「笑ってごめんなさい」鳥 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
笑ってごめんなさい
「ヒチコックはな、自作の映画には必ずどこかに自分を登場させているんだぞ」
「よーく見ていろよ」
・・遠い昔、映画好きの父が僕に教えてくれたことだ。
この映画も確か「ゴールデン洋画劇場」か何かで、うちのリビングでテレビで観たものだ。小学生の低学年の頃だった。
ラブバードを買ったお嬢さんが突然鳥に襲われて、白い首すじに出血したり、
カラスが電線に異様に群れを成していたり、
ガソリンスタンドが燃えたり、
不穏な空気がだんだんと迫って来ていたのだが、
事態は最高潮となり、あの有名なシーン、
⇒ 小学生たちがカモメの大群に急襲されて、必死で襲い来るカモメを後頭部から払いのけながら、泣き叫びながら走るあのシーンで
僕はゲラゲラと大笑いをしてしまったのである。
* * *
「○○!何がおかしい!なんで笑うことなどあるのだ!」と、腰を浮かせて激怒する父。
何かスイッチが入ってしまったのです。そこまでは白黒画面に漂う暗雲に胸騒ぎはしていたのですけれどね。
「入り込むタイプなのだなぁ」と憤慨している父を見て首をすくめた僕だった。
┐(´д`)┌ヤレヤレ
父が思うより僕が冷めた大人だったのか、あるいはあのスリラーパニック映画を理解出来ないお子ちゃまだったのか・・
実際たくさんの動物文学や図鑑を読みふけり、たくさんのペット=ジュウシマツとニワトリとアヒルと金魚と犬とマングースと蛇と、 (・・後略) を飼っていた動物研究家の僕としては、「バレバレの鳥のデコイに突つかれて引きつる表情を真剣に演技する子役たち」に堪らず吹いてしまったわけで。
お父さんごめんなさい、
僕もあなたを立ててフェイク(演技)すべきでした。
映画を観ると、映画の楽しみを教えてくれた父を思い浮かべる。
まったく遠い日の、懐かしい思い出である。
父は まったくいい人です。
帰郷するたびに父の好きな鳥肉=ケンタッキーを手土産にしている僕なのです。
『オルフェ』でコメントありがとうございました。
雑食でいろいろご覧になられていて、本当に感服いたします。
『銀河』は、そこそこよく書けたかなと思っていたので、マニアックな映画のわりに、お目にとめていただいて光栄でした。
意外と被っている作品がなくて、こちらで書かせていただきましたが、じつは僕の父も、テレビで一緒にヒッチコックの『断崖』を観ながら、「実はこの牛乳には豆電球が入っててな!」みたいな話を誇らしげにしてました(笑)。
これって、僕らの父親がっていうより、ヒッチコックのギミックって「わざと気づかせる」ように曰くありげにバラまいてある地雷原方式なので(似た映画作家だとオーソン・ウェルズもそのタイプ)、知ってると「ついつい誰かに指摘したくなる」んですよ。
そこがヒッチコックのヒッチコックたるゆえんだと、昔から思っております。
ちなみにわたしは小学校からの鳥見好きです(笑)。
子どもの頃のある時期から鳥が苦手に鳴りました(食べるのと料理は全く問題ありません)。チュンチュンと両脚揃えて前進する小鳥はいいんです。でも、右左右と歩く鳥はダメです。なのに!この映画「鳥」は昔、しょっちゅうテレビで放映していてそのたんびに見ていた記憶があります。叫びつつか黙ってかあんまり覚えてません。映画の中の大人の女性が恐怖でいっぱいなのを見て少しずつ安心したのかもしれません。大人でも怖いものは怖いんだと思って少し安心したのかもしれません