トレスパッサー
解説
「港の女」「五つの魂を持つ女」と同じくグロリア・スワンソン嬢の主演映画で「巴里(1926)」「アンナ・カレニナ」の監督者として知られたエドモンド・グールディングが初めてのトーキー作品で「悪魔の日曜日」に先立つ出世作。原作、台詞もグールディングの手になるもので、撮影は「踊る娘達」「港の女」のジョージ・バーンズと「これぞ天国」「ブルドッグ・ドラモンド」のグレッグ・トーランド。助演者は「戦線花嫁」のロバート・エイムス「アリバイ」「流行の寵児」のパーネル・プラット、「紐育万華鏡」「つばさ」のヘンリー・B・ウォルソール、子役のウォーリー・オルブライト、「ウィリー・リバー」「彼の捕えし女」のウィリアム・ホールデン、ブランシュ・フレデリシ、ケイ・ハモンド、メアリー・フォーブス、マルセル・コルディなどである。
1929年製作/アメリカ
原題または英題:The Trespasser
ストーリー
シカゴの弁護士ヘクター・ファーガスンの事務所に働く女速記者マリオン・ドネルは恋仲のジャック・メリックと駆け落ちした。その3日目の日にジャックは父親ジョンから懇談をうけた。いまの夫婦関係をいったん解き、いずれ日を改めて堂々たる結婚式を挙げろと父は言うのだったが、その真意は明らかに若い2人を引き離し自分達と同じ身分の娘をめとらせようとしているのだった。早くもそれと感じたマリオンはジャックが父親の意見にやすやすと同意してしまったことを悟り怒りのあまり彼のもとを去った。1年半の後彼女は1人の子供の母親となっていた。そして安いアパートの一室を借り以前と同様にファーガスン法律事務所に勤めて寂しく暮らしていた。ある日、ジャックが父親のきめたフリップカーソンという女性とパリで結婚するという記事を新聞で読んだ時、マリオンはジャックの父親の家へ助力を乞うべく訪れた。だがジャックの父親はマリオンなどに見向きもせず、おりからパリで自動車の事故で傷ついたフリップのもとへ駆けつけるためにヨーロッパ旅行へ出立した。落胆のあげくマリオンは強度の神経衰弱に襲われた。これを見かねたファーガスンは彼女に子供と共々田舎の別荘で休養するよう極力すすめた。ファーガスンのこうした態度はもちろん親切な気持ちから出発したものには違いなかった。しかしその胸の奥底にはマリオンに対する愛が人知れず影をひそめていた。マリオンは彼の気持ちを心に感じながらもよろこんでファーガスンの勧めにに従った。3年余りの月日が流れた。マリオンはいまではファーガスンの寵愛をうけながら贅沢に暮らしていた。ところが彼女の所へファーガスンが急に危篤状態に陥ったという電話がかかって来た。彼女は急病人の枕頭に呼ばれた。マリオンが訪ねてみるとファーガスンのそばには彼の夫人が看護していた。ファーガスンは臨終の床からマリオンの名を読んだ。彼女は自分の代わりに夫人の手を病人に抱かしめた。かくてファーガスンは死んで行った。遺言により50万ドルがマリオンに渡されることになった。けれども子供の幼い心に自分のそうした経歴が悪い影響を及ぼすのを恐れたマリオンはその遺産を断った。だが職業を持たぬ彼女はどうして生活して行くことが出来よう。そこで彼女はジャックを呼んで生活保証を得ることになった。その際、図らずも目の前に幼児ジャッキーを見たことからジャックはマリオンが既に自分の子を産んでいることを知って喜んだ。それを聞いたジャックの父親が子供を連れて行こうとしたのでマリオンは幼児と共にどこかへ逃げようとジャックに計った。彼等が荷造りしている時ジャックは訪れた父親と争い合ったがジャックの妻フリップも訪れジャックと逃げるようマリオンにせつなそうに言った。この言葉はマリオンの心を痛く動かし彼女は自分の愛を犠牲にしようと決心した。そこでマリオンは命よりも大切に思う幼児ジャッキーをメリック家に渡し彼等とは手を切ってしまった。だが幾月かの後、このごとくして唯一の希望を失って寂しく暮らしていたマリオンの前に図らずもフリップに死別したジャックが現れたそしていまでは自分の頑迷を深く悔いた父親とともに愛児ジャッキーが待つ自宅へ彼女を呼び迎えたのであった。
スタッフ・キャスト
- 監督
- エドマンド・グールディング
- 原作
- エドマンド・グールディング
- 台詞
- エドマンド・グールディング
- 撮影
- ジョージ・バーンズ
- グレッグ・トーランド
- 編集
- シリル・ガードナー
受賞歴
第3回 アカデミー賞(1930年)
ノミネート
女優賞 | グロリア・スワンソン |
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