少年Hのレビュー・感想・評価
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何を我慢しとるか、はっきりしとったら我慢できる
映画「少年H」(降旗康男監督)から。
主人公の名は「肇」(はじめ)、
だから手編みのセーターには「H」の一文字。
サザエさんの弟、カツオの「K」と同じ感覚だった。(笑)
「たぶん、明日から『H』って呼ばれるわぁ」と
嘆いたシーンが妙に可笑しかった。
「H」を「エッチ」と読むか「エイチ」と読むか、
それは大きな違いのようにも感じたアルファベットである。
さて、気になる一言は、戦時中に父親が息子に語る台詞。
「自分がしっかりしてないと潰されてしまうで。
今、何が起きているのか、自分の目でよう見とくんや。
いろいろ我慢せなことがあるやろうけど、
何を我慢しとるか、はっきりしとったら我慢できる」
「戦争はいつか終わる。
その時に恥ずかしい人間になっとったらあかんよ」
何でもかんでも戦時中だから「我慢しろ」ではなく、
こんな時でも、息子に助言できる父親の静かな強さを見た。
また、戦時中ならではの台詞ではなく、
今の世の中でも立派に通用するアドバイスでもある。
何も説明なしに「我慢しろ」と言われるよりも、
何に対して我慢しているのか、説明することの大切さ、
意外と大事なことなのかもしれないな。
一見丁寧そうにに見えて、全体を漂うオシい感じ
若い世代にこそ見てほしい
劇場に入って一番驚いたのは平均年齢の高さ。
三連休初めの土曜、しかも映画の日だというのに
客はまばらで、お年寄りばかり。
オン・ザ・ロードのほうがほぼ満席だったため、
こちらも人が多いのかな?っと思っていので、
これはちょっと大丈夫なんだろうか?っと不安に…。
映画自体は戦争ものとしてはかなりライトな印象。
役者たちも戦時中の人間という印象よりは、
平成の人間が戦時中の教育を受けたかのような、
少し妙な違和感が拭えない印象がありました。
主人公の家族は、洋服を作って外国のお客さんと
親しくしていたり、キリスト教徒であったりと、
戦争中であれば、色々な困難に直面することが
わかりきっているため、その辺りの近所の住民や
周りの環境に関しても興味深く鑑賞させてもらいました。
戦争という状況は国民の1人がどんなに抗っても、
その大きな流れを変えることはできない。
周りの人間たちが「大日本帝国万歳!」っと、
政治やマスコミ、教育に流されていく中。
自身の信仰を意固地になって主張する母親や
世の中の不条理に対して困惑する子供に対して
世の中に無暗に逆らうのではなく、その流れをきちんと
自分の目で判断して、本当に守るべきものは何かを考え、
時には大切なものを守るために周りに合わせること。
周りに流されたり、周りのせいにするのではなく、
きちんと自分の言動に責任を持つことを教えます。
戦時の学生教育、思想犯等に対する特高の圧力。
自由に物事を考えることも制限され、
理不尽な暴力に対して訴えることもできず、
「戦争に勝つために」の一言の元に、
自由な思想も生き方も弾圧され続けた時代。
この作品はどちらかというとそういった
時代に対して、どのように自分という
人間性を守り、自己を貫いていくのか。
そういうことを強く何度も訴えかけてきます。
反面、誰もが間違っていると感じていても
目を逸らし、耳を塞ぎ、自分を騙している事に対し、
おかしいじゃないか!っと思わず口に出してしまう
そんなH少年に対して、社会に流されている人々は
世論を盾に容赦のない暴力や弾圧を行おうとしていく。
今の時代には当たり前のように許されている言動が
こんな風に弾圧されていた時代もあった。
劇場で作品を見ながら、自分が同じ状況であれば
どんな風に対処すればいいのだろうか?
