恐怖の報酬(1952)

劇場公開日:

解説

「二百万人還る」のアンリ・ジョルジュ・クルーゾーが一九五一年から五二年にかけて監督した作品で、中米を舞台に四人の食いつめ者がニトログリセリンを運搬するスリルを描いたもの。ジョルジュ・アルノーの小説をクルーゾー自身が脚色し、台詞をかいた。撮影は「夜ごとの美女」のアルマン・ティラール、音楽は「アンリエットの巴里祭」のジョルジュ・オーリックである。出演者はシャンソン歌手として日本にもよく知られるイヴ・モンタン(「失われた想い出」)、「独流」のシャルル・ヴァネル、クルウゾオ夫人のヴェラ・クルウゾオ(映画初出演)、「オリーヴの下に平和はない」のフォルコ・ルリ、「外人部隊(1953)」のペーター・ファン・アイク、「ヨーロッパ一九五一年」のウィリアム・タッブスなどである。なおこの作品は一九五三年カンヌ映画祭でグラン・プリを受賞、シャルル・ヴァネルが男優演技賞を得た。

1952年製作/フランス
原題または英題:The Wages of Fear Le Salaire de la Peur
配給:東和
劇場公開日:1954年7月25日

あらすじ

中央アメリカのラス・ピエドラスという町は世界各国の食いつめ者が集るところだ。コルシカ人マリオ(イヴ・モンタン)もその例外ではなかったが、彼には酒場の看板娘リンダ(ヴェラ・クルーゾー)という恋人がいた。そんな町へ、パリで食いつめた札つき男ジョー(シャルル・ヴァネル)が流れてきてマリオと親しくなった。ある日町から五〇〇キロ先の山の上の油井が火事になり、多くの犠牲者が出た。石油会社では緊急会議の結果、山上までニトログリセリンを運び上げ、それによって鎮火することにした。危険なニトログリセリン運搬の運転手は賞金つきで募集され、多く集った希望のない浮浪者の中からマリオ、ビンバ、ルイジ、スメルロフの四人が選ばれた。選に洩れたジョーは大いに不服だった。翌朝三時、マリオとルイジとビンバは約束通りやって来たがスメルロフは姿を見せず、ジョーが現れた。何故スメルロフが来ないのか、そんな詮索をする暇はない、ジョーが代りに加ってマリオとジョーの組が先発、三十分遅れてルイジとビンバの組が出発した。マリオの組は、ジョーが意外に意気地がなくて二人の協力がうまく行かず、後から来たビンバ組に追いこされてしまった。崖の中腹に突き出た吊棚の上を危うく通りぬけたのち、車は道路をふさいでいる大石のためストップしてしまった。しかし、沈着なビンバは少量のニトログリセリンを使用して大石を爆破し、無事に通りぬけることができた。そのあとは坦々とした行進がつづき、一同もほっとしたとき、突如ビンバの車が大爆発を起し、跡かたもなくけし飛んだ。爆発のあとは送油管が切れて石油がたまりかけていた。早くここを通りぬけないと油に車をとられて二進も三進も行かなくなる。マリオは思いきって車を油の中にのり入れた。そのとき、ジョーが油に足をとられて倒れたが、車を止めることができないばかりに、マリオは倒れたジョーの脚の上を通りぬけなければならなかった。そしてジョーを助け上げ、介抱しながらようやく目的地につくことができたが、そのとき、ジョーは既に息絶えていた。ニトログリセリンのおかげで火事は消しとめられ、マリオは賞金四千ドルをもらった。重責を果して空車を運転しながら帰途につくマリオの心は軽かった。しかし、リンダとの幸福な生活を眼前にしてはずむ彼の心を魔が捉えたのか、僅かのカーヴを切りそこねたトラックは、希望に開けたマリオをのせてもんどりうって崖下に転落した。

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映画レビュー

4.0マリオ! ルイージ!

2025年3月23日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

興奮

『ザ・マリオブラザーズ』とは全く関係ないのですが(by Wikiやスーパーマリオの由来の記事)、
かってに、テンション上がってしまいました(笑)。
 ちなみに、この映画で二人は双子ではなく、マリオはコルシカ島出身のフランス人。ルイージはイタリア人。同居しているというか、映画で描かれているのを見ている限り、ルイージが料理作ったりしてマリオの面倒見ています。
 映画の筋も、まず街の様子を描き世界観を示し、物語が動き出すと障害に次ぐ障害。どうクリアしていくのか、仕事は成功し、高額報酬を手にできるのかと、まるでゲームにありそうな展開。

