獄中日記
解説
「熱血ボクシング手」「最後の一蹴」に次いで製作されたリチャード・バーセルメス氏主演映画で、ウィラード・マック氏がH・H・ヴァン・ローン氏と合作した舞台劇に基いて「ゴリラ(1927)」と同じくジェームズ・T・オドノヒュー氏が脚色し、「痛ましの親心」「笑う門には福来る」等をものしたジョン・フランシス・ディロン氏が監督したものである。バーセルメス氏を助けて新進のリナ・バスケット嬢「ソレルとその子」「不良老年」等出演のアリス・ジョイス嬢、「僧房に咲く花」「ドン・ファン(1926)」等出演のモンタギュー・ラヴ氏等が出演している。
1928年製作/アメリカ
原題または英題:The Noose
ストーリー
下町で素性の良くないカフェーを根城にしてる酒類密造の親分バック・ゴードンの養子ニッキー・エルキンスはこのカフェーで山の手の美しい令嬢フィリスと知り合いになって以来、両親が誰やら分らぬ自分がつくづく情けなくなり、またバックの悪ことの手助けをするのが厭はしくなって一日も早く汚れた社会から逃れたいと思った。そのことからバックと口論を始めた彼はバックの口から不図自分が探ね捜している生みの母が現在ではこの州の知事夫人になっていることを聞かされた。しかも驚いたことには彼女がかつてはバックと関係のあったことを種にバックは平然と悪事を重ねているのであった。ニッキーはともすれば母の地位を危うくしようとするバックを激しく憎み遂に争闘の末、母のために養父バックを射殺して了った。ニッキーはかくて法の栽きを受けねばならぬ身となった。そして彼は養父殺害の理由に関しては緘黙を守り死刑の宣告を甘受した。ニッキーの悪びれぬ様子は何人にも彼が恐らく正義の殺人を行ったに相違ないと思わせた。知事夫人を筆頭として市の婦人会の人々は助命運動を起した。ニッキーの弁護士は懸命になってニッキーの口を開かせようとした。死刑の前日彼を愛するカフェーの踊り子ドットが暇乞ひに来た時ニッキーは始めて彼女の愛を知った。若しもドットと結婚することが出来たら、と思わぬではなかったが今更母の破滅となるべきことを何うしてニッキーが言い得ようか。夫人の懇望により知事は自邸にニッキー召喚して自白せしめんとしたが母を見ることを得た彼の緘黙の決心は更に堅くなるばかりだった。知事は若者の顔を見て動かされ赦免し度く思ったがニッキーが緘黙を固執する以上如何ともせん術はなかった。死刑の前夜知事夫人はニッキーのために祈った。未明ニッキーが絞首台上の露たらんとする刹那知事邸からの電話は死刑中止を命じた。翌朝ニッキーの亡骸を貰い受けに来たドットは遠からずニッキーが赦免さるると聞いて何んなに嬉しがったことか、そして愛人を腕に、母を心に、抱くことを得る身となったニッキーのよろこび!
スタッフ・キャスト
- 監督
- ジョン・フランシス・ディロン
- 脚色
- ジェームズ・T・オドノヒュー
- 原作戯曲
- ウィラード・マック
- H・H・ヴァン・ローン
- 撮影
- ジェームズ・ヴァン・ツリース
受賞歴
第1回 アカデミー賞(1928年)
ノミネート
男優賞 | リチャード・バーセルメス |
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