ポルノ映画と紙一重の濡れ場が続く、男と女の物語。メイという魔性の女に出会ったために、平凡な教職員で終わるはずだった主人公の鵜川の人生が、人を殺すところまで追い込まれていくという物語。
メイに興味本位に近づいた結果、刑務所から出所したばかりの昔の男に因縁をつけられてしまう結果に。ただよくわからないのは、その後この男の恐喝に屈してしまうまでは理解できるものの、完全にいいなりになってしまうのは、少しリアルティを感じさせませんでした。恐喝の末路として、鵜川は生活資金まで巻き上げられてしまうのですが、すると男は鵜川に友人の競輪選手を呼び出して、八百長を持ちかけることまで強要してしまうのです。当然話を聞いた親友も呆れて去ってしまうのですが、なんでこの親友も警察に恐喝として訴え出ようとしなかったのか、疑問に残りました。
少し全体的に、演出側の予定調和な展開が目立ちます。
ふたりの将来どころか、部屋に軟禁されて毎日の安全にも不安を感じるようになったふたりは、男の殺害を計画することになります。
そして冒頭のピストルのシーンとなります。果たして、小心者の鵜川は男を殺すことができたかどうかが、一つのヤマ場でした。
自首した鵜川は、出所後偶然メイと再開します。
階段で目と目が合うものの、無言ですれ違う鵜川とメイ。お互いが、まるで赤の他人のように、階段の上下で距離が離れていくカットを見せられたとき、きっと監督はこの別れのワンシーンを撮りたくて、本作を組み立てたのだなと思えました。きわめて映画趣味的なシーンなのです。
修羅場をくぐった鵜川とメイの関係なら、無言で別れるはずもありません。結局は、監督の美学を押しつけられているような感じがしました。
ところで本作の収穫は、ヒロインのメイを演じている笹峯愛の演技力が凄いんです。脱ぎっぷりも、大胆な濡れ場も凄いのですが、何と言っても場面ごとにカメレオンのように変わる表情。あるときは、虫も殺せないような少女のような可憐さを見せれば、濡れ場では、まるでSMの王様のように、男を思いどうり翻弄し、自分のとりこに絡め取っていくのです。
昔の男の前では、DVに打ち震えるか弱い女性に転じ、殺人現場では血を恐れない、修羅の形相を浮かべる。まさにシーンごとに別人に変身してしまったかと思うほどの変わり様を演じてくれました。彼女の今後の活躍を多に期待したいと思います。