渦(1961)
劇場公開日:1961年1月15日
解説
井上靖の新聞連載小説を笠原良三と富田義朗が共同で脚色「浮気のすすめ 女の裏窓」の番匠義彰が監督した文芸編。撮影は「太陽が目にしみる」の生方敏夫。
1961年製作/90分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1961年1月15日
ストーリー
伊沙子は夫の帰宅が遅いある夜、警察からの電話で、山西光一を署まで引取りにでかけた。光一は戦災孤児で、以前知人に頼まれて就職の世話をしたことのある少年だった。その光一が、少年仲間の恐喝に加わって補導されたのだ。洋画輸入会社の社長で、仕事以外には冷淡な夫の洪介は、そんな妻の善意を不快がった。洪介の所へ出入りし、翻訳の仕事などを手伝っているりつ子は、ひそかに洪介を愛していた。光一は国際航業の給仕として働くようになった。ある時、エレベーターボーイの九平に、伊沙子に買って貰ったセーターを汚され、九平を殴った。九平が死んだと思った光一は、伊沙子の家に現われた。彼女は光一を旧知のピアノ教師鳥巣の所へ泊めた。翌日、国際航業へ行き、副社長の吉松に面会した。りつ子は吉松の姪であった。鳥巣が伊沙子をドライブに誘った。光一が世話になっている手前、辞退できなかった。鳥巣の伊沙子に対する態度に光一は怒りを感じた。りつ子は見合いをした夜、洪介の会社へ出かけた。伊沙子から電話がかかった。応待したりつ子の声に、伊沙子は電話を切った。彼女は家を飛び出し、光一の所へ行った。光一は、芝の増上寺の境内で、この前の相手と決闘するという。伊沙子は鳥巣を呼び出し、現場に赴いた。乱闘にまきこまれ、怪我をした。事件が新聞にのり、洪介は記事の中にアベックという活字を見つけて伊沙子を責めた。ある日、伊沙子は一枚の紙片を発見した。りつ子の手紙だった。「何事もなかったことと思って下さい。これでお別れします。いつぞや申上げた人と結婚するつもりです。今日かぎりお会いしないことにします」。伊沙子のショックは大きかった。伊沙子は鳥巣に旅行を誘われていた。その誘惑に応じようと思った。東京駅へ向かう伊沙子を光一が追った。鳥巣の姿を見た光一は彼を刺した。--それから何日か経って、西へ走る列車の中に伊沙子の虚ろな姿があった。車掌が電報を渡した。光一のことは吉松が引きうけ、洪介も後から追いかけてくるというのだ。