ー ご存じの通り、今作の邦画のリメイク版が横浜流星さんと吉高由里子さんのW主演の「君の瞳が問いかけている」であり、今作のモチーフになった作品は、彼のチャールズ・チャップリンの「街の灯」である。
今作は久方ぶりに鑑賞したが、私の脳裏を過るのは、優れたる映画が波及していく”正の連鎖”という言葉である。
私は、優れた作品のリメイク版を”オリジナルの良さが活かされていない。”と否定するスタンスは余り好きではなく、リメイクの良さを見るようにしている。
故に、「君の瞳が問いかけている」を劇場で鑑賞した際には、感動し、涙したモノである。-
■ボクサーとしてチャンピオンになった経験を持つも、暗い過去から心を閉ざしているチョルミン(ソ・ジソブ)。
ある日彼は、目が不自由ながらも明るく美しい女性・ハ・ジョンファ(ハン・ヒョジュ)と出会う。
徐々に惹かれあう2人だったが、彼女の視力を奪った事故にチョルミンが関係していたことが分かり、チョルミンは身の危険を冒してでも彼女の角膜手術を行う費用を稼ぐために危険な非合法な試合に臨むのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作の内容は巷間に流布していると思われるので、詳細は記さない。
だが、久方ぶりに鑑賞すると、邦画の監督を担当した恋愛映画の旗手、三木孝浩監督は今作にかなり従順に映画を製作した事が分かる。
但し、三木監督成のオリジナリティーもしっかりと描いていたのだな、とも分かる。
・夢を失った男チョルミンと、男の為に視力を失った女ハ・ジョンファとの出会い。
ー ハ・ジョンファは覇気のないチョルミンを”オジサン”と呼ぶが、徐々に彼の優しさに惹かれていくのである。-
■チョルミンを演じたソ・ジソブの哀しみや厭世観を漂わせた演技に魅せられる。
だが、彼は且つて自分が犯した罪により、何ら罪のないハ・ジョンファの視力を奪ってしまった事に気付き、深い後悔と共に、危険な行動に出るのである。
そして、彼は下半身が不自由になりながらも、ハ・ジョンファの角膜手術の資金を稼ぎ、社会復帰した彼女の海岸の店を訪れ、”土産品”を一つだけ買って去るのである。
それに気づいたハ・ジョンファは、彼を追い点字が記された机の前で”おじさん・。”と呼び二人は強く抱擁するのである。
<再度記すが、今作は名作「街の灯」をモチーフとして製作され、この作品に感化された三木監督の「君の瞳が問いかけている」が制作されたのである。
正に、映画の正の連鎖である。
どの作品も秀作である。
それは、映画製作陣のこの一連の作品に対する深い敬愛と、映画魂が齎したモノだと私は思っているのである。>