「なんだかなあ」そして父になる 全沢曲樹さんの映画レビュー(感想・評価)
なんだかなあ
この映画のような事態が実際に起こったとしても、ちょっとこの映画のような展開を辿るとは考え難い。
こういう法的にも微妙な問題を含み、かつ弁護士もそれなりに重要なポジションも与えられているストーリーであれば、リーガル面をあんまりおろそかにされると全体的なリアリティを大いに損ねることにもなる。
この映画ではその辺のリアリティが露ほども感じられなかったのは残念であった。
こういったケースに巻き込まれた場合、まず病院側から一定の慰謝料を提示したうえで、被害者側もそういった金銭面での補償も支えにしながら、家族をどう建て直していくかが焦点となる。そもそもリリー・フランキーなどのっけのシーンからどれだけ搾り取れるかに、並々ならぬ関心を抱いていたではないか。また、福山が二人共引き取れないか?などと考えたのもその辺の補償を差し出すことなども想定されていてしかるべきであるが、映画ではそういったサイドストーリーは全く眼中に入れられていない。
ところがそれにもかかわらず、映画中盤で唐突に裁判所でのシーンが描かれる。これはストーリー上重要なシーンではあるが、そもそもこの裁判がなんの目的で、何を裁くために行われたのか、観客にはさっぱりわからない。
通常この手の裁判が開かれるのは病院側と被害者側で条件面での折り合いがつかず、紛糾した場合であろうが、そもそも条件面でどう、といった交渉などそれまで映画のどこにも登場していないし、単に病院側から事件の原因がわかったので当事者から説明させることを企図しているのなら、わざわざ裁判所で行う必要はまったくない。(当然刑事事件としては時効が成立しているということなので、検察から起訴されて、ということでもないだろう)
そもそもこの映画の制作スタッフは裁判には刑事と民事があるということすらわかっているのかどうか。
いかに刑事事件としては時効だろうが、民事消滅時効は損害発生が認識されて初めて起算されるため、本件では絶対に時効が成立ということはなく、故意に赤ん坊の取り違えを行った看護師は莫大な慰謝料を請求されて然るべきであるが、そのへんも全くスルーである。
ラスト近くで福山がくだんの看護師を訪うある程度重要なシーンがあるが、その点を考慮すると、あんなものは茶番にすらならないのではと思われる。
ミステリー小説ではないので、そこまでの検証が必要かと思われる方も多いとは思うが、やはり最低限のところは押さえておいてもらわないと、人によっては安心してみることができない、ということも少しで良いから制作者側にはご理解いただきたいものである。
丁寧なコメント、ありがとうございました。
「オ―マイガー」の件で、育ちの悪いガキが・・・、という一文がありましたが、なるほど、そういう見方もあるのか、と思いました。実は私は、リリー・フランキ―が育てた子供、琉晴を演じた子供が在日韓国人であることから、インターナショナルスクールへ通っていて、話す日本語に若干、難があるのではないのか、と勘繰っていたのです。また、レビューには敢えて書きませんでしたが、是枝監督は何故、在日韓国人の子役を起用したのかよく判りませんでした。やはり、嘘臭い日韓友好のためなのでしょうか。それとも、芸能界の大人の事情なのでしょうか。日本人の子役にもいい人材はいる筈ですよね。