「思ったよりも、深いテーマです」エリジウム 勝手な評論家さんの映画レビュー(感想・評価)
思ったよりも、深いテーマです
『第9地区(District 9)』のニール・ブロムカンプの作品。
『第9地区(District 9)』でも、安全で快適な生活をしている地球人と、不衛生で危険な生活をしている難民の異星人という格差が描かれていましたが、この作品でも、安全で快適なエリジウムに暮らす超富裕層と不衛生で不快な地球に暮らす貧困層と言う格差が描かれています。超富裕層が地球を捨てて宇宙で暮らすというのは、言ってみると、問題を金で解決したということなんでしょうね。それにしても、何でもかんでもあっという間に治癒してしまうという技術は凄い!
地球の主な舞台は、ロスアンゼルス付近という設定になっています。それが故か、英語のみならず、少なからずスペイン語もセリフに混ざってきています。今でさえ、アメリカはヒスパニック系の人たちがたくさん居て、所によっては、英語ではなくスペイン語が幅を利かせているところがありますが、それは行き着くところまで行き着いた結果ということなんでしょう。ただ、地球からエリジウムに向かう宇宙船にチラリと南アフリカの国旗が描かれていましたね。監督の母国愛と言うことなんでしょう。
最初、貧困に喘ぐ人たちの、単純な武装闘争かと思っていたんですが、そう単純な話では無かったんですね。クールに策略を巡らすジョディ・フォスターが、中々怖いです。
ちょっと突っ込みたくなるのが、武器と輸送手段。上記にも記しましたが、簡単なスキャニングで病気を診断すると同時に、ありとあらゆる病気をそのまま直してしまうという恐ろしいほどまでに素晴らしい技術があるのに、人間が移動するには、旧態依然としたシャトル。転送装置くらい実現していてもいいような気がします。あと、武器。これも、現代のような形で、しかも、威力は非常に強いものの普通に弾薬を使う銃器って、ねぇ。治療装置への一点豪華主義なんでしょうか?
あと不思議なのが、エリジウムの構造。形は、2001年宇宙の旅で描かれるようなコロニーの形状なんですが、内側に壁がない?画期的ですね。回転による遠心力で、大気組成物をコロニーに引き留めておくという思想なんでしょうね。でも、あの程度の回転速度で、大気組成物を留めておけるほどの遠心力が働くんでしょうか?
もう一つ不思議なのが、地球から飛びだったシャトルを撃墜するのに、わざわざ地球からミサイルを撃っていること。これは、外れた場合にエリジウムに当ってしまう可能性があるので、合理的でないですし、危険だと思います。なんで、エリジウムから迎撃しないんでしょうね?
若干突っ込むところはありますが、意外に奥が深いテーマを描いている映画だと思いました。単純な、ドンドンぱちぱち映画ではありません。