どういう風に立ち回るべきなのか。
焼夷弾の雨の中、どうしたら逃げれるのか。
周りの人の考え方、思想、行動それらを見ながら
自分ならどうするか?そんなことを考えながら、
ずっと作品を見ていました。
ネットが普及して自由な発言や思想が飛び交う中、
ネトウヨ、ネトサヨなんて言葉が流行り始め、
原発デモや反韓、マスコミ叩きなんて行為に
熱中している人が多い昨今。
この映画を見て、実際の日本の戦犯は!
日本の戦争に対する思想は~、実際には~
等とがなり立てる情けない人も多いでしょう。
こんなに自由な言動の許された社会の中で、
ネットの知識や周りの声に流されて、
周りの目ばかりを気にして勝ち負けばかり、
そんなものを気にする情けない大人達。
そんな大人を見ながら育って、
身内だけのノリを平然と全国に晒して、
物事の善し悪しすらしっかりと図れない、
そしてその悪事をまともに叱っても貰えない子供たち。
戦争とネット、状況は変わっても、
海に漂う海藻のように周りの声や考えに
安易に流されて、そんな矮小な自分に満足して、
斜に構えて生きている人々。
こんなに恵まれた世の中に居ながら、
恵まれてしまっているが故に
ハングリー精神に欠落し、自己正当化と、
自己肯定しかしようとしない人々。
わざわざ与えられた自由に対して、
自ら制限と檻を作って自分を守る。
行きたくもない戦争に連行され、
自分の信念を持って反戦を訴えれば、
拷問され、非難され、最前線に送られ殺された、
そんな自由すら叫べなかった人々は、
戦争が終わった途端に手のひらを返し、
「僕らは戦争は間違っていたと思う」
「戦争は二度と起こしてはいけないものだ」
「僕らは弾圧されていて自由な発言すら許されなかった」
っと訴える人々をみて何を思うのか。
今の情けない現代人を見て、一体何を思うのか。
H少年から見て現代人はどんな風にうつるのか。
映画や作品というのは、その情景や状況を見て、
誰かに思想を押し付けられるのではなく、
色んな思想を見ながら、
自分で物事を考えることができる。
大人や教師達が教えてくれない、
貴重な自分で感じ、調べ、考え、
学びとることができる文化です。
この映画は"自分で考える"ということを、
しっかりと伝えようと何度も何度も、
その点を繰り返し伝えてきます。
それは父親の言葉だけではない、
母親のまなざしであったり、
好戦家の理不尽な暴力であったり、
思想に染まった人々の理不尽であったり。
その全てが「自分で考える」大切さを、
何度何度も問いかけてくる作品です。
だからこそ、この作品は小中高生を
割引にしてもらって、
もっと沢山の人に見て貰いたいなっと思う。
そういう作品でした。
戦争ものとしてはやっぱりライトですし、
ちょっと当時としては言動等も含めて
人間性に対する考えはちょっと甘い面も
強くて、違和感があるのは否めませんし。
水谷豊という役者の印象が、
相棒の印象が強く、色々裏事情も聞いているため
やっぱりちょっと胡散臭い感じは否めませんが(苦笑)
そういう意味でも、戦争を考える為の
入門編的な映画としては最適ではないかなっと。
逆に大人でこの映画に満足してしまうのは、
ちょっといくらなんでも…っと思ってしまう面もあります(^^;
でも、こういう戦争映画は毎年
子供向けに流れる風潮ができるといいですね。
戦争を知っている世代がどんどん減って行っている今。
学校等でもそういった歴史を考える時間は
どんどん減っているようですし。
毎年、この時期になるとやって欲しい、映画です。
素晴らしい作品
国民に対する国の責任
筆舌に尽くしがたい苦難に陥れ、価値観の混同を強いられた国民に対して、国は国民を見捨てたという事実を、少年Hの行動を通して目の当たりにしました。
終戦の時は私は1歳で、戦争の記憶はありませんが、親や兄弟姉妹から悲惨な話を聞かされ、防空壕はあちこに残っていたし、傷痍軍人の姿もたくさん見ました。