アメリカ資本が石油掘削を行っており、そこで労働して金を得ている人々はいるらしいが、労働者への安全管理と言う感覚はなく、事故が起こってもほぼ使い捨て。地元への還元はなく、さびれた町。衛生状態も良くなく、毒蜘蛛も普通に足元にいる。街のホテル兼バーでは、外から舞い込んでくる砂をきれいにするために、従業員はひたすら床を手作業で磨く。
 マリオを始めとする、ビザがないから働けず、お金なく、餓死も視野に入った面々。
 ビンバは職はあるが、給料の総てを飲んでしまい…、
 ルイージも職はあるが、アスベストのような病で余命宣告。故郷に帰りたいが、金がない。
 ジョーは他の国から飛行機で逃げてきたけれど、すっからかん。

そこに降ってわいたような高額保証の仕事。当然、危険極まりない。それでも、飛びつく男たち。採用枠は4人。所長自ら腕前を確認しての採用。妨害して、候補者を引きずり落とす場面も。でも、それでさえ、不測の事態への対応力を見られていたらしい。
($2,000。当時どのくらいの価値があったのだろう?今だったら、1,000万円でも、嫌だな。それくらい食い詰めていたというか、彼らにとっては唯一の手段だったのか)

そして、選ばれた3人の男と、来ない男の代わりとなった男。

ここまでのストーリーが長くて、割愛を希望する人が多い。実際、公開時はカットされていたとも聞く。
 鬱屈した人々のやり取りが続き、しかも状況説明調。マリオに恋するリンダとの絡みも出てくるが、正直、そんなに見栄えのするものでもない。ストリートで踊る女性のステップの方が上手い。
 ただ、ここをカットしてしまうと、マリオとルイージの関係の変化や、ジョーの変化が堪能できなくなってしまう。ルイージの家に居候させてもらって世話を焼いてもらっているようなマリオが、ジョーにべったりになって、対立構造になる様子とか。実際は文無しなのに、ホテルの支配人は、ジョーのたたずまいに騙されて優遇するものだから、冷遇されながらたむろしている他の文無しの一団との断絶も招いてしまい…。というか、己の力を誇示する駆け引きのためか、わざと突っかかるジョー。けしかけて、相手が暴力的になっても一歩も引かずに、相手をひかせるジョー。
 それが、トラック運転のペア組にも影響して…、後の展開にもつながる。

そう、障害をどう乗り越えるかという面白さだけでなく、
4人の変化も見もの。特にマリオとジョーの変化。この二人で最後までペアを組めるのかと言うところも見もの。そして、ペアにはなっていないが喧嘩しているマリオとルイージは?ちょっと、皆から距離をとっているビンバはどう絡んでくるのか、最後まで孤高を貫くのか。ビンバの見せ場はあるのか。
 私が無知なのだろうが、原油を体にまとったままで、火に近づいたり、煙草を吸って大丈夫なのかともハラハラ・ドキドキ。原油場面では、漫画『獣医ドリトル』の原油まみれの鳥救出作戦も思い出し、ハラハラ。『地獄の黙示録』の予告シーンも頭をよぎって、ハラハラ…。特に、その少し前のシーンで、ほっとしたのもつかの間の惨事を見ているだけに、ここもほっとさせておいて何かあるのではと。
 そう、どちらの組も、勝って兜の緒を締めよ的な格言を述べたくなる展開。最後まで気を抜けない。

こんな映画があるなんて!

(リメイク版はどちらも未鑑賞)

★ ★ ★ ★ ★

★ ★ ★ ★ ★

≪以下ネタバレあり≫

役者も良い。
 ジョーを演じられたバネル氏が受賞されている。無一文なのに、大金持ち・権力者然とした登場した時のふるまい。採用されたスメルロフの代わりに現れた時の様子。何か大きなことをやらかしてくれるのではないかと思ってしまう。街では打つ手なしでくさっていたマリオが、ジョーについていけば何かできるのではと思ってしまうのも無理はない。だのに、出発時からの少しずつの怖気ぶり。それでも、まだ、報酬のおこぼれにあずかろうとしたり、とうとう逃げ出したりして、マリオに毒づかれ叱咤激励される。そんな老いて勢いが無くなってしまった様子が切ない。そして死に際。「あの壁の向こうには何があったのか」何度も訊くジョー。”壁”が、この抜け出せない環境ともリンクして、その”壁”の向こう≒本当なら希望を見出したいのに、”何もない”という答え。己の人生も”何もない”ようにも聞こえて、虚しさMAX。そして、死。死に際の表情と、死んだ後の表情の違い。生気の無い顔。こんな顔が演技でできるなんて。勿論メイクアップや、光の当て方で違うように見えたのだろうが。受賞もかくやと思う。
 ビンバを演じられたアイク氏。ニトロで大岩を爆破するシーン。本当にニトロを扱っているようで、思わず手に汗握ってしまった。演技でそこまでの緊張感を醸し出せるなんて。
 ルイージを演じられたルリ氏。余命宣告され、気分変えに行った先での出来事。そして導火線についた火を消しに行ってしまうなんて!コメディパート担当?人の好さがにじみ出る。
 マリオを演じられたモンタン氏。歌手だと思っていたら、俳優もなさっていたとは知りませんでした。マリオとジョーが同郷人と気が付くきっかけが口笛と言うのが粋!時には危険を一人で回避する豪胆さもみせと、活躍される。ついていこうと思ったジョーに苛立ちながらも、ペアを継続。ジョーの最期に、自分の行き先を見たのか…。でも、そんな演技よりも、そのスタイルに目が行ってしまって…。足が長いというか、胴があんなに短い…。こんな方いるんだ…。
 ちなみに、ラストのダンスでスメルロフ発見!ジョーはどうやってスメルロフと成り代わったのか?報酬折半?気絶させたか、寝坊させたか?そんな裏話を考えてしまうのも面白い。

