巨象の大陸
劇場公開日:1972年5月13日
解説
地上最大の動物であるアフリカ象の知られざる生態を追って、広大な東アフリカのケ二ア、ウガンダ、タンザニア3カ国にまたがる大草原(サバンナ)に長期ロケを敢行し、きびしい生存競争の中で自然とみごとにバランスを保つ野生の世界をとらえた長編ドキュメンタリー。アフリカ象のなかでも、マンモスより大きいといわれる伝説の巨象アーメッドの雄姿が紹介される。製作はウィリアム・N・グラフと、モンティ・C・ルーベン、監督・撮影はかつてサファリ・ガイドだったサイモン・トレヴァー、音楽はローレンス・ローゼンタール、編集はアラン・L・ジャッグスがそれぞれ担当。日本では一部の劇場でスーパーシネラマ方式、超ステレオ音響で公開された。
1971年製作/62分/アメリカ
原題または英題:The African Elephant
配給:東和
劇場公開日:1972年5月13日
ストーリー
ここアフリカの大草原は野生動物の楽園で、さまざまな動物たちが自然のままの生活をしている。その中の王者は、もちろん地上で最も大きな身体を持つ象だ。ここは巨大なアフリカ象の天国でもある。そして、王者の象徴は、ケニア北部の霧深いマーサビッド山に住む巨象アーメッド。3000万年昔、この地にはステゴドンという象の祖先が棲息していたが、今日でもマーサビッド山は、その子孫たちの安全な隠れ家になっている。/一群の象の中に生まれたばかりの赤ちゃんがいた。象の妊娠期間は哺乳動物の中でも最も長く22カ月にわたる。誕生間もない象は、体重100キロ、身長83センチ。これから食物を求めて移動する家族と旅をするのだ。象は仲間意識が強く、病気の象も身体の不自由な象も、群れの仲間に守られながら安全に共同生活を営んでいる。そのリーダーは一番年かさのメス、つまりお婆さんだ。象の社会は母系で、メスが家族をリードしている。ライオンなどの危険な獣が近づくと赤ちゃんを守って追い払うのも母親たちの役目だ。/象はゆっくり成長するが、大きくなるにつれ、キバが生えてくる。これは2本の門歯が発達したもので、身分証明書のように、それぞれの象によって形が違う。キバが充分大きくなり、15歳くらいになると、オスの象は群れから離れる。オスは成人すると子供を作るとき以外、群れに戻らず、平原を放浪しながら悠然と暮らすのである。/さて、動物は水なしでは暮らせない。平原にはいくつかの水たまりがある。ここでも支配者は象だ。とはいえ、その支配の仕方は穏やかで他の動物を傷つけるようなことはしない。象は、いつも自然界の弱肉強食の争いから離れて暮らしている。また、象は1日に16時間以上も、食べることに費やしている。そして、食物を求めて1年に1万6000キロも旅をするという。よほど辛抱強く生まれついているらしい。その点では、ハシビロコウもいい勝負だ。気長に何時間も待ち伏せて魚を取る。/象は歩く、どこまでも……。地理学者のように正確にコースを定め、山越えをするときは、測量技師のように勾配やカーブを計算し、ジャングルを進むときは、鋭い臭覚を頼りに先に行った者に続く。こうして広大な土地を丸裸にしていくのだが、一方では古い草を刈り取ったり木の種を運んだりして、植林や種蒔きに貢献してもいるのだ。/やがて平原に乾期が訪れた。動物たちは水のある所を求めて大移動を開始する。象は乾期になると、奇妙な形をしたバオバブの木を食べ、水分を捕給する。だが、それだけでは充分ではないので、流れの消えた河床を掘って、砂の下の水を探して飲む。毎年のことなので、象はその場所を覚えているのだ。こうして水の不足を補いながら、雨が降るのをじっと待つ。/雨はある日突然降り出す。大地を潤す水の恵み。水たまりも充分潤った。仔象たちは嬉々として水と戯れている。ところがある日、象の群れは、水たまりの中で仲間の骨を見つけた。/象の生涯はおよそ70年、6回生え変わった4本の奥歯がすり減ると死が待っている。象に死場所があるとすれぱ、この水たまり以外にない。だが象牙が山とある墓場などは、どこにもない。象の家族が仲間の骨を1本ずつどこかへ隠してしまうからだ。最後に牙が拾われると、死んだ象の骨はすっかりかたずけられてしまう。/こうして超然と自然の法則に従いながら、象たちは広大な平原で暮らしている。穏やかでたくましく、王者の気品に溢れた彼らの象徴、それは神秘の山マーサビッドに、今もひとりで住んでいる巨象アーメッドだ。巨象の大陸アフリカ、その偉大なる王者アーメッドは地上の平和を呼びかけながら今日も生きている。
スタッフ・キャスト
- 監督
- シモン・トレバー
- 製作
- ウィリアム・N・グラフ
- モンティ・C・ルーベン
- 撮影
- シモン・トレバー
- 音楽
- ローレンス・ローゼンタール
- 編集
- アラン・L・ジャッグス
- 字幕
- 鈴木健二
受賞歴
第29回 ゴールデングローブ賞(1972年)
ノミネート
最優秀主題歌賞 |
---|