戦争は間接体験していると思っていたのですが、主人公の家族が空襲に逃げ惑う姿、そして戦後の混乱の映像を通して、リアルに戦争の悲惨さを再確認しました。
国債は紙切れ同様になったことは聞かされていましたが、筆舌に尽くし難い無責任な、恥ずべき行動を国が取ったのだという事実を見つめさせられました。見終わった後に、国に対する不信感と憤りを強く覚えました。
日本は見事に戦後の復興を遂げましたが、それは国民一人一人の努力と知恵があったからこそで、政治主導で復興したわけではないことをこの映画から学んだ気がします。
穏やかで理性的な作品
私がまだ若いころは、夏になれば東宝の「8.15シリーズ」を筆頭に戦争映画が上映されていた。この作品を戦争映画の範疇に入れていいものか分からないが、そういう色眼鏡を抜きにしても、当時の様子を描いて予想以上によくできた映画だと思う。
現人神天皇陛下をいただく神国日本が、その御稜威により大東亜共栄圏の盟主となり、西欧列強をも打ち倒して世界を善導すべしという、今から見れば狂気の沙汰のような選民思想に多くの国民がとりつかれていた当時にあって、父親の盛夫のようなリベラルな考えの人間は少なかっただろうし、肇少年の「この戦争はなんやったんや!」の叫びも後出しじゃんけんのような気もするが(当時の人々は戦争が終わったことに安心するか、敗戦を受け入れられず呆然とする人の方が多かったと思うので)、映画的には現代の視点を盛り込むことがあってもいいと思う。
盛夫が肇に言う「この戦争はいつか終わる。その時に恥ずかしい人間になっとったらあかんよ」は、実際には少しでも戦争に批判的な人々を「非国民」「売国奴」「国賊」と罵り弾圧しておきながら、終戦後「命令だったから」「戦争だから」「みんなもやっていたから」と言い訳して、手のひらを返したように占領軍(進駐軍)にすり寄った多くの人々に向けられたものだろう。
主人公一家を演じた4人を初めとする芸達者な俳優陣を揃えて、穏やかに理性的に当時の市民生活を描きながら、権力が肥大・暴走した時の恐ろしさや、その権力に無批判に従うことの罪を訴えかけてくる。
表現の自由より秩序の維持を優先する憲法改正案や、「はだしのゲン」の閲覧制限が取り沙汰される今日においてこそ、観ておくべき作品ではないだろうか。
悲愴感を感じさせない戦時下映画。
自分の頭で考え行動。
「終戦のエンペラー」ではイマイチだった方にお薦め。
とある少年の目線で庶民(でもないか)が描かれた作品。
これだけの情報を小学生~中学生が把握できるものか?と
やたら叩かれた原作本らしいが、軍国主義に突っ走っていく
日本を少年目線で的確に捉えている。
いつも一言余計なHは、まるで自分を観ているようである。
そういう奴は、やっぱりああやって叩かれたんだなぁ^^;
良い悪いの問題でなく、そうせざるを得なかった辛い時代。
皆がワカメになって(この表現がいい)あっちこっちへ流され
ユラユラと漂うしかなかった時代に生きていた。
戦後生まれで食う物に困る生活を経験していない自分には、
白米の貴重さはこういうところで真剣に学ぶしかないのだ。
ダイエット先行の若い世代にはもっともっとである。
妹尾河童のベストセラーで、何度もドラマ化されているので
原作をしっかり読んでいなくても(けっこう分厚い上下巻)
大凡のあらすじは知っていたのだが、やはり今回も泣けた。
主人公はもちろんHだが、やはりこの両親(特に父親)がいい。
育ちの良さは情操教育や思想に影響を与えるものだろうが、
とりわけH宅の当時の生活ぶりは一般宅とはかけ離れている。
こんな生活ぶりでは、後に大きく叩かれるだろうことが予測
できるだけに、こちらも観ていてだんだん辛くなってくるが、
スパイ容疑をかけられようとも(そもそもテイラーなんだから)
頑として意思を貫く父親像には感動を覚える。家族への配慮を
常に忘れず、息子への的確なアドバイスは明言となっていく。
戦後フヌケになった(Hにはそう見える)元軍人やら教師に加え、
