劇場公開日 2012年10月6日

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「生命が繋がっていると信じられる究極のヒーリングムービー」ツナグ Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5生命が繋がっていると信じられる究極のヒーリングムービー

2012年10月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

生きている者は誰でも必ず何時の日か、愛する人と別れ、この世を去らなくてはならない旅立ちの日が巡って来る、そして死んだ者が住む世界は本当に存在しているのだろうか?と言う、死と生の二つの世界はどう繋がっていて、どの様に存在しているのだろうか?と言う人間の根源的なこの疑問への問いかけからこの物語は始まる。
その疑問へのナビゲーター役として、生者と死者の間を取り持つ役目の使者の存在をツナグと呼び、この都市伝説の次期ツナグを受け継ぐ筈の渋谷歩美(松坂)のナレーションでゆっくりとこの作品は進行するのだが、人の死と言う重いテーマを扱ってはいるのだが、それでいて本作は1つも重苦しさを感じさせないばかりか、むしろ大人のファンタジー映画と呼べる夢を感じさせる作品と言っても良い。それ故に本映画を観賞する時は、映像作品として、その出来栄えが素晴らしいか、或いは不出来かなどと捉えて観るよりは、仲代達也演じる秋山のセリフにあるように、心で観る、感じて観ると言う感性で捉えなければ、この作品は結構穴だらけの、突っ込み処満載の映画に見えてしまうと言う事も場合によっては有るだろう。これは、原作である物語が描く世界が証明不可能な死後の世界が存在すると言う仮設を前提に描いている為に陥ってしまう、欠点とも言えるのだ。
しかし私は、個人的に、このタイプの映画は大好物なので、ポイントは高得点を付けてしまうのだ。タイムトラベラー物や、異次元世界物を扱っている映画好きにはきっと美味しい映画だと私は思う。
例えて言うなら、大林監督の「異人たちの夏」を始めとして「MAKOTO」や、洋画では、「ゴースト」や「オールウェイズ」「シックスセンス」などの作品だ。
そしてこの映画の良さは、きっと映画を観ている観客自身の実人生で、死別した人がいる場合に、その亡くなった人と生活した日々を思い起こし、改めて死別した人を偲ぶ気持ちを惹き出してくれる処に、この作品の良さを感じるに違いない。
そして、故人に思いを馳せる事が出来たなら、この映画の存在価値が有ると思うのだ。
私も、父と言い争い、その2日後に父が他界した為に、父と和解出来ずに別れてしまった事が、今も心残りであるのだが、きっと私と同様に、この作品を通じて観客の皆が、それぞれに、亡き者との対話を心の中で行うことが出来たと私は思うのだが、この映画はそれだけで、作品の制作意図を果たした事になると思うのだが、あなたは、どう感じるだろうか?それと映画のレビュー評価は別ものと考える方もきっとおられるだろう。
しかし、例え映画の中の世界であったとしても、死後は何も残らずに無くなってしまい、死んだらもう、それで一巻の終わりと考えるよりは、科学的に決して証明する事が出来なかったとしても、人間の根源である魂と言う存在だけは永遠に生き残り、魂としてまた新しい別の世界での生活が存在すると考えて生きていた方が心が軽くなり、生活が楽になると言うものだ。そんな夢の世界を見せてくれる事に確かさと、重みを感じさせる事が出来たのは、仲代達矢、樹木希林、八千草薫の名演が有るからこそ実感出来る事だ。そして真実の正当性と言う事よりも、人が愛すること、そして愛する人を信じる事、その大切さは何時の日も、死後も決して変わらない事を伝えてくれるから夢の有る秀作と言えるのだ!

ryuu topiann