも女優陣による好演の印象が強い。三隅作品を観ていていつも思うのは、それが時代劇であろうが現代劇だろうが、時には特撮スペクタクル映画であっても、それら作品における主役から脇役に至るまで、女性たちの存在感が圧倒的であり、作品のジャンルが何であれ、”女性映画の名匠’’と呼ぶのが相応しい。
例えば、若尾文子主演作品を例に挙げた場合、川島雄三監督の名作「雁の寺 ('62=大映)」よりも三隅作品「処女が見た ('66=大映)」の方が、池広一夫監督の「雁 ('66=大映)」よりも三隅作品「雪の喪章 ('67=大映)」の若尾文子の方が、よりリアルな存在感が得られるのと同時に官能的だ。それはキャサリーン・ヘップバーン、イングリッド・バーグマン、ジュディ・ガーランド、ジュディ・ホリデイ、オードリー・ヘップバーン等のハリウッド黄金時代の名女優たちが、当代きっての女性映画の名匠ジョージ・キューカー監督の下で、より一層光り輝いていたと言う映画史的な事実にとても似ている様に思えてならないのです。

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ナオイリ

5.0 悲恋物語

2018年11月15日
Androidアプリから投稿

こんなに悲しく美しい作品はない

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モモッシー