雪どけ
劇場公開日:1974年2月16日
解説
雪景色が美しいフランス郊外を舞台に、離別した夫の帰りを待ち続ける妻の愛情と、それをやさしく見守る家族の苦悩を描く。監督はセルジュ・コルベール、カトリーヌ・ペイザンの原作をピエール・ユイッテルヘーヴェンとセルジュ・コルベールが共同脚色。撮影はジャン・ジャック・タルベス、音楽はミシェル・ルグランが各々担当。出演はアニー・ジラルド、ジャン・ロシュフォール、ベルナール・ル・コック、クロード・ジャド、ガブリエラ・ボッカルド、ベルナール・フレッソンなど。
1973年製作/フランス
原題または英題:Les Feux de la Chandeleur
配給:東京第一フィルム
劇場公開日:1974年2月16日
ストーリー
雪のプロヴァンス。一組の夫婦が、その日から別々の人生を歩むことになった。夫アレクサンドル(J・ロシュフォール)。昔かたぎの律儀な公証人。妻マリー・ルイズ(A・ジラルド)。家庭にこもるより、街頭に出て婦人の権利を主張する活動家タイプ。二人の子供ジャン・ポール(B・L・コック)、ローラ(C・ジャド)はマリーが引き取り、アレクサンドルはひとりでホテルへ移った。ジャン・ポールは、家を出ていく父を見送る母の肩が小きざみにふるえていたのを、子供ごころにも覚えている。十年の歳月が流れ、また、冬。同じ町に住みながら仲々二人は顔を合わせることはなかった。そんな二人が会った。アレクサンドルは、事務所の窓から赤いムギワラ帽子をかぶり、ジャン・ポールの妻アニー(G・ボッカルド)と腕を組んで歩くマリーを見て、その季節はずれのムギワラ帽が気になり、声をかけた。足がとまり、ふり返っても、彼女の顔に微笑が浮かぶまで、しばらく時間がかかった。彼女が、離れた夫への愛を口に出すようになったのはそれからだった。聖燭祭のローソクがゆらぐ食卓を前に、ひとりはしゃぐ母を見ながら、ジャン・ポールもローラも複雑な気持だったが、彼女を責める気にはなれなかった。たとえ母の望みが幻想であっても、彼女の生き甲斐を奪う資格は誰にもない。父と母の関係をみつめる年齢に彼らは達していた。「ローラが気になって、ちょっと寄ったのだ」、アレクサンドルが口ごもりながら、ある日、ドアの前に立った。「よくいらしたわね、私に会いにきたのでなくとも」、マリーは落ちついているようにみえたが、数時間後、新しい妻の名を出してアレクサンドルが帰るといい出したとき、「今も愛しているのよ」というマリーの声は悲鳴に近かった。ジャン・ポールもローラも、そんな母をなぐさめる術はない。マリーが、誰の眼にも異常だと判るようになったのは、その日からだった。そしてある夜、マリーは家を出たまま帰ってこなかった。不吉な予感に襲われたジャン・ポールは父の家へ電話したが、彼もまだ帰っていなかった。一同の不安が頂点に達しようとしていた時、マリーが息をはずませ、とびこんできた。アレクサンドルと逢っていたという。電話が鳴った。アレクサンドルからだった。今までずっと仕事だったという。数日後、ジャン・ポールは神父の話を聞いて、背筋の寒くなるのを感じた。母が神父に手紙を出し、妊娠を告げたという。手紙は、父の現在の妻クロティルド(E・オッキーニ)にも届けられていた。彼は母を責めた。マリー・ルイズが床の上にくずれ落ち、息を引きとったのはそれから間もなくだった。それは、アレクサンドルの車が、折から降り出した雪の中を、彼女の家に到着したのと、同時だった。「ママと暮すことにした。彼女をほおってはおけない」。葬送の日、雪にうもれた川のほとりの母の墓前で、ジャン・ポールは激しい悔恨にさいなまれていた。春の訪れを告げるような、なごやかなぬくもりの風も、墓前を去っていく彼には、なんの感興も呼び起こさなかった。プロバンスは、まだ雪だ。
スタッフ・キャスト
- 監督
- セルジュ・コルベール
- 脚色
- ピエール・ユイッテルヘーベン
- セルジュ・コルベール
- 撮影
- ジャン・ジャック・タルベス
- 音楽
- ミシェル・ルグラン
- 字幕監修
- 高瀬鎮夫
受賞歴
第25回 カンヌ国際映画祭(1972年)
出品
出品作品 | セルジュ・コルベール |
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