告白(1970)
劇場公開日:1971年3月20日
解説
1950年前半のチェコの〈暗黒時代〉に実際に起きたスランスキー事件(血の粛清)をあばき、人間の自由と尊厳を蹂躙するものを鋭く告発する。製作は「禁じられた遊び」「仁義」のロベール・ドルフマンとベルトラン・ジャバル、監督は「Z」のコスタ・ガブラス、原作はアルトゥール・ロンドン、リーズ夫妻の自叙伝的ドキュメントを「戦争は終った」「Z」のホルヘ・センブランが脚色、「Z」のラウール・クタールが撮影、映画内に出て来るチェコのスチル写真は「ベトナムから遠く離れて」のクリス・マルケル、音響はウィリアム・シベル、編集を「Z」のフランソワーズ・ボノーが各々担当。出演は「仁義」のイヴ・モンタン、「影の軍隊」のシモーヌ・シニョレ夫妻が映画の中でも夫婦役を演じ、その他「ウエスタン」のガブリエレ・フェルゼッティ、ミシェル・ヴィトー、ウンベルト・ラホなど。
1970年製作/136分/フランス・イタリア合作
原題または英題:The Confession
配給:ワーナー・ブラザース
劇場公開日:1971年3月20日
ストーリー
1951年、チェコの首都プラハ。外務次官ジェラール(イヴ・モンタン)は、何者かに襲われ、目隠しされて暗黒の世界に拉致される。ジェラールとは第二次大戦中、仏でレジスタンスに参加していた時の名で本名はアルトゥール・ロンドン。彼は生まれながらの闘士でありコミュニストであり、スペインの国際戦線に参加したり、ナチの強制収容所に送られて辛酸をなめた経験もあった。正義の為には我が身も捨てる闘魂をかわれ、国家に対する長い貢献を評価され要職についていたのだ。ところが最近になり、周囲の人人が彼を敬遠し始める。重要な会談も彼の出席なしで進められるようになり、黒い自動車の尾行がつくようになったのだ。不信に思った彼は旧スペイン義勇軍の同志達、保安部のオシック(ウンベルト・ラホ)達に相談するが分らない。明らかに彼は疑われていた。党によってである。ラジク裁判やコストフ裁判以来の党内抗争の疑惑と逮捕の波が、プラハにも及んで来たのだ。そして、突然、彼は連れ去られた。独房と取調室と廊下だけの暗黒世界であり、時間も季節もない、自らの犯罪の自白(自己批判)の強制と、訊問と、睡眠時間の強奪であった。そして、それらは兄の名においてなされた。ある時は残酷に、なだめすかのように……執拗に繰り返される。中央委直属と称すスモラ(ミシェル・ヴィトー)や検察官コウテック(ガブリエレ・フェルゼッティ)によってだ。告白の強制は次第に彼が党の為に勇気と誇りをもって成してきた功績を、自らの疑惑の想念の渦に投げ入れる。起訴理由は西欧側スパイ行為、トロキスト・グループの首長として行動したという事だ。ジェラールは否定するが、不定期な訊問、拷問と睡眠時間のきりきざみは彼を次第に心神耗弱へ落し込んでいく。一方、妻のリーズ(シモーヌ・シニョレ)は夫の失踪を訪ね、関係官庁の協力を依願するが返事はようとせず、家族は家や学校も追われ、彼女も工場で働らかさるを得なくなる。ジェラールは一カ月以上もネバった。しかし、逮捕者は彼ばかりではなかった。信頼していた友人の“告白”文のコピーが廻って来た。そして、彼は罠と知りつつ、ハマらざるを得なくなってしまう。検察側の書類はジェラールの“告白”がなくても、周到な準備がふまれて用意され、ジェラールはサインさえすればよかった。罠と認めさえすればよかったのだ。明白な党内抗争による大粛清であり、急進的スターリン主義者の陰謀だった。(このあたりから画面のあちこちにスターリンの写真や彼の映ったニューズリールが挿入される)欺瞞的裁判は、開かれた。ジェラール達、容疑者は与えられる裁判の筋書きを暗誦すればよかった。儀式は淡淡とすすめられた。工場でラジオを聞くリーズは夫が全ての背任行為を自白した事を知る。信じられない事であったが信ずるほか方法はなかった。今まで夫婦してあれ程忠誠を尽くし、その為に戦った党を裏切ったなんて……。そして彼女は党に対する自分の変わらぬ忠誠を証明する為、愛する夫を公式に否定しなければならぬ立場となった。裁判の結果、ジェラールは死刑を免れた。やがて、スターリンの死後、しばらくしてジェラールは釈放され、コウテック達が投獄された。1956年、彼は名誉を回復出来た。六八年チェコは“プラハの春”をむかえる彼も自叙伝をチェコ作家同盟の援助で出版しようとする。しかし同年秋、プラハに着いた彼はソ連軍のチェコ駐留を目撃するのだった。“レーニンよ眼をさませ!やつらは気が狂ったぞ”と青年達が駆け廻っていた。
スタッフ・キャスト
- 監督
- コスタ=ガブラス
- 脚色
- ホルヘ・センプラン
- 原作
- リーズ&アルトゥール・ロンドン
- 製作
- ロベール・ドルフマン
- ベルトラン・ジャヴァル
- 撮影
- ラウール・クタール
- 録音
- ウィリアム・シベル
- 編集
- フランソワーズ・ボノー
- スクリプター
- クリス・マルケル