ねむの木の詩
劇場公開日:1974年4月1日
解説
女優の宮城まり子が主宰している、肢体不自由児の養護施設「ねむの木学園」の子供たらと指導員、保母たちのあたたかい交流を宮城まり子自らが、製作・監督した記録映画。撮影は「朝やけの詩」の岡崎宏三。
1974年製作/89分/日本
原題または英題:The Silk Tree Ballad
配給:ATG
劇場公開日:1974年4月1日
ストーリー
静岡県・浜岡町。遠州灘を望む美しい砂丘のそばに、「ねむの木学園」がある。ここには現在四十七人の園児が生活を共にして、勉強し、機能回復の訓練を受けている。十歳の少女ヤッコは、脳性マヒの後遺症で両足に保装具をつけている。だが、アキレス腱を伸ばす手術をすれば治るかもしれない。ヤッコは手術のため、トシミツと二人で入院。両親のいない二人のためにまり子園長が立ち合い励ました。運動会。選手宣誓はヤッコの役で、感動のあまり言葉が出ず、泣きながらやっとの思いで宣誓した。初めて自分の足だけで走るヤッコはもう笑顔だった。そして、トシミツは障害物競走でみごと一等になった。車椅子のヒロミ。ヒロミは死んだテントウ虫を見て悲しむ。親と死別した子供たちは死に対して敏感で、ちっぽけな虫の死にも悲しまずにはいられないのだ。手と足が不自由なアキヒロは、庭に置いてある中古バスで遊ぶのが大好きである。アキヒロがハンドルを握ると、いつしかバスは時速百キロで高速道路を走っている……子供たちの空想はどんどん広がっていく。ヒデトシの父は、原爆、水爆実験の被害に二度もあい、母は病気。彼は重度の脳性マヒで行動意欲は全くなし、と診断されていた。そのヒデトシに行動する意志が湧いてきた。通院バスの中から自転車学校の生徒を見て、その力強くペダルを踏む足、リズミカルな車輪の回転が、彼の胸の中にドラムのように響きわたったのだった。砂丘上りの日。ヒデトシは一人で、足をひきずり、腕だけで這い上ろうとした。何度も何度も駄目になりそうだった。他の子供たちは既に頂上に登っていて、ヒデトシに応援をしている。皆のかけ声に、一歩また一歩。ついに頂上まで登りきった。頂上からは海が見える。ヒデトシが初めて見た海は、青く広くどこまでも続いている……。