劇場公開日 2012年9月28日

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エージェント・マロリー : 映画評論・批評

2012年9月11日更新

2012年9月28日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにてロードショー

カラーノがいなければ使えない手法。ソダーバーグが映画小僧に戻っている

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モニカ・ビッティではなくてパム・グリアだ。「唇からナイフ」のモデスティ・ブレーズよりも、やはりフォクシー・ブラウンやコフィーを思い出す。ララ・クロフトを演じたアンジェリーナ・ジョリーやキャット・ウーマンに扮したアン・ハサウェイに飛躍する人もいるだろうが、それほどフェティッシュの匂いはしない。なんといっても、人のよさそうな顔と、太腿のたくましさがグリアに近い。若いころのグリアはけっこう可愛かったのだ。

マロリー・ケインは秘密工作員だ。ただし、CIA直属ではなく、CIAに委嘱された民間企業と契約を結んで働いている。演じるのはジーナ・カラーノ。おっ、とつぶやく人もいるだろうが、カラーノは総合格闘技の女王だ。つまり、身体は素晴らしくよく動く。走れるし、跳べるし、銃は扱えるし、車の運転は巧いし、なによりも肉弾戦の実技がちがう。ここはグリアも敵わない。

そんなマロリーが、各地を転戦する。冒頭に出てくるのは、元恋人にニューヨーク州北部の地味なダイナーで襲われる場面だが、映画はそこからフラッシュバックに入る。バルセロナでは追跡劇が演じられ、ダブリンでは逃走劇が展開される。

どちらの場面も、長まわしの撮影やロングショットが効果を上げる。そう、筋力と心肺機能と体技がちがうのだ。カラーノという素材を得なければ不可能な手法だが、監督のソダーバーグは、新しいおもちゃを手に入れた子供のように楽しそうだ。例によって、撮影=ピーター・アンドリュース、編集=メアリー=アン・バーナード(笑)の変名を駆使し、ソダーバーグはB級アクションの世界で映画小僧に戻っている。まったく、アート映画など撮るのをやめて、こちらに専心してはどうかとお節介を焼きたくなるほどだ。処理のもたつく部分もときどき混じるが、ここは突っ込まないでおきたい。大体、パム・グリアの映画にねちねちとからむのは野暮というものではないか。

芝山幹郎

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