シカゴ(1938)

解説

「勝鬨」「氷上乱舞」のタイロン・パワー、「天晴れ着陸」「ラモナ(1936)」のドン・アメチ、「陽気な街」「スイングの女王」のアリス・フェイを主演せしめ、「第七天国(1937)」「勝鬨」のヘンリー・キングが監督に当ったスペクタクルで、ナイヴィン・ブッシュの書卸しを「奴隷船」に協力したラマー・トロッティと「五つ児王国」のソーニャ・レヴィーンが共同脚色したものである。キャメラは「目撃者(1936)」「符号1代」のペヴァレル・マーレーの担当。助演は「オーケストラの少女」「浮気名女優」のアリス・プレディー、「スタア誕生(1937)」のアンディ・デヴァイン「バーバリー・コースト」のブライヤン・ドンレヴィー、「殺したのは俺だ」のトム・ブラウン「二つの顔(1935)」のフイリス・ブルックス、「医者の日記」のシドニー・ブラックマー等。

1938年製作/アメリカ
原題または英題:In Old Chicago

ストーリー

1854年アイルランドから米大陸へ移住したオリヤリー一家は、ミシガン湖に沿うて興隆しつつあるシカゴを目指し、一家の運命を1台の幌馬車に乗せて目的地に近づいた時、不幸にも父親パトリックは疾走する馬車から落ちて急死した。残されたのは幼い3人の息子と母親のモリーであった。男勝りの彼女は亡夫の遺志をついでシカゴへ乗込み、洗濯屋を開いてあらゆる辛苦と闘い、子供たちの養育に心身を捧げた。成長した子供たちはそれぞれ各人の道を選んだ。法律家を志した長男のジャックは正義派の闘士として弁護士界に認められ、次男のディオンはボス政治の巨頭ギル・ワーレンの片腕と頼まれ、市政界の若手として名を売り今ではワーレンを凌ぐ実力を持つと云われていた。3男のボッブは早く結婚して地道に母の業をついだ。ワーレンの経営する酒場に、ニューヨークから来た唄姫ベル・フォーセットがいた。ディオンは彼女に恋をした。そしてワーレンの酒場からベルを引抜くと、上院議員コルビーを後盾として自分の酒場を経営し、ワーレンに公然と戦いを挑んだ。しかし老獪なワーレンは敢て正面からディオンに刃向かわず、自分の酒場を閉鎖する代りに市長に立候補する際、必ず応援してくれと、かえって下手から出て来た。だがディオンはいち早く彼の腹を見抜いていた。表面はあくまでワーレンに味方すると見せかけながら、秘かに腹心の部下を兄ジャックの許に遣わし、市民一般の要望であるとして、市政革新のため市長候補に立つことを勧めた。弟の仕業と知らぬジャックはついに承諾した。そして貧乏で正義派の兄が不利と見るや、選挙当日にことを設けてワーレン派を総検挙せしめた。かくしてジャックは市長となった。ディオンは自己の利益のために兄を当選せしめたのであったが、ジャックは敢然として市政の改革に乗出し、まずボス政治の巨頭たる弟ディオンを検挙しようとした。彼の犯罪を証す証人としてジャックは弟の愛人ベルを召喚することになった。彼女が兄の信念を尊敬しているのを知ったディオンは、改心したかの如く装って兄に謝罪し、彼の手でベルとの結婚式を挙げて貰ったが、それは「被告の妻は証人の資格なし」との法文を利用して、彼女を証人席に立たせないための結婚だった。憤慨に燃えた兄は弟を殴りつけた。母親モリーは以前から息子が酒場の女と結婚することを喜ばなかったが、ボッブによって兄弟の争いが知らされた時、牛小屋にいたモリーはそこへランプを置いたまま2人の許へ駆けつけた。間もなく小屋から出た火がシカゴ全市を包んだ。ワーレンはこれをオリヤリー兄弟が廓清しようとして放火したのだと群衆を扇動した。ディオンも兄が下町を焼払おうとしたのだと思ったが、その火は母の家から出た失火であることを知った。ジャックは軍隊を指揮して消火に努めるうちワーレンのために射たれて尊い犠牲となる、モリーは猛火の中でベルに命を救われ、初めて彼女が息子の嫁として恥しからぬ女であることを知った。暗黒の街シカゴはこの火によって灰じんに帰した。そして生残ったディオン一家はここに新しいシカゴを建設する決意を固めるのだった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第10回 アカデミー賞(1938年)

受賞

助演女優賞 アリス・ブラディ
助監督賞 ロバート・D・ウェッブ

ノミネート

作品賞  
原案賞 ニーベン・ブッシュ
作曲賞 ルイス・シルバース
音響録音賞  
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映画レビュー

5.0大火災

2025年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 3男のボブ(トム・ブラウン)が従業員のグレッチェン(ジューン・ストーレイ)とまず最初に結婚した。長男ジャックは順調に弁護士の道を歩むが、貧乏人からは金は取れぬとかなり苦労していそう。一方でギャンブル好きで社交家のダイオンは上院議員に上手く取り入り、パッチ地区の顔役であったウォーレン(ブライアン・ドンレヴィ)の店で歌っていたショーガールのベル・フォーセット(アリス・フェイ)に惚れて、自分の酒場を持つことになった。恋敵でもあったウォーレンに勝ち、順調に店は運営されていた。負けたウォーレンは店を手放し、市長選に立候補することになったが、そうなると自分の店が危なくなると考えたダイオンが改革派である兄ジャックを対抗馬として立候補させるよう策略する。かなり汚い手を使い、ジャックを市長選に勝たせた。そしてジャックは気をよくして、健全な街づくりを目指すためパッチ地区を一掃しようとするのだった・・・

 兄弟の諍い。大人の事情というやつで、ジャックとダイアンは対立するが、そんな折、オレアリー家の納屋から失火し、それがシカゴ中を巻き込む大火となる。ウォーレンをはじめとする反ジャック派はジャックの仕業だとし、ダイアンもそれを疑ってしまった。しかし、消火作業と延焼を防ぐための爆破とか、パニック状態の中で3人兄弟は理解し合う。運命の皮肉・・・ジャックは反対派に撃たれ爆破にも遭い帰らぬ人となった。

 1871年のシカゴ大火は実際に起こった19世紀最大のカタストロフィ。当時の新聞には映画と同じような原因で起こったと捏造されたほど。オレアリー家の内部はほぼフィクションらしい。

 アメリカンドリームを追ってゆく家族が出世して、やがて仲たがいする内容だが、中盤辺りはかなり中だるみ。ウォーレンやダイオンをもっと悪党として描いてくれたら盛り上がったかもしれない。それでも最後の火災のシーンは凄すぎる。これが1937年の作品なんだから凄いとしかいいようがない。『風と共に去りぬ』の火災がかすんで見えるほど。まぁ、モノクロだから逆に迫力が感じられたのかもしれないが・・・

 お母さんのアリス・ブラディがオスカーを受賞しているけど、注目すべきはアリス・フェイの美しさと歌の上手さ。この映画で初めて知ったよ。そしてジャック役のアメチーがオスカーを取るのはずっと先、約半世紀先の『コクーン』まで待たねばならない・・・面影ないよ。

【2012年ケーブルテレビ】

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kossy