自身の父親までも何も言わなくなった姿にHは不安を覚えるが、
どんな立派な人格者ですら根負けするほどの衝撃が敗戦後の
国民に与えられた消失感や空虚を見事に表現している。
隣人に白米を与え続ける母親に意見するHを、涙目で見つめる
母親の表情に涙がポロポロと零れた。クリスチャンでなくとも
マザーテレサは日本の至る所に存在していたのだと私は思う。
(一旦やったらクセになるで!には涙目で大笑い)
Hを演じた吉岡くんがとにかく素晴らしい(顔までソックリ)
自分が正しいと思うことを父親の方は声高には叫ばないが、
Hは常に真っ直ぐにモノを言う。それで何回も殴られる^^;
今ならやれDVだと言われて当然の大人から子供への暴力が
当時は歴然と行われていたし、拷問もかなりだったようだ。
(その辺りを手ぬるい描写に描き換えていないのが好印象)
それでも何度もモノを言い何度でも立ち上がるHに感動する。
あんな(暴力に頼らない)強さを子供の頃から持たせてやりたい。
自分の頭で考え行動できる人間になれ。当たり前のことだ。
厳しい母親も優しい父親も素直な妹も、皆素敵な家族だった。
的確に現実を把握するなんてことは、大人になった今でも
まったくできていないが、(私だって何回もワカメ化してる)
しかし、あらゆるフラフラやユラユラを経験したおかげで、
(これは言い訳だとしても)理解できたことがたくさんある。
バカげた社会だと思いながらもそこに身を置いている以上は、
生きていかねばならない責任が誰にでもあるのだ。
当時は中学を出たら自立する時代だったが、今じゃ40になっても
自立できない人が多いのはどうしてなんだろう。
こんな時こそHくんにビシッと一言、進言いただきたいよね。
(空襲と焼夷弾の爆発はリアルだった。ミシンって強いんだなぁ)
後味さわやか・・・・。
妹尾家はまだ幸せ
戦争へまっしぐらの暗雲立ちこめるなか、4人家族が体験する事柄を、とくに長男・肇の目を通して描かれる。
夫婦と男女一人ずつの子供の4人家族。今ならごく普通の家族だが、当時はかなり厳しい目に晒されたに違いない。
西洋文化への傾倒は反国精神の顕れと見られた時代に、仕事が洋服の仕立屋で顧客の多くが外国人、しかも家族でキリスト教会に通い、とくに妻・敏子は信仰が強い。この辺りは作品でも取り上げられるが、夫の盛夫が身体的な問題で徴兵を免れている点は多く語られていない。
これが本当の話なら、主を兵隊に取られない家族がいい気なもんだと陰口を叩かれたに違いない。
そうしてみると、戦争のなか生き抜いた家族、とくに正義感が強い少年・肇と可愛らしい妹・好子には好感が持てるものの、やけに先見の目がありワケ知り顔の父親像は違和感があり、全体が都合のいい作り話に見えてくる。
男手を取られず、戦時中も家族が揃っていた(一時、好子が疎開するが)妹尾家は、他人から見たら幸せだ。
私が子供の頃、親から聞いた話は当然のごとく父と母では内容が違う。父は日本を遥か遠く離れた戦地で、母は父親が軍人で残された母親とともに幼い妹や弟たちの面倒を見ながら戦争を乗り切った。周りの大人から聞いた話と比べても、この作品の内容はすごくぬるく感じる。
戦時中の日本人の殆どが、戦況の事実を知らされず、負けないと信じて一点だけを見て生きてきたのが、終戦を迎えた途端、憑き物が消えたように人々が生き方を変えていくラストは興味深い。
「風立ちぬ」では喫煙シーンの多さが問題になっているようだが、本作のように喫煙シーンがないのも不自然だ。昭和40年代ごろまでは、大人の男はタバコを吸うものであり、誰も体に悪いものだなんて思っていなかった。
考えさせられる戦争の悲惨さ
つい先日、終戦記念日を迎えました。
今年は中々終戦ドラマをやらないな…と、思っていたら、風立ちぬや此方の作品、これから上映予定の永遠のゼロ等、映画での題材が多いですね。
終戦の日のニュースのインタビューでは、若者が皆口を揃えて、今日が終戦記念日とは知らないと言っていたのが、記憶に新しいです。
