死刑弁護人

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死刑弁護人

解説

オウム真理教事件の麻原彰晃、和歌山毒カレー事件の林眞須美、名古屋女子大生誘拐事件の木村修治、光市母子殺害事件の元少年ら、死刑判決を受けた重大事件の被告人の弁護を引き受けてきた安田好弘弁護士を追ったドキュメンタリー。重犯罪の加害者を弁護することで世間からバッシングも受け、さまざまな負の感情が交錯する渦中で苦悩することになっても弁護を引き受ける安田弁護士。その活動や生き様を通して、司法制度のあり方を問う。「平成ジレンマ」「青空どろぼう」など、社会問題を取り上げたドキュメンタリーを多数手がけていた東海テレビが制作。

2012年製作/97分/日本
配給:東海テレビ放送
劇場公開日:2012年6月30日

スタッフ・キャスト

監督
プロデューサー
阿武野勝彦
撮影
岩井彰彦
音楽
村井秀清
編集
山本哲二
ナレーション
山本太郎
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(C)東海テレビ放送

映画レビュー

4.0究極の弁護士

2019年12月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2012年という、少し前の作品である。
自分は今まで、安田弁護士のことを知らなかったが、映画館はほぼ満席で、関心の高さを伺わせた。

一言で「死刑弁護人」と言っても、様々なケースがあって、事案は決して同じではなかった。
自らの罪を認めていながら、不幸な生い立ちと、死刑廃止を訴える死刑囚。
死にたいと語る、“心身喪失”気味の無期懲役囚。
弟子に犯罪を命令したことを否認する、新興宗教団体のボスの死刑囚。
詐欺師ではあるが、殺人は否認する死刑囚。
マスコミの報道“だけ”見れば、決して“弁護に値しない”被告たちである。

安田弁護士は、映画の時点で、刑事・民事合わせて50件以上を抱えていたが、そのうち8件が死刑案件だという。
“真理”や“司法の正義”や“人権”を求めるのであれば、死刑案件である必要はない。
「新宿西口バス放火事件」では、頼まれてもいないのに、自ら出かけていったらしい。
もはや「反権力」の領域すらも超えた弁護活動だ。

活動の根本には、「死刑廃止」の思想があるようだ。
それが実現できないから、“次善手段”として、死刑にさせないように法的に抵抗しているように見える。
だから、冤罪や“更生”の可能性は無いと言っていい、オウム事件の麻原彰晃でさえ、弁護の対象となる。
「(麻原は)自分はやっていないと言い続けたから」と。しかし、安田弁護士自身、どれだけ麻原の言葉を信じていたのだろうか?

最後まで観て、「光市母子殺害事件」に限らず、「死刑廃止」のために活動していると批判されても仕方ないところがあるように思わざるを得なかった。
冤罪の疑いのあるケースは別として、(特に死刑判決を望む)被害者の遺族にとっては、たまったものではないだろう。
しかしその一方で、誰もが見放すような案件にも敢然と立ち向かって、単純な善悪を超えた“法による最後の砦”として活動している姿には、敬意を払わざるを得ない。
「和歌山毒カレー事件」の林眞須美被告は書く、「日本には先生しかいません」と。

このドキュメンタリーは、そういう“究極の弁護士”の姿を、克明にとらえている。
結論は、観る者に委ねられている。

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Imperator

3.0弁護士の仕事

2019年11月1日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

死刑事案ばかりを担当する弁護士、安田好弘氏の仕事を追う。
オウム事件、毒カレー事件、名古屋女子大生誘拐殺人事件、光市母子殺人事件、新宿西口バス放火事件など有名な事件ばかりを担当する。
死刑制度反対論者だが弁護にはそんなことは持ち出さない。
100%被告の利益となるような弁護士はそんなに居ないような気がする。

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いやよセブン

3.5勇気ある試みは意義があるけど、応援はしたくない

2016年10月17日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

一見、スティーブン・セガールあたりが大暴れしそうなB級アクションを想像しがちなタイトルに反し、中身は真逆のガチガチの社会派ドキュメンタリー映画である。

主に凶悪事件の被疑者の弁護を担当し、死刑を回避させようと奮闘する弁護士・安田好弘の活動を膨大な記録とインタビューを交えて取材している。

和歌山毒入りカレー事件、新宿西口バス放火事件、オウム真理教事件、光市母子殺害事件etc.etc.どれも多くの人命が奪われた残虐な事件ばかりで、胸が痛くなるが、毎回、記者会見に冷静な語り口で臨む安田氏の言動に以前から興味があり、劇場に出掛けた

人を人とも思わない稀に見る凶悪事件の容疑者の無実を訴える姿は、“悪魔の弁護人”と呼ばれても致し方ない。

バッシングを受けようが、死刑反対を叫び続けるブレない闘志は、罪の深さを理解したうえで、マスコミや検察の巨大権力への強烈な反骨精神から生まれている。

全ての情報を鵜呑みに先走った感情論で死刑を求める大衆へのアンチテーゼとも云える。

なぜ犯人はこんな惨い凶行に走ったのか?環境や背景に目を向けようとしないのか。
加害者を断罪をすれば全て解決できるのか?
真実は他にもあるのではないか?
etc.etc.事件に対する可能性を命懸けで1人1人に問いている。

林真須美はカレー鍋に砒素を入れたのか?
麻原彰晃は全ての事件を指揮していたのか?
元少年は母子に殺意を持っていたのか?

自分自身も逮捕され、満身創痍になりながらも、
“本当にそれで正しいのか?”
常にクエスチョンを投げかける生き様は、矛盾も多いが、公平な司法を維持するうえでとても必要な存在なのかもしれない。

しかし、死刑を求める光市母子殺害事件の父親を見ると、
被害者には
「そんなもん関係ねぇよ」と一蹴されてオシマイだろう。

絶対に同情されない運命である。

タイガー・ジェット・シンのように、安田氏がヒールで有り続けていく意味を理解するには、あとどれほど命が犠牲にならなければならないのか…。

事件の渦に巻き込まれなければ、答えは絶対に解らないだろう。

アメブロを覗くと、インチキ細胞学者に
「こんなヤツ死刑だ」の声が殺到していた。

映画を観た直後ゆえか、
「そんな簡単に死刑、死刑言うなよ」と
苦い缶コーヒーを啜りながら思った。

では最後に短歌を一首

『裁かれし 命を護る 傷背負い 償いの渦 真実を問う』
by全竜

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全竜(3代目)