愛に叛く者

解説

「ロマンス」「インスピレーション」と同じくクラレス・ブラウンが監督作品。ストーリーは「チャンプ(1931)」「秘密の6」のフランセス・マリオンが組み立てたもので「チャンプ」「運命の兄弟」のレオナルド・プラスキンスがシナリオ化し、「パリの魔人」「ニュー・ムーン」のオリバー・T・マーシュがクランクした。出演者の顔ぶれは「陽気なママさん」「惨劇の波止場」のマリー・ドレッスラー、「乗合馬車」「海底二千尺」のリチャード・クロムウェル、「あけぼの」「パリの魔人」のジーン・ハーショルト、「大西洋横断」のパーネル・プラット、バーバラ・ケントなどである。

1932年製作/アメリカ
原題または英題:Emma

ストーリー

エンマ(マリー・ドレッスラー)は発明家スミス(ジーン・ハーショルト)の家庭のお手伝いであったが、スミス夫人の産後の日立ちが悪く、生まれたばかりのロニーを残して死んでから、彼女はスミスの子供等を自分の子供の如く可愛がって養育した。とりわけ末っ子のロニーに対しては眼に入れても痛くないような可愛がりかただった。スミスは自分の発明したものが世間の好評を博すとともに、一躍百万長者となった。それと同時に子供等は昔を忘れ、社交界に出入りするようになる。以前のつつましさに比べ、この頃の生活ぶりの何というケバケバしさ。中には名門に憧れるあまりフランスの某伯爵を良人に迎える娘さえあった。エンマは、最近スミスが心臓を病って床にふせっているので看病しているが、極度の疲労のため過去30年来はじめての休暇を得た。彼女の出発に際して、スミスは彼女なくしては将来も案じられ、かつては彼女を愛していたので、エンマ自身の反対を押し切って結婚。新婚旅行にナイアガラへ遊ぶこととなった。が、二人のこの結婚は社交界に野心を持つ子供等にとっては、晴天の霹靂ともいうべきものであった。彼らはこぞってこれに不賛成を唱えた。喜んでくれたのはただロニー(リチャード・クロムウェル)ひとりだけであった。しかもなお悪いことに、二人の楽しかるべき新婚旅行は哀しい結果をもたらした。スミスは心臓麻痺を起こして、不帰の客となったのである。遺言状によれば、子供等に対する遺言の配分は彼女の意思に依るとある。子供等は、これまでのエンマの恩愛を忘れ、たちまち彼女に非難の声を浴びせた。そればかりかこの遺言状を無効にするため、父親が彼女の手にかかって毒殺されたのだとあらぬ噂を立てた。エンマは法廷に引き出され、身に覚えのない罪の申し開きをせねばならなかった。飛行術を習得するために町を離れていたロニーは、これを知って飛行機を飛ばせて彼女の許に駆けつけたが、不幸にも飛行機は墜落してロニーは死んでしまう。しかしこの時、ようよう彼女の潔白は証明された。はじめて自分等の非を悟った子供等は、騒然としてエンマに詫び是非一緒に生活してくれと懇願する。が、深く心中に決するところあるエンマは、遺産すべてを彼らに分配し、己れに適する仕事口を求めながら、淋しくスミス家を去って行った。

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