そんな役者たちを際立たせる演出。ロケハン。セット。撮影。
 特に、吊棚のシーンはどうやって撮ったのか。吊棚は二つ用意したのか。ルイージービンバ組の撮影だけでも、かなり痛むだろうに。その後にマリオージョー組の撮影。
 トラック爆破のシーンを、煙草で見せるアイディア。目の前で爆発されるよりも印象に残る。
 逆巻く油田火事。エキストラが巻き添えにならないか心配してしまった。

スリルの抜け方だけでなく、人間模様でも楽しめる。面白い映画です。

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とみいじょん

4.0古典的名作

2024年12月7日
PCから投稿
鑑賞方法:その他、TV地上波

ストーリーに一切の無駄がない。
映像も、素晴らしいコントラストで、かえってモノクロームの色調の方が味があっていいくらいだと思う。
ハラハラドキドキの展開で、最後まで飽きさせない。一気に見れます。
蛇足ですが、主人公がマリオで、相棒の名前がルイージなのは、偶然でしょうか。

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うそつきかもめ

4.0映画終活シリーズ

2024年7月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

1952年度作品
カンヌ映画祭グランプリ受賞
ベルリン映画祭金熊賞受賞
30代のイブ•モンタン若い!
なんとなく、先の読める展開やったわ

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あきちゃん

4.0前半の退屈は後半の緊張の布石か?

2024年6月29日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

モノクロのフィルムから映し出される寂れた雰囲気そのままに前半は驚くほどのスローテンポな展開なのに対し、後半の身体が硬直してしまい呼吸を止めてしまうくらいの緊張感しか無いストーリーは、名匠アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の代表作😐
ニトログリセリンという衝撃で爆発するアホな危険物をオンボロトラック2台で目的地まで無舗装の道路を運搬するサーカスみたいな仕事を請け負う話なんだけど、マ王はこの映画が好きである✨

今の映画批判にもなるけど、映像技術やCGの進歩は見た事無い映像まで可視化してくれるサービスと化した🥸
当然、観る側は迫力たっぷりの映像を求めて(製作者もそれに応えて)映画館に足を運ぶ次第なんだけど、一度観た映像には二度目の興奮は無くアクションシーンは違法薬物の如くオカワリを要求してしまう💦
実際に脳内では興奮作用のエンドルフィンやらドーパミンとかの脳内麻薬が生成されてるワケだから仕方の無い話でもあるんだけどね😅

映画好きのマ王は「映画を観る為に動き回る」のが趣味なんだと自覚している脳内麻薬中毒者なので、取り分けてアクションシーンを求めてはいないけど新しいアクション映画だと聞いてしまったら居ても立ってもいられなくなる←人間やめますか?映画止めますか?

本作は派手なアクションシーンは殆ど無い😑
ノロノロと走るトラックが映し出されるトコなんか下手すりゃ出来の悪いモノクロのロードムービーとかに思われるかもだ😆
でも、ニトログリセリン+悪路+トラック+碌で無し4人という組み合わせ自体が既にサスペンス&アクションを含んでいるのよ😬
兎に角、前半の欠伸必至とは真逆の息詰まる後半はおそらく監督の狙い通りだと思う(緩急の落差がハンパない)
見事な演出はマ王が生まれる前の映画とは思えない傑作となっている👍

余談だがアンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の名前を見る度に映画「ピンク・パンサー」を思い出すのはマ王が浅学なだけだと信じたい🌀

映画館での鑑賞オススメ度★★★☆☆
ドキドキとハラハラ度★★★★☆
アクションシーンの表現方法度★★★★☆

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マ王