そういう若者たちにも、是非とも観て頂きたい作品です。
たった6,70年前の日本。
何百年も前のことではないんです。
その日本は、こんなに閉息的で何が正しく、何が間違っているのか、分からない程の軍事洗脳で、僅か幼い中学生でもあんな訓練をしていたなんて…
中学生くらいの男の子が、あんなに悩み苦しみ、親であっても終戦直後は、いったい何のための戦争だったか分からない…
今の時代では全く想像できませんが、
このような時代がほんの数十年前に実際にあったとは、何とも言えない気持ちになりました。
私の祖父母が来年80。
終戦の頃は、丁度、主人公Hより弱冠年下の小学校高学年だったのでしょうか。
祖父は、満州開拓団へ、祖母は爆弾工場の近くに住んでいたため、空爆や空襲警報が怖かったと、戦時中や戦後の話はよく聞いていました。
祖父母たちがまだ子供だったころ、戦争とは、本当にあった現実なんだな…、こういう時代に祖父母は育ったんだ、と、想いを馳せて観ていました。
劇中の空爆のシーンは、とてもリアルでちょっと怖かったです。
水谷豊さん演じる父ちゃんの、戦争前と戦後のセリフがとても胸に響きました。
伏線で一番ジーンとくるシーンです。
相棒とは、また全然違ったお父さん役、とてもいい味出しています。
個人的には、奥さんの蘭ちゃんとのセリフの絡みやシーンをもっと見たかったような気もしますが、お二人とも良かったです。
少し前に、ジブリの風立ちぬを鑑賞しました。
風立ちぬは、アニメですし、戦闘シーンや惨い場面、戦争の黒い部分は余り描かれてはいなかったので、此方の作品と二作品観て、更に深く考えさせられた気がします。
平和な現代の日々に感謝すると共に、
このような時代があったことは決して忘れてはならない、決し繰り返してはならない、そう強く感じました。
戦後から震災から人々は立ち上がる…不死鳥のように
戦時下を生き抜いた家族の姿を綴った、妹尾河童の自伝的小説の映画化。
水谷豊と伊藤蘭の夫婦共演でも話題。
以前別の作品でも書いたが、今戦争映画を作る意義は反戦映画である事。リアルで激しい戦場シーンや戦争の勝ち負けなど無くてもいいというのが持論だ。
戦争で最も辛い思いをしたのは、一庶民。
自由も思想も制限され、家族や愛する人も失い、何もかも奪われる。
そんな庶民の姿を通じて、戦争の愚かさを訴える。
その点、本作はしっかりとした反戦映画になっていた。
慎ましくも明るい生活を送っていた妹尾一家にも戦争の影が忍び寄る。
慕っていたうどん屋の兄ちゃんがアカの容疑で捕まる。
元旅芸人のオトコ姉ちゃんは出兵後に脱走し自ら命を絶つ。
仕立て屋の仕事で外国人の顧客を持っていた父がスパイ容疑で拷問を受ける。
学校ではイジメに遭い、教官に目を付けられる。
不当で不条理。柔軟な生き方や考えを持っていたからこそ、逆に息苦しい生活を強いられた妹尾一家の姿は痛切だ。
水谷豊が真面目な仕立て屋の父を、伊藤蘭が博愛精神溢れるクリスチャンの母を、それぞれ好演。
タイトルの“少年H”こと肇少年を演じた吉岡竜輝が達者で脱帽。
「はだしのゲン」のように少年を主人公に据えて語られる。
好奇心旺盛な肇は戦争の素朴な疑問を父に問う。父は真摯に答える。
戦争から60数年経ち、戦争を知らない若者でも、すんなり見れる仕上がり。
ただ重苦しいだけではなく、家族の絆に心温まり、所々のユーモアに笑わせられる。
戦争は終わった。
が、肇はコロッと考えを変えた周囲に何とも言えぬ思いを抱く。多くの物を失い、父は抜け殻のような状態に。
これからどう生きていくべきか、何をしていいのか。
全てがひっくり返って戸惑いながらも、新しい時代への一歩を見出す。
ラストシーン、肇が書いた不死鳥の絵。
灰の中から何度でも蘇る不死鳥は、復興へのメッセージ。
それは戦後に限らず、あの震災からの復興にも被る。
反戦と平和への祈りと復興への希望。
終戦の時期の今、夏にこそ見て、感じて欲しい映画。
少年Hの家族は素晴らしいです!
