アメリカの悲劇

解説

現在のアメリカ文壇に重きをなすセオドア・ドライザーが代表作の同名小説を映画化したもので脚色には、ハリウッド在住の詩人サミュエル・ホッフェンシュタインが当たり、監督は「モロッコ」「間諜X27」のジョセフ・フォン・スタンバーグが受け持った。主演者は「悪魔の日曜日」「盗まれた天国」のフィリップス・ホームズ、「市街」のシルヴィア・シドニー。助演者として「巴里選手」「恋とお月様」のフランセス・ディー、「愛する権利(1930)」のアーヴィング・ピチュル、クレア・マクドウェル、ルシル・ラ・ヴァーン、フレデリック・バートン、ウォーレス・ミドルトン、その他が出演。撮影を「市街」「間諜X27」のリー・ガームスが担当している。

1931年製作/アメリカ
原題または英題:An American Tragety

ストーリー

クライド・グリフィスはカンサス市の貧しい伝導師の子として生い育った。貧かったがゆえに彼は早くより自分の生計をたてねばならなかった。あるホテルのベル・ボーイとして働いているなか、上流社会の華麗な生活を日ごと見聞するにつれて彼はつくづく身のまずしさがいやになった。上流社会ーそこには女があり、恋のロマンスがある。と夜ごとに沸き立つクライドの野心は、けれどやはり若干のサービス料を握った彼の夢に過ぎなかった。満たされない者の寂しさ、ベッドの垢の冷たさ、彼はこの寂しさを売笑婦のもとに追いやって不良青年がたどる道を彼もたどって行った。ふとした事件から、クライドはカンサス市を逃げ出さねばならぬハメになったが、偶然にも叔父のサミュエル・グリフィスに助けられて叔父のカラー工場で働くことになった。サミュエル叔父はライカーガスでも屈指の財産家だった。クライドは叔父の許で働く一方、叔父の家庭に足を踏み入れる機会が多かった。そしてクライドがそこに見いだしたものは常に夢想していた上流社会の生活である。殊にこの社会の女サンドラが彼に愛を捧げるようになってからはパーティーや遠乗りの楽しさがクライドには忘れられなかった。クライドもサンドラを愛していたが、それでいて今一歩踏み越せない何ものかがあった。彼はそれを見極めようとしてこの半ば満たされた現在でありながら焦慮と憂鬱に悩まされた。ある日、叔父の工場に1人の女工が雇われた。純情な女工ロバータとクライドは一目会ってからお互いに恋に落ちた。ことにクライドはサンドラに対する自分の満たされたい青春をロバータに打ちまけていった。貧しかったが故に心の相寄った2人には盲目的な溺愛の日が続いた。やがてロバータに幸福が訪れた。彼女はクライドの胤を宿したのだった。そしてクライドに結婚を申し込んだ。今となっては事を解決する方法はロバータと結婚する他に道がない。それだのにクライドはサンドラを思い自分の身分を考え、ロバータと結婚する勇気もなくかえってロバータを自分から退けようと考えた。ある日巧妙な殺人事件を報じた新聞をふと見たクライドは今の自分の悩みを救う為に無分別な計画をたてた。やがて2人は人里遠く離れた山中の湖に出かけて行った。ロバータは初めてクライドの殺意を知って驚き悲しんだ。クライドはロバートの可憐な哀願を聞いては、ともすると心がぐらついた。が、彼は遂にロバータを殺してしまった。彼女が泳げないことを知っていた彼はボートを転覆させてロバータを湖の底に沈めてしまった。そしてサンドラの愛を求めて彼女のもとに走った。が、間もなく彼はサンドラの盛大なパーティーの半ばに検挙された。証拠抹消を企てたはずだったのに、十分な証拠のためにクライドはすべてを自白した。法は彼を殺人罪として遂に死刑を宣告した。人を救い人を善に導くべく努めていた伝導師がわが子を罪から救い得ず、善導できなかった愚かさを悲しんでクライドの母が紙に祈りを捧げる声を聞きながらクライドは静かに絞首台へ上っていった。

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