感動
戦争を生きた家族の物語
何年か前に読んだ妹尾さんの作品はとても面白かった。戦争の中で疑問を感じながら生きる賢い少年、父親と母親の描かれ方も原作通りの気がする。父親が神戸の紳士服屋を経営している事でリベラルな考え方出来たし、母親はクリスチャン。その子のHが戦争に疑問を抱くのは必然。自分の生き方をしたいが父親に我慢も大切とか、人を思いやる気持ちが大切とか諭される。3月10日の東京大空襲は義母から聞いていたが、乳飲み子の夫をかかえ、電話ボックスで授乳したそうで、火が燃え盛る様子を見て大変な時代を生きたと理解できた。水谷さん夫婦は適役ですし、Hを演じた少年は利発な男の子だと思い、これも適役だと思いました。とても良い作品です。私の地域では帝国石油会社が有ったせいか今日は土崎空襲の日だと、亡くなった義父母から聞いています。アメリカが敗戦をうながす為にやったと思いますが何人も亡くなって悲惨なものだったそうです。悲しいだけでなく笑える所もあり、その時代を一生懸命生きた人たちの物語です。
押しつけないのが いい
あの時代に戦争なんて…と言うものなら非国民とされ、子供でも容赦なかったことでしょう。 父親としてただ押さえつけて従わせるのではなく、諭すように今の状況を伝え、信念は持ち続けることを教えた 強く優しい水谷さん演じる父親に感動しました
戦争から得られるものなんて何もない。戦争はしてはいけないものだと、みんなに思ってほしいです。
熱中時代(洋服屋編・消防士編)
まず『H』とは、主人公『肇』のイニシャルです。
お母さんがハイカラな方で、戦争直前の英語を使いづらい時代に、『H』の大きな文字をセーターに入れていたのが凄かったです。
また、味噌汁も皿とスプーンで食べさせるような人で、お父さんは何事にも文句を言わない優しい人だったけど、少し引きぎみだった感じがしました。
妹尾一家はクリスチャンだったのも関係あるかも知れませんが、お父さんが当時としては、とてもグローバルな視点を持った方で、人格者でもあり、中学生のHに、「戦争が終わった時、恥ずかしい大人になってたらあかんよ。戦争に流されずに、よく考えて行動せんといかんよ」と教育していました。
それと、自分は関西人じゃないので、自分の息子に語る時、名前で呼ばずに、「あんた」で始めるのには凄い違和感を感じました。
主役の少年Hより、お父さんの存在の方が大きな映画でした。
大笑いするシーンもあり、戦争中、消防員となったお父さんの放水訓練のシーンは凄いです。
印象深かったのは、バケツリレーで防火訓練していても、本当の火事になったら、みんな逃げてしまい訓練が無駄だった事です。
全46件中、21~40件目を表示